履歴書には「趣味・特技」を書く場所が設けられているフォーマットがあります。
趣味・特技には、正直にありのままの自分の趣味を書いてしまっていいものでしょうか?
基本的には、あなたの人柄が好意的に伝わるように書きたいものです。あなたの印象を悪くしてしまうような、「あまり書かない方が良い趣味」もあるため、注意が必要です。
今回は、履歴書の「趣味・特技」の欄に、あまり書かない方が良いことについて解説します。
趣味欄に書かないほうが良いこと
フォーマットにもよりますが、履歴書の一部に、「趣味」を書く欄があります。この欄には、「趣味」であれば、基本的に何を書いても良いはずです。
あまり採否に影響はないという意見もありますが、採用面接官によっては、この部分を重視している人もいて、一概にはいえません。
趣味を自由に書いて良いといえども、履歴書はあなたという人材の提案書のようなものです。
無頓着に書いてしまうと、あまり良くない印象を与えることがあるため、注意してください。具体的には以下のような内容は避けるようにしましょう。
空欄や「なし」は素っ気ない印象を与える
転職の場合は、新卒のときと違って、前職での経験やスキルが最大の評価ポイントになります。そのため趣味や特技欄には、あまり力を入れて書かない人も多いものです。
しかし、趣味・特技欄を設けている履歴書のフォーマットを使う場合は、空欄で提出したり「なし」の一言で終わらせてしまったりしてはいけません。
趣味・特技欄には、あなたの人柄を好意的にアピールできるものを書くべきです。空欄や「なし」のままだと、「何だか面白みがない」「深みがない」「素っ気なくて暗い」といった印象も与えてしまいます。
ウケねらいはウケない
たまに、目を引くためか突飛な趣味を書いてくる応募者がいます。例えば以下のようなものです。
・〇〇(芸人)のモノマネ
・綱渡り
しかし、人事採用担当者は「奇人芸ができる面白い人材」よりも、「常識的な組織人」に魅力を感じます。
そのため、ウケねらいのような趣味を記入するのは危険です。
こういった奇抜な趣味を書いてくる人とは、面接では盛り上がるため印象には残ります。しかし、その印象とは決して良い印象ではなく、「何だか変わった人だった」といったものです。
そのため、相当キャラクターに自信がある人以外は、無難なまとめ方をした方が良いでしょう。
危険性がある趣味
また、書き方にもよりますが、危険性のある趣味は控えた方がいいケースがあります。代表的なものは、スノーボード、本格的な登山など、事故が多いスポーツです。
特にスノーボードは若い人に人気のスポーツであり、趣味欄に書いてくる人が多いです。
そのためか、スノボでケガをして長期療養した社員を持つ会社も多く、冬場に急に休む社員が出てしまうことが、人事担当者の悩みの種です。
このように、頻繁にケガで休業される可能性の高い人材は困るため、事故の危険がある趣味を持つ人を敬遠する面接担当者がいます。
スノーボードを含め、アクティブなスポーツが趣味である人は、危険性を冒さない程度の趣味であることを強調するようにしましょう。
社会的印象の悪い趣味
一般的に、社会的印象が良くない趣味は避けた方が良いでしょう。例えば、
・パチンコ、スロット、競輪、競馬などのギャンブル(応募企業がこの業界であればOK)
・アイドルの追っかけ
・ネットゲームなど
・エアガン
趣味は本人の自由な世界ではありますが、ギャンブル系やアイドル、ゲームなどの趣味は、未だ社会的印象は良くありません。
これらを趣味として堂々と記載してしまうと、「常識がないのではないか」「空気が読めないのではないか」と思われる可能性があります。
さらに、ギャンブル系やアイドルへの興味、ゲームなどが趣味であると、その人の金銭感覚や性的指向、生活習慣などが、実際以上に悪く思われる傾向があります。
また、エアガンや武器模型の収集など、暴力性を感じさせる趣味も、若干社会的印象が良くないので慎重にしてください。
単なる趣味で楽しんでいるだけなのに、悪いイメージを持たれてしまうのは損なことです。
不健康、依存性のありそうな趣味
不健康な印象や、依存性を感じさせるような趣味も、履歴書に書くのは避けた方が良いでしょう。
なぜなら、趣味というのはその人の生活ぶりや嗜好を表していることが多いためです。例えば
・お酒の飲み歩き
・ラーメン屋の食べ歩き
・買い物
・麻雀
人によっては、こういった嗜好性の強い趣味を不健康だと感じることがあるため、もしそういった趣味がある人であっても、控えておいた方が良いでしょう。
「変わった人」と思われやすい趣味
