転職の面接では、一般的に面接は複数回行います。中小企業を含め会社の方針で役員が一次面接を行い、そこで採否が決まるケースがありますが、多くは1~3回程度面接を行います。
一次面接、二次面接と進めていき、多くは2回から3回目に、採用するかしないかを判断する役員レベルの人と面接することになります。
一次、二次、役員面接にはそれぞれ役割があります。それぞれの面接官の役割と目的を理解して面接にのぞまなければなりません。
その中でも、一番対策が難しいのが一次面接です。
あなたも「転職をしようと応募したけれど一次面接で落とされ不採用になった」という経験があるかもしれません。一次面接を成功させるには、
一次面接を担当する面接官のタイプとその役割について知っておく必要があります。
一次面接の担当者と役割
複数回面接を行う会社では、1回目の面接を一次面接と呼んでいます。多くは、人事労務部門の担当者が行います。
あるいは、会社によっては、配属部署の社員が面接を担当することもあります。
面接官は二人体制が基本です。一人は人事労務部門の担当者であり、もう一人は受け入れ先部署の担当者というパターンが多いです。
一次面接で聞かれること
一次面接で聞かれることは、おもに前職での職務経験です。
前職での仕事内容や経験が、自社の求める人材像にマッチしているかを確認されます。さらに入社できる時期や労働条件を満たしているかといった部分をチェックします。
一次面接では、履歴書と職務経歴書を中心に質問され、回答していくことになります。
そのため、求人情報をしっかり読み込んで、採用側の会社が求める能力、経験を履歴書や職務経歴書に書いておかなければいけません。
しかし応募書類に不備がなければ、たいていの場合の1次面接は簡単な質問に終始します。
20~30分程度の限られた面接時間内に、自己紹介、職務履歴の確認など定番のやり取りをしなければならないため、一次面接で高度な質問をされることは、あまりありません。
しかし、一次面接には独特の難しさがあります。
一次の面接官は経験が浅い人が多い
実は、一次面接の面接官は、人物観察がまだ未熟な人が多いのです。
人事労務部門を担当している人が一次面接の担当者になることが多く、年齢層は20代後半から30代前半の若い人です。
さらに中小企業の中途採用活動においては、欠員が出たときに突発的に社員が面接を行うことがあります。
そのようなとき、一次面接で人事労務部は担当せず、社員の受け入れをする部署かから一次面接の面接官を選ぶことがあるのです。
このとき一次面接担当者に選ばれるのは、採用された部署での先輩や教育係を任される人です。
このように一次面接の面接官は、比較的経験が浅い人や、そもそも面接官としての知識がない人が担当していることが多いのです。
そのため人物理解をする能力が未熟な傾向があります。
そして一次面接の面接官には、採用活動における総責任までは課せられていません。採否の決済をする権限が与えられていないからです。
一次の面接官は感覚的に見ている
一次面接の面接官は経験が浅い人が多いです。さらに、採否の決済をする権限が与えられていないことも多いのです。
だからこそ、応募する転職者側が一番注意しなければならないのは一次面接です。
その理由は、一次面接の面接官は経験が浅く人物理解が甘いため、二次面接にあげるか否かを、主観(自分はこう思うといった、自分だけの意見)や感覚で決めることがあるからです。
担当者の主観や感覚ほど、基準がはっきりせず対策が難しいものはありません。
人物理解の経験が浅い人は、応募者に対して「何だか嫌な感じがする」「一緒に働きたいと思わない」「うちの会社には合わないと思う」など、感覚的な判断で不採用にすることがあるのです。
さらにその会社の採用活動全体に対する総責任までは負っていません。
そのため、あなたがたとえその会社に入社するにふさわしい経験と能力を持ち、採用しなければ損失といえる人材であったとしても、「何だか嫌だから」などという理由で、あなたを不採用とするかもしれないのです。
現状では採用一次面接の面接官は、このように主観・感覚で応募者を見ていることがあることを認識しておきましょう。
一次面接は第一印象が最大のポイント
採用一次面接では、求人側の会社が必要とするスキルを満たしていることをきちんと伝える必要があります。
