職場のいじめ「モラハラ」の特徴と加害者の傾向・対策

職場のいじめ・ハラスメント

職場で、同僚や先輩などに、仕事を教えてもらえないとか、仕事中無視される、からかわれるなど、嫌がらせを受けている人がいます。

こういった職場でのいやがらせは、「モラルハラスメント」「職場いじめ」などといわれます。

「職場」という狭くて逃げ場のない環境で、いじめを受け続けるのは、本当に辛いものです。

しかも、これらの「モラハラ」「いじめ」は、我慢しているだけでは解決しないことが多いようです。学校でのイジメにも共通しますが、逃げられない環境下で、特定の人がイジメの標的になってしまうことがあります。

そして、放置したり我慢したりしているだけでは、徐々にいじめはエスカレートしていきます。

職場いじめの被害を受け続けていたために、ついには「うつ病」などの精神疾患にかかってしまう人もいます。

モラハラの加害者は、決して「上司」などの権限を持つ人に限られません。そして、意外にもモラハラの加害者は、一見優しそうで親切な魅力的な人が大変多いのです。

今回は、職場のいじめである「モラハラ」の特徴と、モラハラの加害者の傾向について解説します。

職場いじめ「モラルハラスメント」

モラルハラスメント(モラハラ)とは、相手の自尊心を傷つけるような言動で、精神的な苦痛を与えるいやがらせのことです。

モラハラは「精神の殺人」とも呼ばれるほど、被害者の心に悪影響を与えるものです。

上司から、職権を使って圧力をかけられるような形のいじめは、一般的に「パワーハラスメント(パワハラ)」といわれます。この「パワハラ」も、モラハラの一つです。

パワハラとモラハラの違いは、加害者に「職権」があるか無いかです。

職場での立場や権限を持つ人からのいやがらせを「パワハラ」といい、それ以外の人からのものを「モラハラ」と分類しています。

同僚同士、先輩から後輩、逆に後輩から先輩へのモラハラ、部下から上司へのモラハラも起こり得るのです。

職場のモラハラにありがちな事例

職場のモラハラには、以下のような事例があります。

無視する

職場の中である人をターゲットにして、その人と会話をしないとか、会議があっても発言をさせないなど、無視をします。

皆が参加するような懇親会などに誘わないこともあります。要するに、その職場内で「仲間はずれ」にする行為です。

悪口を言う

被害者の悪口を言うことです。どの職場でも多少の陰口というものはあるものですが、頻繁に悪口を言い、かつ本人にわかるようにすることで、精神的苦痛を与えるものです。

見下す、馬鹿にする

「こんな仕事もできないの?」「やっぱり〇〇大学卒の人なんてたいしたことないね」「親の顔が見たい」など、被害者を見下し馬鹿にする言動です。

また、「太りすぎている」「髪が薄くなっているね、何とかしたら?」といったように、本人が気にしているような身体的特徴を指摘する行為もモラハラといえます。

業務に必要な情報を与えない、従わない

業務上必ずコミュニケーションを取って共有しなければならない情報を、被害者にだけ渡さないという行為もモラハラです。

同僚同士で行われることもありますし、部下から上司へのモラハラでは、「報告をしない」「業務指示に従わない」などといったいやがらせもあります。

出来ない仕事を与える、混乱させる

どう考えてもこなすこと出来ない仕事量を与えてくるとか、次々と指示を変えて混乱させるといったモラハラもあります。

「これをしておけ」と指示を出しておいたのに、報告に行けば「なぜそんなことをした?」と怒鳴られるとか、相談すると「そんなこと聞くな」といい、相談せずに対応すると「ホウレンソウは仕事の基本だ」というなど、混乱させることもあります。

職場のモラルハラスメント加害者の特徴

モラハラを行う人にはある共通点があります。モラハラの加害者は以下のような特徴を持つ人が多いのです。

特定の人だけをターゲットにする

モラハラの加害者は、特定の人だけをターゲットにして、周りの人には気付かれないように、陰湿にいじめてきます。

誰に対しても意地悪をする人は、すぐに周りからも嫌われて、警戒されるようになるものです。

しかし、モラハラ加害者はそうはしません。ある特定の「いじめやすい人」あるいは「自分にとって虫の好かない人」などをターゲットにして、その人にだけいじめをします

そのため、被害者は誰かに相談しても、「え、あの人が?まさか。あなたの勘違いじゃないの?」などと言われてしまいます。

被害者本人も、なぜ自分だけがいじめられるのかわかりません。

そして、「あの人は周りの人には嫌われていないのに、私にだけ意地悪をする。それは、私が悪いからだ」というように考えてしまうことがあります。

機嫌の良いときは、魅力的な人物

モラハラの加害者は、自分の都合の良いときや人目があるとき、機嫌が良いときなどは、魅力的な人物にうつることが多いです。

ターゲットにしている被害者に対しても、いつもいじわるではありません。

「〇〇さんだから、こんなことを言うんだよ」「いつもはヒドイことしてごめんね。本当に頼りにしているから」などといったように、たまに被害者へ優しい言葉をかけてきます。