一般企業は組織で動く必要があるため、考え方が偏った人を嫌う傾向があります。
そのため、人柄をイメージさせる趣味が少し人と変わっているとか、宗教的な趣味や政治活動を思わせるものであると、マイナスイメージを持たれることがあります。例えば
・占い研究
・政治塾へ参加している
・スピリチュアルカウンセラー講座を受講している
・パワーストーン集め
・写経
こういったものは、趣味としては深みがあるかもしれませんが、履歴書に書く趣味としては適していません。
「考え方が偏っている」「独特の世界があり、一般社会では適応できない人かもしれない」と誤解されやすいため、注意しましょう。
無難すぎて面白みのない趣味
また、無難すぎて面白みがない趣味も考えものです。悪印象を与えることはありませんが、あまりにも無難すぎる趣味で、かつ何も補足がされていないと、味のない人柄であると判断されてしまいます。例えば
・読書
・映画鑑賞
・音楽鑑賞
これらは、履歴書の趣味欄に書かれるトップスリーですが、何も補足されていないと「なし」と書かれている場合と同じように素っ気なく感じます。
そのため、読書や音楽鑑賞などといった無難で大きなテーマを選ぶのであれば、もう少し好きな部分を掘り下げて書きましょう。
例えば以下のような形です。
趣味:フランス映画の鑑賞
「天井桟敷の人々」などの古典から、「少年と自転車」のような地味な名作まで、幅広く楽しんでいます。映像と音楽が美しく、心が洗われます。
印象が良くなる「趣味」の書き方とは
それでは、印象が良くなる趣味の書き方はどのようなものでしょうか。
採否に大きく影響はないといえども、趣味欄の印象から人柄を想像して、もし入社することになったら、この人はどういうタイプの社員になるのだろうか、といった視点で見られます。
そのため、会社の社風に合わないものや、一般的ではない趣味を書くと、「一般企業」からは敬遠されてしまうというわけです。
だからこそ、趣味を通してあなたの人柄が伝わり、「この人と働きたい」と思ってもらうようにします。
主に趣味欄を読む人は、求人を出している会社の面接担当者になります。
また、面接担当者以外にも、選考が進んでいくうちにあなたの上司となる予定の人や、役員、社長なども目を通すことになります。
採用活動を行う事務スタッフの人も見ることになるでしょう。
そういった人が読むことを考えると、できるだけPR的な内容を書きたいところですが、無理をして実務能力に結びつけようとしなくてもかまいません。
ともすると、気合が入りすぎているとか、抜け目がなさすぎると受け取られるかもしれないからです。
それよりも、少しだけあなたのプライベートな部分をのぞかせることによって、会社との相性の良さを伝え、人間的な面白さが伝わるようにすることを心がけてください。
箇条書きで記載し、具体的に補足
趣味・特技欄は、文章として長々と書くよりも、箇条書きにする方が良いでしょう。
その趣味のどこがどう好きなのか、どの程度楽しんでいるのかといった補足を具体的に付け足します。例えば以下のようになります。
趣味:ガーデニング
特にハーブと多肉植物を育てるのが好きです。自宅でできたハーブを使って料理をしています。
このように、補足を具体的に書きましょう。
聞かれたら答えられるように準備
そして、面接で問われたら答えられるように準備しておいてください。
面接官の中には、あなたが書いた趣味と同じ趣味を持つ人がいます。
その場合は、高い確率でその趣味を持つ人にしかわからないような、共通の楽しみ方などを聞いてくるでしょう。
あるいは、どのくらいその趣味を楽しんでいるかといった話題になることもあります。
例えば趣味欄に「映画鑑賞」と書いていると、「映画鑑賞が趣味ですか。私も映画鑑賞が好きですよ。今年上映された映画で一番感動した映画は何ですか?」と面接官に聞かれることがあります。
その際に、「今年上映の映画は見ていません」「今まで見た映画で一番面白かったのは……ハリーポッターと賢者の石です」などと答えてしまえば、あなたのその趣味は完全に嘘であるとばれてしまいます。
そのため、当然嘘はつかないことと、聞かれたときに趣味談義ができるものを選ぶ必要があります。
最低でも、「その趣味のどの部分に楽しみがあるのか」「その趣味の良さを人に伝えて、相手もその良さがある程度イメージできるか」という視点で書くべき趣味を決めましょう。
趣味の例文
では、注意すべき点を踏まえてどのように書いたら良いのかを考えてみましょう。
例文 趣味:ウォーキング
夕食後に、愛犬と一緒に30分のウォーキングをしています。盆と正月以外、約2年継続中です。
例文 趣味:中国語会話
