転職者は注意!求人票と違う給与・労働条件の会社がある

ブラック企業

これから転職をしようと、さまざまな求人情報に目を通そうとしている人に気を付けてもらいたいことがあります。それは、嘘の給与や嘘の労働条件を求人票に書く会社があるということです。

私たちは、ハローワークの求人情報や求人広告誌などは、正しいことが書かれていると信じています。

公にされる情報に堂々と嘘など書かないであろうと思うものです。しかし実際には、嘘の求人情報は多いのです。

今回は、嘘の求人票を出す企業があることについて解説します。

求人票と違う労働条件

求人票に書かれていた内容を信じて応募し、実際に勤務し始めてから、「求人票に書かれていたこととは違う労働条件であった」ということがあります。

以下は実際の事例です。

月額21万円、シフト制による勤務で8時間、残業なし、年間休日は110日と書かれていたのに、いざ入社してみたら、基本給月額16万円、業務手当5万円となっていました。

この業務手当というのが残業代だと言われました。

求人票には残業なしと書かれていたのに、実際は月50時間くらい残業がありますし、年間休日は90日ほどしかありません。

基本給20万円の正社員としての求人でした。

しかし入社日に労働契約書を見たら、契約社員と書かれていました。しかも試用期間は3か月設けられていて、その間は時給900円となっていました。

月額23万円支給、賞与年2回(前年実績は月給の約5か月分)となっていました。しかし、入社後の労働契約書には基本給17万円、入社後3年間は賞与なしと書かれていました。

これらのように、求人票に書かれていたことと違う給与・労働条件で働かせようとする会社があります。

求職者の誰もが求人票に書かれていることを信じて応募します。しかし、いざ内定を得て入社したあとに発行される「労働契約書」には、求人票と違うことが堂々と書かれていることがあるのです。

多くの人は、そこで求人票と違うということを言い出せず、やむなく会社側の提示する給与・労働条件で働くことを承諾してしまいます。

求人票に嘘を書いても違法ではない

求人票と違う給与や労働条件を、入社後に突き付けてくる会社がありますが、このようなことがなぜ許されるのでしょうか。

普通に考えれば、これは違法行為に当たるように思うものです。しかし、厚生労働省は以下のように答えています。

労働基準法第15条には、労働条件の明示が定められていますが、この条文で言う労働条件の明示とは、労働者個々人に対して書面で明示される労働条件のことです。

つまり、求人誌やハローワークに掲載されている求人票はあくまでも募集の際に提示する労働条件の目安であり、労働基準法第15条で定める労働条件の明示には該当しません

要するに求人票はあくまで人を募集するために「目安の労働条件」を書いた情報であり、本当の労働条件と違っていても違法ではないということです。

法令が規制している「労働条件の明示」は、別途本人と個別に結ぶ労働契約書で行えば足りることになります。

そのため、入社後に求人票とまったく違う労働契約書を会社側が提示しても、違法ではないことになります。

「嘘の求人」への罰則はない

今のところ、このような「嘘の求人票」で人を募集することに対して罰則はありません。

職業安定法という法律によって、会社が自社のホームページなどで直接募集して採用する際に、嘘の労働条件を提示した場合には、罰則があります。

しかし、ハローワークや民間の職業紹介事業者などを経由する「間接的な募集」については、罰則はないのです。

現在、主にハローワークなどの求人内容が実際の労働条件と違うといった相談が年間1万5千件以上発生しています。

そのためか厚生労働省(国)は、ハローワークなどに嘘の労働条件で募集をかけた会社に罰則を設けることを検討し始めてはいます。

しかし、未だ検討段階であり、法制化はまだ先のことでしょう。

求人詐欺という手口

嘘の求人票を書いても、違法ではなく、罰則もないことを利用して「求人詐欺」といわれる募集活動をする会社があるのです。

求人票はあくまで人を集めるための餌であり、内定を決めてからおもむろに「本当の労働条件が書かれた労働契約書」を出すという手口です。

この労働契約書は、入社前段階や内定時あたりで提示されるのならまだ良い方です。

悪質な会社であれば、他社の内定を断らせた後や、入社して数か月経った後に出してくることもあります。

このように、採用者が「もう他に行く場所がない」状態になってしまえば、求人票とは違う劣悪な労働条件であっても受け入れなければならなくなります。

あいまいな求人情報を提示するタイプ

嘘の求人によくあるパターンとして、あいまいな情報を求人に出しておいて、後から細かいところの解釈を変えてくるタイプがあります。

例えば前述の事例では以下のようなものがそれにあたります。

月額21万円、シフト制による勤務で8時間、残業なし、年間休日は110日と書かれていたのに、いざ入社してみたら、基本給月額16万円、業務手当5万円となっていました。この業務手当というのが残業代だと言われました。

求人票には残業なしと書かれていたのに、実際は月50時間くらい残業がありますし、年間休日は90日ほどしかありません。

求人票にはざっくりとしたあいまいな情報を書くにとどめておいて、後から「実はこれはこういう意味だった」と労働契約書で会社の都合の良いように解釈を付け加える方法です。