しかしそれ以上に一次面接で気を付けるべきことは、ビジネス上のマナー、敬語の使い方、挨拶の仕方、表情、服装、態度など、あなたの第一印象を決めるものです。
第一印象が良くないと、主観や感覚で採否を判断しがちな1次面接の面接官に悪影響を与えます。
実際の事例ですが、面接のアポイントを10時にしてあったある転職応募者が、9時45分に会社に訪問しました。
10時のアポイントであれば、5分くらい前の9時55分に訪問するのがビジネス上のマナーです。あまり早くに到着しすぎると、先方の業務を邪魔するかたちになるので控えなければなりません。
そういったビジネスマナー違反をおかした転職応募者にも非があるのですが、応対した一次面接の面接官が「10時のアポイントなのに9時45分に訪問する失礼な人は、当社に入社する資格はありません」と、面接前に追い返してしまいました。
このような理由で貴重な応募者を追い返してしまうのは、あきらかに未熟な面接官です。
しかし程度の差はありますが、一次面接の担当者にはこのように、採用活動全体の責任を負っていないために、応募者の第一印象や、ささいな失敗から自分の主観で採否を決めてしまう人がいます。
「上記のような会社と縁がなくてよかった」と解釈することもできますが、一次面接を突破しないとその後の選考に進むことができません。
せっかくの機会をささいなミスで逃すわけにはいきません。そのため、まずは未熟な1次面接の面接官であっても採用してもらえるように、第一印象を良くする対策をして一次面接にのぞみましょう。
ビジネスマナーの総復習
具体的には、ビジネスマナーの総復習をしておきます。訪問から退社まで、一連の立ち居振る舞いにビジネスマナー違反が一つもないくらい、徹底しましょう。
表情や服装なども、細かく見られています。表情は横柄に見られないようにします。
訪問から退社まで、事業所の中ですれ違う人にはすべて気を使いましょう。トイレや廊下でも、気を抜いてはいけません。
「良い後輩になりそう」とイメージさせる
一次面接では、たいてい面接官は二人で行います。前述の通り一人は人事労務部門の担当者、もう一人が受け入れ先部署の担当者というパターンが多いです。
一次面接が合格となり、二次面接へ呼ぶか否かは、「受け入れ先部署の担当者」の意見が重視されます。あなたが採用されたあと、先輩や教育担当者になる可能性が高いからです。
そのため、あなたの先輩や教育担当者になりそうな人には「入社したら良い後輩となりそうだ」とイメージしてもらえるような態度を心がけます。具体的には以下のようなことに気をつけましょう。
先輩や上司の役に立つ人材であると主張
あなたが前職でつちかったスキルが、現場の先輩や上司にどう役立つかといった視点でアピールしましょう。
一次面接では、「自分のスキルで会社のために貢献する」という切り口ではなく、あくまで「現場の人の役に立つ」という切り口をつかいます。
自分には能力と経験があるので、現場ではすぐに戦力になることができ先輩や上司を助けることができる、指導や教育の手間は少なくて済むと主張するのです。例えば以下のようになります。
前職では専用ソフトを使用してプレゼンテーション資料をつくることを得意としていました。
1時間程度の内容のプレゼンコンテンツであれば、2日いただければ完成させることができます。
専用ソフトの使い方は主に独習をしてきました。こういった分野は自分に向いていて好きなので、業務に必要なことは今後も積極的に自習していきたいと思っています。
人前でプレゼンをすることにも抵抗はありません。
御社での「教育相談会に関する講師の業務」は私の経験を活かしすぐにでも担当したいと考えます。
このように、求められている技能を持っていることをアピールしながら、今後必要なスキルは積極的に自分から学ぶ意欲があることも語りましょう。
新入社員を受け入れ、教育をしなければならない担当者側からすると、指導や教育の手間がかかる人には入社してほしくないというのが本音です。
手取り足取り教えなくてもスムーズに業務を覚えて、わからないことは自発的に学んでほしいと思っています。
そのため、指導や教育の手間は少なくて済む人材であれば、安心して一次面接を通過させることができるのです。
現場での仕事のやりがいを質問する
