今、うつ病などにかかって会社を休業したり退職したりする人がとても増えています。
せっかく採用した社員が、1年もしないうちに「うつ病」と診断され、休業に入ってしまうという事例もあります。
そのため、多くの会社の人事担当者は、そのようなことにならないような「ストレスに強い人材」を採用するために、さまざまな対策をほどこすようになってきました。
採用時に「心が強い人」「ストレス耐性がある人」を採用したいと思う会社は、面接で、「あなたのストレス耐性はどの程度ですか」と聞いてきます。こういった質問にはどのように答えるのが良いでしょうか。
今回は、面接で聞かれることが多くなってきた「ストレス耐性」についての答え方を考えてみましょう。
企業はメンタルヘルス問題に苦慮している
ここ数年、働く人の中に、「うつ病」などの精神疾患にかかってしまう人が本当に増えてきました。
また、うつ病にかかった原因が会社側にあるといって、労災申請をする人も増えてきたため、国(厚生労働省)は、会社に対して、労働者の精神的な健康管理を義務づける方向へ法整備し始めています。
さらに、会社側は一旦雇った社員は、簡単に辞めさせることができないように、「労働法」で決められています。
社員がうつ病などの精神疾患にかかって仕事ができない状態であっても、すぐにクビにすることができないのです。
こういった事情があり、会社は、国からも労働者側からも「うつ病になる人を減らせ」「労働者の心の健康を守れ」と、板挟み状態になっています。
そのため、会社は、今いる社員の心の健康を守るよう、労働環境を整えたり、社員にストレスチェックといったテストを受けさせたりといった努力をしなければならない状況にいます。
ただし、今から採用する人については、少なくとも入社してすぐに「うつ病になった」とか「会社のストレスが原因で病気になった」とは言わない人を取りたいと思っています。
そのため、一次試験で「メンタルヘルスチェック」といった質問方式のテストを行い、応募者の心の健康状態を見極めようとする会社もあります。
ただし、こういったテストは費用もかかるため、そこまでできない会社の方が多いです。
それで、多くの会社は面接時に、「あなたの心の状態はどうですか」「ストレス耐性は強いですか」といった形で質問をします。
その答え方から、あなたのストレス耐性を見極めようとするのです。
根拠なく「絶対大丈夫です」はNG
しかし、多くの応募者は、こういった質問に慣れていないためか、面接官を一瞬で不安がらせる回答をしがちです。
面接官を一瞬で不安がらせる良くない回答とは、何も根拠がないのに、「私はストレスに強いです、お任せください」「絶対に心が強いので大丈夫です」といったように、言葉だけで請け負うような答え方です。
こういった回答は、「この人は、ストレスという意味を本当に理解しているのか」「何も根拠がないのに、大丈夫と言える無神経さ、お気軽さが不安だ」と思われてしまいます。
もし、「ストレスに強い」と主張するなら、その根拠がしっかりと示されていなければなりません。
強がりを言わず自然体で
では、会社の採用担当面接官は、「あなたはストレス耐性についてどう感じていらっしゃいますか」といった質問をしたとき、どのような目線で応募者を観察しているでしょうか。
それは、あなたの面接での態度やしぐさと、この質問への答えに「妙なギャップ」がないかというところをじっくり見ています。
こういった質問には、当然応募者の方は「ストレス耐性は強いです」「心は強いです、大丈夫です」と答えるだろうことはわかっています。
しかし、そう答えるあなたの態度やしぐさにギャップがあると面接官は不安になります。
「強がっているのではないか」「無理をしているように感じる」という印象を与えると逆効果になります。
とりわけ、あなたの見た目や態度が屈強・剛健なタイプではないのであれば、口先でいくら強いことを言っても、ギャップがあるとみなされてしまうのです。
そのため、ストレス耐性について聞かれたときは、「強がりを言わない」「無理をいわない」といった姿勢で素直にのぞんだほうが、むしろ安心してもらえます。
自分なりのストレス対処法を答える
この世にストレスをまったく感じないで済んでいる人などいません。
社会人経験のある転職応募者であればなおさら、ストレスを感じる場面を乗り越えてきた経験があるはずです。
そのため、中途採用の面接であれば、「ストレスに強い」という主張をするよりも、「ストレスを感じる場面は多々があるが、乗り越えられる対処法を持っている」という主張の方が好まれます。
例えば以下のような形です。
