自分のミスを部下になすりつけて、自分の非を認めずに逃げてしまう上司がいます。
ミスをしても謝らないし、意味不明な理屈をこじつけて、自己防衛します。自分に都合の良いことだけは認めますが、それ以外のことは理解しようとしません。
このような上司を持つ人はどのように付き合ったらよいでしょうか。
今回は、部下にミスの濡れ衣を着せ、逃げる上司との付き合い方と対応法について解説します。
ミスが多いが責任が取れない上司
実務能力が低く、判断力も乏しいため、ミスが多い上司もいます。
このような人が、自分できちんと尻ぬぐいができれば問題はありませんが、中には自分のミスを部下のせいにして逃げてしまう人がいます。
ある不運な部下Aさんの話)
「昨日までに出せと言っておいた〇〇報告書がまとまっていないぞ!何やってる」
と上司からいきなり怒鳴られました。
そのような話は一切聞いていなかったため
「恐れ入りますが、昨日までに提出するという〇〇報告書とは何のことでしょうか」
と尋ねました。
上司はハッと何かに気づいたような表情をして自分のパソコンのメールボックスを確かめました。
毎回なのでもうわかるのですが、上司はメール送信をし忘れて下書きフォルダに指示メールを入れたまま放置してあるのです。
「いや、言ったはずだ。昨日までに〇〇報告が必要であることは、この部署にいれば誰だってわかるはずだ。
それなのに、私が具体的に細かくアレコレ指示しなかったことを言い訳にして、提出期限までに出さないのは君の責任だ。
取り締まり役(上司の上司)には、君からの資料提出が遅れたということで連絡しておくが、以降このようなことがあったら、本当に君の評定を下げるからな!」
このように、自分の指示忘れを棚にあげて、結局すべて私のせいにするのです。
このように、自分の指示忘れというミスを、都合の良いように解釈して部下のせいにしてしまう上司。
本来なら自分のミスは自分で片づけるべきです。
それに、自分のミスに気づいたのなら、部下に対してであってもきちんと謝るのが社会人のマナーではないでしょうか。
さらに、上司という立場なのだから、本来は部下がミスをしたときであっても、責任を取るべき立場であるはずです。
それを、部下に責任をなすりつけて、自分には問題がなかったということにして逃げてしまうのは、本当に腹がたつものです。
このタイプの上司の性格
このように、自分の非を認めず部下を見捨てて逃げてしまう上司は、意固地で頑固な人が多いです。
年配の人や頭の固い男性に多く、柔軟に物事を判断することができません。
また、思い込みが激しく、「自分はこういったつもり」「自分のやり方ではこの方法はうまくいったから、何とかなるはず」といった勝手な判断をします。
そのため、ミスが発生しやすいのです。
しかしそれを臨機応変にフォローすることができないため、身近にいて、罪をなすりつけやすい部下に、責任を押し付けるのです。
さらに、被害妄想が強く劣等感を持つ人も多いようです。
このような人は、自分より目上の人から悪く評価されることを、とても怖れています。
そのため、上司であるという立場であっても、部下を守ることができません。
上からの叱責を自分の責任として受け止めることができないため、何とかして身を守ろうとするからです。
そのときに思いつくのが、やはり「部下のせいにする」という簡単な方法です。
この方法であれば、誰にも面と向かって文句を言われないし、うまくやれば自分だけ身を守ることができます。
部下に罪をなすりつけても、多くは「証拠物」が残っていないし、部下の側も泣き寝入りするケースが多いため、味をしめていて、ミスをするたびに部下のせいにして逃げてしまう人もいます。
また、気が小さく、人に弱みを見せることに異常な恐怖心を持っていることもあります。
自分が非を認めてしまったら、今度は部下が自分を軽んじて、ことあるごとにミスのしりぬぐいをさせられるのではないか、と怖れているのです。
そのため、部下には心を開きませんし、弱みを見せません。
ミスをしても絶対に自分の責任であることを認めませんし、部下と協力して問題を解決しようという発想も乏しいのです。
部下に責任をなすりつけ逃げる上司の対処法
もしあなたの上司が、このような人であったら、これからどのようにこの上司と付き合っていったら良いでしょうか。
あまりにも言いなりになっていれば、都合よくミスをなすりつけられ、だんだんあなたの方が「仕事ができない人」に仕立て上げられてしまいます。
しかし、このような器の小さい上司に対し正論をぶつけると、それこそ子どもじみたケンカのようなトラブルに発展する可能性があるため、お勧めできません。
その場では反論しない
このような上司は、その場で反論されると逆切れしてしまいます。
実際に上司のミスであったとしても、トラブルの渦中で本人が感情的になっているときに指摘しないようにしましょう。
なぜなら、器の小さい上司をますます感情的にさせ、混乱させてしまうからです。