こういった「駆け引き」がうまいので、被害者はかなり深刻な状態になるまで、自分がされている行為がモラハラであることに気づかないのです。

モラハラをしている自覚はない

自分の言ったことが相手にとって辛いことであると想像できません。そのときの気分で好きなように言動します。

ただし、本当に人をいじめている自覚が全くない人もいますが、一部、自分の行為は嫌がらせであることをわかっている人もいます。

自覚していたとしても、そのときの気分を抑えることができずに、一番八つ当たりしやすい人にイジメ行為をしてしまうのです。

ハラスメント行為の「きっかけ」「理由」がない

モラハラ加害者が被害者をいじめるときには、きっかけや理由がほとんどありません。何でもないときに、いきなりいじめてきます。

まだ、一貫した理由があれば、被害者側の対処ができます。

例えば、「報告をしない」「表情がよくない」などの理由があって、怒っているのであれば、何らかの対処ができるものです。

しかし、モラハラ加害者はそのような理由なく、理不尽にハラスメントをしてきます。

そのため、「この人はなぜ、私に意地悪をするのか」と被害者がいくら原因を探って対処しようとしても、らちがあきません。

いったい自分の何がどうしていじめに結びつくのかわからないので、被害者はいつも不安です。さらに「総合的に自分が悪い」と思わされてしまいます。

支配しようとする

モラハラ加害者は、頭が良く、前述のとおり普段は魅力的な人が多いのです。そして、ときに優しくしたり、ときに被害者を不安に陥れたりして、心理的に操るのがとても上手です。

そういう「アメとムチ」のような方法で、被害者を支配しようとします。

被害者を支配することができれば、「八つ当たりの対象」や「使い走り」など、自分に都合よく利用できるからです。

こういった支配は、意外にも、部下から上司へのアプローチで行われていることもあります。

モラハラ加害者が部下で、被害者が上司という事例も、とても多く見られるのです。上司を心理的に操ることで、部下は自分の都合よく仕事をすることができるからです。

このように、モラハラ加害者は一般的なイメージよりも実態がつかみにくいものです。

まだ、「見るからに意地悪そうな人」や、「口が悪く横柄な人」であれば、警戒することもできます。

しかし、本物のモラハラ加害者に、「意地悪そうな人」「口が悪い人」は多くありません。むしろ、職場では「穏やかな人」「真面目な人」などと評価されている人が、モラハラの加害者であることが多いのです。

モラハラ加害者の心理

モラルハラスメント加害者には、ある心理的特徴があります。

他人の感情に共感できない

モラハラをする人は、他人の感情が理解できません。さらに、自分自身の感情もはっきりわかっていないことがあります。

自分の感情にも他人の感情にも共感できないので、自分の感情的苦しみも、他人の苦しみもわかりません。

同情もできないし、相手を悲しませることへの罪悪感に乏しいです。

嫉妬深い、妬みやすい

モラハラの加害者は、実は劣等感が強く、自分より優れている人や自分が持ってないものを持っている人に嫉妬をします。

仕事においては、自分よりも技能が高い人や、上司に可愛がられている人に対して嫉妬し、その人に嫌がらせを仕掛けてくることがあります。

あるいは、ターゲットとなっている被害者が持つもの(例えば地位や人望、実績など)を奪おうとしてきます。

強い劣等感を努力で克服するよりも、自分にないものを持つ人を蹴落とした方が、楽だからです。

モラハラの被害者であった過去がある

成育歴が劣悪であったり、虐待をされて育っていたりと、モラハラの加害者の多くは幼少期に愛情を受けていません。

そのため、他人への共感力が乏しく、感情が不安定で、人から様々なものを奪おうとしてしまいます。

子どもの頃から健全な人間関係を築くことができず、「奪うか奪われるか」「いじめるかいじめられるか」という不安定であったことが多いのです。

加害者からすると、被害者となっているあなたですら、「自分を攻撃する恐ろしい人」と映っているのかもしれません。

小心であるのに、過度に自己愛が強い

モラハラの加害者には、強い劣等感と、強い自己愛が共存しています。

自分のことが大嫌いである一方、自分は特別な存在であり仕事もでき、誰からも尊敬されて当たり前の人間であると思っています。

こういった矛盾した心理を共に持っています。そのため、日々の仕事ではいつも自分が誰かに認めてもらえないと不安である一方、自分を特別視しない人間には強い怒りを抱きます。