前職ではお客様相談センターの担当でしたので、ストレスに感じることは多々ありました。
連日多くの苦情を受けましたし、報告書もたくさん提出する義務がありました。さらに上司からは厳しく指導を受けました。
そのため、一時期はとてもストレスに感じ、心が折れそうになったこともありました。(ギャップを感じさせない本音の姿勢)
しかし、こういったストレスにさらされる職場を経験したことで、私は「自分のストレスに向き合い、解消する」というスキルを身につけることができました。
その具体的な方法は、一日にあった嫌なことや不安に感じることを、〇〇にすることで……そして〇〇をすることです。 (自分なりのストレス対処法)
そうすることで、次の日には、昨日受けたストレスをしっかり解消して、新たな気分で出勤することができるようになりました。
あの経験のおかげで、私は多少のストレスを感じても、しっかりと向き合い、解消して、乗り越えることができるようになりました。
御社でも、様々なストレスを感じる場面があるとは思いますが、今まで培ってきた私なりの「ストレス対処の方法」で、乗り越えていけると思います。 (ストレス対処法があるため、ストレス耐性が強いという主張)
このように、ストレスを感じることもあるし、別段心が強いわけではないけれど、対処する方法を知っているから大丈夫だ、という主張をしましょう。
その方が、「ストレスなど感じない」「心が強い」などと強がっていたり非現実的な理想像を語っている人よりも、信ぴょう性があります。
ストレス耐性を聞く他の質問
面接官がストレートに「ストレス耐性はありますか?」と聞いてくるような場合もありますが、別の質問であなたのストレス耐性を聞いてくることもあります。
それは「今までで一番苦労されたことはどのようなことですか?」あるいは「苦手なことはどのようなことですか?」といった質問です。
こういった質問をする理由は、あなたが困難な目に直面したときに、どのように感じ、どう乗り越える人なのかを探りたいからです。
つまり、ストレスの対処能力をはかろうとしているわけです。
そのため、これらの質問を受けた場合も、同じように考えます。
「苦労はすべて成長の糧です」「苦手なことは特にありません。気にしないタイプです」といったような精神論を語るのは良くありません。
それより、苦労や苦手を感じることはあるが、対処することができるという流れで答えましょう。
私は、営業活動のうち、セミナー営業が苦手に感じていました。
大勢の人の前で、1時間商品解説会を行うという業務でしたが、最初の頃は全くできませんでした。人の顔を見るだけで冷汗があふれ赤面し、声がうわずってしまいました。(苦手に感じること)
しかし、あるとき本屋さんで、有名な起業家もプレゼンの前には緊張すること、そして事前に何十時間も訓練をして本番に臨んでいるということを知りました。
「どれほど有能な人でも、人前で話すのは緊張するのか」「練習しなければ本番がうまくいかないのは当たり前だ」
こういったことに気づきました。
私はその日からセミナー営業前には自宅で1時間ずつ練習することにしました。
練習はすればするほど能力があがります。そして自信がつきました。自信があれば、人前であっても緊張しなくなり、むしろ人前で話すことが面白くなってきました。(苦手を克服した工夫、経験)
苦手に感じることは今でもありますし、これからも現れてくると思います。
しかし、克服方法というのは探せば必ずあります。
「なぜできないか」よりも「どうしたらできるようになるのか」という思考が大事であることを学んできましたので、これからもそういった気持ちで乗り越えていきたいと考えます。
このように、精神論よりも、過去の具体的なエピソードをまぜて、「どう考えるか」「克服する手段を自分なりに考えてきたか」を伝えましょう。
会社はストレス耐性の強い人を求めている
仕事のストレスで心を病む人が多い今だからこそ、会社はストレス耐性の強い人を求めています。
求人票の求める人材像の欄に「ストレス耐性のある人」「心が強い人」とわざわざ書いてある会社もあるくらいです。
学歴が高い人やスキルが高い人よりも、むしろ心が強い人が欲しいと思っているところもあります。
そのため、できるかぎりあなたはストレスに強い人材であると思わせなければいけません。
しかし、生まれつき心が強い人などいませんし、会社側もそのような人を求めているわけではありません。
それよりも、ストレスに感じることや苦手なことはあるが、今までの経験から自分なりに工夫して克服する技術を持っているというアピールの方が、相手を安心させ採用を勝ち取ることができるでしょう。