後から違う条件を強要するタイプ

さらに、求人票で示していた条件とまったく違うものを強要するタイプもあります。例えば前述の事例の中で、以下のものがあてはまります。

月額23万円支給、賞与年2回(前年実績は月給の約5か月分)となっていました。

しかし、入社後の労働契約書には基本給17万円、入社後3年間は賞与なしと書かれていました。

このように、求人票の情報とまったく違う契約書を後から堂々と出してくるものです。

これは、事前に見極める方法がないため、より悪質なものといえるでしょう。

求人票と労働条件が違った場合の対処法

「内定」が出たら必ず自分自身の労働契約を確認

前述のとおり、「求人票に書かれた労働条件が違う会社がある」ということを前提に、できるだけ用心して転職活動をしてほしいと思います。

そのため、まずは内定が得られたら、あなた個人の労働契約は具体的にどうなるのかを、採用担当者に確認することをお勧めします

面接の場面では、なかなか労働条件や待遇について聞きにくいものです。

早い段階からそういった内容を細かく聞くと悪印象を与えてしまうため、控えめにする必要があります。

しかし、内定が出たら話は別です。

ここからは、あなた自身の人生が懸かっています。

これから入社する会社で働く条件をしっかりとした文書で提出してもらい、入念にチェックしてください。この段階では、まだ他社の内定を断ってはいけません。

今の仕事を辞めていないのであれば、退職は保留にしておいてください。

労働基準法でも、以下のことを書面にて明確に提示しなければならないとしていますから、遠慮する必要はありません。

労働基準法第15条で定められている会社側が書面で明示しなければならない労働条件

1)労働契約の期間 (有期契約か無期契約か。正社員なら通常、無期契約)

2)期間に定めのある雇用の場合、更新があるかどうかと更新の基準

3)就業場所と業務内容(どの場所で、どのような仕事をするのか)

4)実際に仕事をする時間と休憩時間

5)残業の有無、休日、休暇

6)給料の額、締め日、支払日、支払い方法

7)昇給の有無、基準

8)退職理由、解雇理由

これらの労働条件を書面で提示することを求めた際に、しぶる会社や、あいまいにしか答えない会社は要注意です。

また、「詳細は就業規則に書いてあるから確認して」と言って担当者が逃げるケースもあります。その際は、就業規則を一部渡してもらえるよう頼んでください。

「入社してから、事務所に保管してある就業規則を読んでください」と言われたときも、引き下がってはいけません。

入社したあとに、契約を変えたり解約したりするのは至難の業です。必ず内定の段階で、労働条件を文書で出してもらえるようにしてください。

「就業規則」は必ず確認すること

会社によっては、就業規則に社員の労働条件を細かく書いてあることがあります。

就業規則とは、会社が社員の労働条件や服務上の規律などを定めたものです。

社員が入社したときに一式渡すことによって、就業規則を労働契約書と同じ扱いとする会社もあります。

注意したいのは、就業規則が労働者に渡されるなどして「周知されている状態」にあると、そこに書かれている労働条件は労働者が合意したものとみなされてしまうことです。

例えば、あなたが具体的な労働契約書を締結せぬまま、求人票に書かれている労働条件で雇われていると思い込んでいたと仮定します。

このとき、就業規則には思っているよりもずっと悪い労働条件が書かれていたとしたらどうでしょうか。

渡された就業規則を確認もせずに放置しておくと、そこに記載された条件に合意したことになってしまいます。労働契約書に合意したことと同じ扱いになってしまうのです。

そのため、内定後あるいは入社後に就業規則を渡されたり、「社内に置いてあるから読んでおいて」と言われたりしたら、必ず確認するようにしてください。

労働契約書に合意しない

もしあなたが、求人票に書かれている給与額や労働条件であると信じて採用されたものの、後から思っていた条件と違う労働契約書を出されたときは、できるだけ合意しないようにしましょう。

なぜなら、一旦会社側と労働者側が、労働条件について「合意」してしまうと、覆すのが難しくなるからです。

そのため、その場でサインしたり口頭で合意したりせずに、「一旦、家に持ち帰って良いですか」などと保留にしましょう。

求人票と同じ条件を求めることができる

会社側が提示する労働契約書にサインする前であれば、あなたが合意している労働条件は求人票に書かれているものであると主張することができます。

そのため、入社後の待遇が求人票の労働条件と違う場合は、求人票と同じ条件とするように求めることができます

内定・入社の解約ができる

さらに求人票と大きく違う労働条件であり、その会社に居続けることができないと判断したときは、内定や入社を取り消すことができます。

この際、会社側から「契約違反」などと言われても、ひるむ必要はありません。

記録を残す

もし内定後に労働契約書も発行されず、知らない間に給与額や待遇が求人票と違うものとして扱われていると気づいたら、とにかく現状の記録を取るようにしましょう。

応募した際の求人票の記録は保管しておいてください。

さらに面接で渡された資料や、入社日に渡された資料、タイムカード、給与支給明細などはできる限り取っておいてください。

入社後に労働条件を変えたり待遇を改めさせたりするのは難しいものですが、できる限り記録を残しておくことで、後から闘うことになった場合に有利になるからです。

以上のように、求人票に嘘の労働条件を書く企業があるということに十分注意をして転職活動を進めてください。

求人票を疑いすぎるのも良くありませんが、現在の求人募集の制度には不備があるのが事実です。

あなたの身を守るために、求人票はすべてを信じ込まないようにしましょう。

もしかしたら本当の労働契約書には違うことが書かれているかもしれません。

そのため、内定が近づいたときや、あるいは内定したらすぐに、あなた個人の労働条件・給与体制はどうなっているのかを確認するようにしてください。

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