被害者(かもしれない人)の心得

モラハラの被害者は、「自分が被害者である」ということに気づかないことが多いです。

まずは、職場にどうしても意味の分からないことでいじめてくる人がいるのであれば、「もしかして、自分が受けている行為は、モラハラなのかもしれない」と疑うことから始めてください。

加害者は、前述のとおりとても巧みな方法で、周りに気づかれることなくいじめを行います。

そういったことを知らないまま、不用心に周囲の人に相談してしまうと、あなたが逆に「気にしすぎじゃないの」などと思われてしまうかもしれません。

そのため、モラハラを受けているかもしれないと思った場合は以下のことに気を付けましょう。

「自分が悪いから」という思考をやめる

自分がいじめられるのは、「自分に落ち度があるから」「自分が上手く仕事ができないから」などと思っている人は、まずその思考をやめましょう

モラハラ加害者は、前述のように、被害者を巧みに支配して、「あなたには価値がない」「あなたは無能だ」と思わせようとしています。

一旦、多少強引であっても「おかしいのは加害者のほうだ。私には悪いところはない」と考えましょう。

あるいはそこまで強く思いきることができない人は、「たしかに私には〇〇はできないかもしれない。

だからといって、無視されたりからかわれたりするのはおかしい」と考えましょう。

モラハラとは何かを知れば、おのずと「おかしいのは自分ではない」とわかるようになってきます。

それが、最初の一歩です。

社内の人には不用心に相談しない

モラハラの被害に遭っていて、冷静に自分の置かれた立場がわかるようになってきたら、社内のしかるべきところへ相談に行ってもいいかもしれません。

しかし、まだその段階に至っていないのであれば、むやみに社内の誰かに「〇〇さんにいじめられている」とは相談しないほうがよいでしょう。

モラハラの加害者は、集団心理を巧みに操ることができる人もいます。そのため、あなた以外の人には信頼されているかもしれません。

特に、加害者があなたの先輩などであれば、あなたは確実にその集団内では弱い立場です。

そんななかで、同僚や先輩の誰かにそのような相談をしても、悪口を言っていると捉えられることがあります。

また、社内にしっかりと機能した「相談室」などがあれば、相談することによって上手に対応してくれるかもしれません。

しかし、一般企業で「モラハラ」という難しい案件をスムーズに解決できるかというと、かなり疑問です。

モラハラを仲裁できるレベルの手腕を持つカウンセラーや相談員は、本当に少ないです。そういった人を配置している会社は、大企業であっても多くはありません。

社外の人に相談する

とはいえ、モラハラらしきいじめを受けているのなら、必ず誰かに相談をして欲しいと思います。一人でうつうつと悩んでいると、考えが煮詰まります。

さらに「自分が悪い」「できることは何もない」など、悲観的になっていきます。

しかし前述のとおり社内の人は避けた方が無難ですから、社外の友人やカウンセラー、自治体の労働相談員などに相談してください。

もしかして、自分の受けている行為はモラハラかもしれない。でも、そうではないかもしれない、と悩んでいるのであれば、外部の人の冷静な意見を聞いてみましょう。

記録を残しておく

モラハラらしき言動をされたら、できるだけその事実を記録しておきましょう

いつ、誰が、どこで、何を言ったか(したか)。それを、なるべくあなたの感情を省いて記録に残します。

日記帳などに記録しても良いです。あるいはボイスレコーダーを用意するのも一つの方法です。

その記録をあとから読み返してみると、「これは、完全に嫌がらせだ」「このように言われるほど、自分は悪いことはしていない」「あまりにもひどい」と、冷静に判断することができます。

被害に遭っているとどれだけひどい行為であっても「慣れ」によって感覚が鈍くなってしまうものです。「このくらいは我慢しなければ」と思い続けているうちに、被害はどんどん深刻化します。

それが、証拠を残して後から振り返ると、事の重大さにはっと気が付くことがあります。

また、外部の人に相談するときには、この証拠を一緒に確認するようにしてください。

外部の人の冷静な目から見ても「これはいじめだね」「モラハラだと思う」という意見が聞けるかもしれません。

そうすると、「自分は悪くない」という考えを一層強く持つことができるようになります。

さらに、今後モラハラについて会社側に相談したり、訴訟などの損害賠償請求をしたいと思ったりしたときには、こういった「事実の詳細記録」はとても役に立ちます。

また、「記録に残す」という行為が、心理的な良い作用になることがあります

日記帳に書くとか、レコーダーに録音することによって、「この証拠物は、後から何らかの強みになるかもしれない」と感じられるようになります。そうすると、あなたの心に余裕が生まれます。