さらに実際にあなたが現場で担当する仕事について、興味を示すようにします。応募者側から質問をする場合(逆質問をするとき)は、現場での仕事でのやりがいを重点的に聞きましょう。
例えば、「今まで相談会の講師という業務をされているなかで、充実感を味わうような場面がありましたら、教えていただきたいと思います」といった質問を投げかけるのです。
現場でのやりがいを質問して、詳細に答えてくれる人が、確実に入社後のあなたの先輩になる人です。この人に嫌われたら、不採用になる確率が高まります。
答えてくれている間は熱心に聞きましょう。適度にうなずき、あなたがきちんと人の話を聞いて、理解できる人であることを伝えます。
面白い話しや驚く話しをしてくれたのであれば、素直に笑ったり驚いたりして、感じたことを表現してもかまいません。
相手の話にきちんと反応して、その場をなごやかな雰囲気にしましょう。こうした行動は、現場の担当者に「この応募者とは良い関係を築けそうだ」と思ってもらうことにつながります。
前職の実績にこだわらない姿勢
前職での実績やスキルが、これから採用されようとする会社で役に立つことを伝えなければいけないません。
ただ、注意点としてあまり前職のことにこだわってはいけません。
前職での実績を自慢げに語ることや、自分のやり方にポリシーがあることを強調しすぎてはいけません。前のやり方にこだわりすぎる人は、頑固で人の意見を聞かず、新しい環境になじめない印象を与えます。
例えば、以下のような返答ではあまり良い印象を与えません。
プレゼンテーションを成功させるには、良い会場を選び、最新のプレゼンソフトを使うのがベストです。
資料だけで説明会を開催するのは、聞く人に不親切です。
やはり視覚に訴えないといけないと思います。
私は前職では、プレゼンソフトで作成した「視覚に訴えるプレゼン」を得意としていました。そういった新しいスタイルが今は求められているはずです。
このように、前職での成功例や自分の仕事のスタイルにこだわって主張しすぎると、「わが社にはなじめないかもしれない」「素直に指導を聞かないかもしれない」と思われてしまいます。
1次面接には、あなたに直接仕事を教えてくれるかもしれない人が立ち会っています。
あなたは前のことにこだわらず、新たなスタートを切ることを主張しましょう。
新たな環境で、先輩の指導を素直に受け入れることができると、態度で示す必要があります。例えば以下のようになります。
前職ではプレゼンソフトを使った「視覚に訴えるプレゼン」を心がけてきました。ただ、そのとき求められる最善の方法で行うことが、聞く人への配慮だと考えます。
聞く人がどのような人たちなのかによって、柔軟に方法を変えて、聞きやすくわかりやすい説明会ができるようになりたいと思います。
このように、過去のやり方にこだわらず、会社側が求める方針に柔軟に従う姿勢を見せましょう。
一次面接では待遇の質問を避ける
他にも面接では注意点があります。それは、一次面接では給与や待遇などの質問をしないほうが良いということです。
一次面接の面接官は、採用する人の給与面や待遇を決めることができません。そのような権限を与えられていないことが多いのです。
一般的に中途採用では、給与や待遇は最終面接で経営者あるいは役員レベルと協議します。
一次面接の面接官は、新たに採用する人材の給与額や待遇を知らされていないことが多いです。そのため一次面接では、給与の希望額や待遇などは質問しないほうが無難です。
ただ、中には面接官側から年収について質問されることがあります。
このときは、「この人の給与額はいくらなのだろう」という個人的な関心から「給与はどの程度を希望しますか?」と質問してくることがあるのです。
一次面接の段階で給与や待遇についての話題を持ちかけられたら、まずは「御社規定に従います」といった謙虚な姿勢を示しましょう。
給与や待遇は、かならず最終段階で具体的に話し合える機会があります。一次面接の面接官が、給与や待遇面の決裁権を持っていることが明らかでなければ、明言を避けるようにしましょう。
このように、一番対策が難しいのが一次面接です。
しかし一次面接の面接官がどのような人が多いかを知っていると、彼らの目に「良い人材」とうつるようにするにはどうしたらよいか、イメージできるはずです。
一次面接の正攻法を理解して、まずは初回の面接を突破しなければ採用に近づくことはできません。