学生時代から中国語会話のレッスンを受けています。旅行客が増える2月には、地元の博物館でボランティア通訳を行っています。
例文 趣味:イラスト
イラストをパソコンで描くのが好きです。主に人物画と動物画です。動物は、猫が特に上手いと褒められます。
例文 趣味:城めぐり
主に戦国時代に建てられた城の跡地が好きです。街並みにはその時代の息吹が残っていて、心が癒されます。
例文 趣味:キャンプサークルの企画・運営
学生時代は登山部に所属。社会人になってからは「キャンプサークル」を企画し、運営しています。仲間を募ってみんなで力を合わせているときはとても充実します。
例文 趣味:読書(主に心理学)
人間関係にとても興味があり、心理学やコミュニケーションについての本を、月に5冊ほど読んでいます。NLP、交流分析、エゴグラム、コーチングなどのジャンルが特に好きです。
このように、あなたの楽しんでいる姿をイメージしてもらえるように書きましょう。
自己PRも必要ですが、趣味欄はあくまで趣味を記載するところです。あまりにアピールスタイルであると、気合が入りすぎた印象も与えます。
特に目を引く趣味でなくても、興味を持っていることや、習い始めたことなどでもいいでしょう。肩の力を抜いて表現しましょう。
履歴書に書くべき趣味がない
もし、履歴書に書く趣味がどうしても見つからない場合、あるいは上にのべたような「書かない方が良い」という趣味しかない場合はどうしたらよいでしょうか。
趣味欄は、絶対に書かなければならないというわけではありません。趣味欄がないフォーマットの履歴書も、コンビニや書店で市販されているので、そういったフォーマットを利用するのも良いでしょう。
過去を振り返って探す
ただし、趣味欄は書かれていた方が面接で話が盛り上がることもありますし、フォーマルではないあなたの良さが伝わる可能性もあるため、頑張って「趣味」として書けることを探してみるのもお勧めします。
何年も継続的にやっていることでなくてもかまいません。
技能が高くなくても大丈夫です。「自分が好きであること」「少し得意であること」といったことでも十分に趣味になります。
見つからないときは、今までのことを振り返って考えてみましょう。
自分では「趣味」とは思っていないことが、意外に趣味につながることがあります。例えば
・小学生の頃、熱中していたことはありますか
・気がつくとついやっていることは何ですか
・今まで時間をかけて取り組んだことは何ですか
・人に褒められたり相談されたりすることは何ですか
こういった質問を自分自身にしてみてください。普段普通に行っていることが、趣味として書くことができるかもしれません。
例文 趣味:洗車
洗車機を通さずに、自分の手で車をピカピカにします。
例文 趣味:漬物づくり
祖母と同居していて、おいしい漬物をつくることができます。こだわりの塩を使うので、長持ちし、旨味があります。ご近所に配ると、おいしいと大好評です。
このように、何でもないようなことであっても、日頃楽しんでいることや周りの人に好評であることを記載すれば、立派な趣味や特技になるのです。
応募の前に専門家に見てもらう
趣味欄が採否に大きく影響することは稀ですが、書かないほうが良いことを書いてしまうと、「この人は少しひっかかるな」と思われることもあります。
採用の最終責任者である経営者には、この、「何となくひっかかる」という直感を重視する人がいます。
「何かひっかかる」と思う人は、採用しないという方針の経営者もいます。
会社を背負っている人は、リスクに対する直観力がすぐれているため、履歴書内に表れている応募者のささいな「気になるポイント」を見逃さないからです。
趣味欄は上手く書けば会社との相性を好意的に伝えることができますが、深く考えずに書いてしまうと、「何となくひっかかる人材」とみなされてしまいます。
そのため、あまり深く考えずに趣味欄に書いてしまって印象を悪くしないように対策するようにしてください。
そのためには、「書かないほうが良い趣味」を避けることも大事ですが、自分が書いた履歴書を誰かにチェックしてもらうことが一番の対策になります。
家族に見てもらうのも良いですが、転職サイトのコンサルタントは、履歴書や職務経歴書の書き方について的確なアドバイスをしてくれます。
多くの人事担当者と接していて、どういった書き方をすると印象が良くなるかといったことを、詳しく教えてくれます。
必ず、自分で書いたものをそのまま応募せず、一度専門家に見てもらってから応募するようにしましょう。
そうすることで、希望通りの転職先が見つかる確率が高まります。