あなたがまだ、いじめの渦中にいるのなら、冷静な判断は難しいでしょう。その証拠を使って「訴えてやろう」とか「会社に相談して、加害者に指導してもらおう」とは、今すぐには思えないはずです。

しかし、「いつか訴えてやる」という理由で記録を残すのではなく、心理的優位に立つために記録を残すのです。

心理的優位に立つというのは、モラハラの被害に遭っている人の協力な武器です。

そのための証拠集めとして、淡々と取り組んでください。

このように、モラハラというのは一般的なイメージ以上に、陰湿で対処が難しいものです。

職場いじめに遭っている人は、まずモラハラとはどういうものか、加害者はどういう人で、どのような手法でいじめを行っているのかを知ってください。

そして、社内での立場を守りながら、しっかりと証拠を残しておくことです。

不用心なアクションを起こして不利な立場に立たされるのではなく、心理的な余裕を持つところから始めて欲しいと思います。

モラハラから被害から脱するには

それでは、職場という狭い空間におけるモラハラから脱するにはどうしたらよいでしょうか。

いつまでも被害者に甘んじてしまう人には共通点があります。

それは、「自分にできることは何もない」「自分の居場所はここしかない」と、自分自身の固定観念に囚われていることです。

このように、「自分には行き場がない」という考え方をしていると、あなたは弱く自信がなく、ますますモラハラの被害者となっていきます

自信がなく弱い人は、どうしてもイジメの対象になりやすいからです。

ちょうど、小中学校でのいじめと構図が似ています。いじめられている子は不登校にでもならない限り、教室以外に逃げ場がありません。

それをいいことに、いじめがエスカレートすることがありますが、それと同じです。

モラハラの被害は、同僚や会社側に相談しても改善しにくいということを述べてきました。

一人で対応しようと頑張っても、改善の可能性は低いのです。

次第に気持ちが暗くなり、うつ病に罹る可能性もあります。身体を壊したりうつ病などにかかって心を病んだりすれば、結局転職先も見つからず人生の大事な時間を大きく無駄にすることになります。

そのため、そういった状態になる前に、職場を離れて新たな場所に移ることができるように準備しましょう。

モラハラの被害が甚大で、すでに心身不調になっているのであれば、休職をするか退職するかして、自分を守りましょう。

あるいはそこまで深刻な状態になっていないのであれば、心のエネルギーが枯渇する前に、「行き場」を用意するのです。

まずは3か月分の生活費を貯蓄

まずは、モラハラに耐えきれず辞めることになったとしても、最低3か月くらいは生活できるくらいの貯蓄をしてください。

「辞めても生活に困らない」という金銭的な余裕は、「死ぬほど辛いなら辞めればいいんだ」という心強さにつながります。

家族がいる人は、生活費の支えを貯蓄できるか、あるいは当面援助してもらえるか相談しましょう。

在職中に転職活動をする

さらに、他の職場へ移るための転職準備をしてください。

これも、考え方は貯蓄と同じです。「いざというときはいく場所がある。自分が働くことができる場所は他にもある」となれば、余裕が生まれるのです。

モラハラを受けているというのに、我慢しなければならないのは、「他に自分が働ける場所などない、この場所にいるしかない」という思いこみがあるからです。

今すぐ転職の決意をする必要はありません。会社を辞めずに転職活動をすれば、その職場以外にもいくらでも行き場があることに気づくでしょう。

転職サイト(エージェント)に依頼すれば、日中働いているあなたに代わって、最適な職場を探してくれます。

モラハラやパワハラが全くない会社を探すことは難しいものの、エージェントは専門家です。

悪い噂がある会社などは避けてもらったり、業種ごとにモラハラやパワハラが起きやすい職場を助言してもらったりすることもできます。

いずれにせよ、今の会社以外に、職場選びの専門家を味方につける必要があります。一人で悩んで対策を考え、転職活動も独自で行おうとしても難しいからです。

今のモラハラ被害の悩みを相談して、「次は絶対に人間関係が穏やかな職場で働きたい」と伝えて援助してもらうのです。

専門家の力を借りれば、穏やかで働きやすい職場を見つけることは十分に可能です。

とにかく、「ここで耐えるしかない」という思考をやめなければいけません。視野を広げるためにも、職場を変える準備をしましょう。

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