結果、後々まで感情的なしこりを持たれて、目の敵にされることがあるので注意してください。
さらに、上司のミスであると直接指摘してしまうと、上司側が自分のミスを振り返って反省する機会を奪ってしまいます。
一旦は身代わりになり非を受け入れる
このような上司をからミスを擦り付けられた場合、悔しいかもしれませんが、一旦は非を受け入れて「申し訳ありません」「確認します」などと、受け入れる努力をしましょう。
こうする目的は、あなたが大人の対応をすることによって、上司自身が自分の言動を振り返り、反省の機会を与えるためです。
自分のミスを部下になすりつけて、自分だけ逃げる上司の多くは、小心者というだけで根っからの悪人は少ないです。
そのミスをなすりつける理由は、単にその場で自分が糾弾されたり、責任を取らされたりすることが嫌なだけです。
多くは、部下をおとしいれるつもりはありません。とにかくその場の保身をしたいだけです。
そのため、一旦はミスの責任が「上司にあるわけではない」という主張に同意してあげましょう。
必要であれば、「私の〇〇が足りませんでした」などと自分の非を認め大人対応をしましょう。
そうすると、そのときは保身で一心不乱であった上司も、時間を置くと自分がやったことを冷静に見られるようになってきます。
心の中では部下へミスを押し付けたことを気に病んでいたり、反省したりしていることもあります。
こういった反省の機会を持ってもらうために、その場で上司のミスを指摘せず、時間を置くためにミスの責任を一旦引き受けるということです。
問題の解決方法を上司自身に指摘させる
問題が起こっている間は、とにかくあなたの側が大人になって、「どうしたら、今起こっている問題を解決できるか」に注力してください。
誰の責任か、どうしてミスにつながったか、といった上司側の主張はできるだけ受け流しましょう。
それよりも、この問題を解決するためには何をするべきか、今後問題を起こさないためにはどうしたら良いのかを考えてください。
その際は、問題の解決方法そのものを上司自身に指摘させましょう。
「このようなことが今後起こらないために、我々はどのようにすべきでしょうか?」「次から、私は何に気を付けるべきでしょうか」
このような問いかけを上司にしてください。
そうすると上司の側も、自分のミスを部下になすりつけていることを自覚しているので、自分自身のことも含めて次はどうするべきかを考えるはずです。
中には全く自分のミスを忘れてしまい、完全に部下のせいにしていて、「次はこうしろ」と部下に対する命令しかしない上司もいます。
ただ、やはり心の中では自分の行ったことが分かっています。
部下である側の人が、謙虚に次の対策をしている姿を見せることで、上司の良心に訴えることができます。
次の解決策を復唱し上司にも確認
上司のミスを直接指摘すると、角がたつし後々関係性をこじらせることがあるため面倒です。
しかし、上司のミスをそのまま放置していては、また同じことが起こったときに、再度同じようにミスの責任を背負わされる羽目になります。
そのためにも、「次に同じ問題が起こらないためにはどうしたらよいか」を、上司自身に考え、指示してもらうようにします。
そしてその内容を復唱し、上司側にもミスが起こらないため対策をしてもらうように確認しましょう。
今回は、報告書提出期日について「言った言わない」という混乱があったようです。
今後は、〇〇さん(上司)から報告書の提出期限の指示は、必ずメールでいただくということですね?
その方が証拠も残りますし、後から我々部下が期日を忘れないように参照することもできるから、ということで承知いたしました。
その際は、我々の方からも、毎回必ず返信をして、意思疎通の漏れが無いようにするということで、よろしいでしょうか?
このように、上司の指示という形をとりながら、今後は上司の側にも気を付けるべきことがあるということを含ませておきましょう。
やっかいな上司は業務スキル向上に役立つ
ミスを部下になすりつけて逃げる上司に煩わされるのは、本当にやっかいなものです。
本来なら上司が行うべきミスのしりぬぐいや次への対策を引き受けなければならないと思うと、「管理職としての給料をもらっていないのに!」と腹が立つのもわかります。
しかし、こういった上司の器を持たない上司と、正面から闘っていては時間の無駄です。
それよりも、やっかいな上司の下で働くというのは、自分の業務スキルを向上させるためのトレーニングであると、前向きに考えて乗り越えてください。
こういった上司と付き合っていると、自分が管理職になったときに気を付けるポイントを学ぶことができます。
また、部下ができたときに、部下の気持ちがわかり、人間性豊かな上司となれるかもしれません。
あるいは、上司としての器を持たない人をいつまでも管理職の座につけ続けている会社に見切りをつけて、転職することも選択肢に入れてください。
そのときのためにも、業務スキルを上げて、転職での市場価値を高めておくことです。