履歴書の志望動機欄は、採用担当者や、入社後に上司となる人が必ず読む場所です。だからこそ、履歴書のなかでは最重要ポイントです。
ここに、ありきたりのことを書いて応募するだけでは、書類段階で落ちてしまう可能性もあります。
特に、未経験の職種へ応募したい人は、「熱意」や「会社への憧れ」の一本調子で書いてしまい、なかなか面接にまでたどり着けない人もいます。
今回は、未経験職種へ転職したい人の、履歴書の志望動機欄の書き方と、例文を紹介します。
履歴書志望動機欄の基本
未経験職種への転職は、やや不利なところからのスタートになります。
そのため、履歴書の志望動機欄はしっかりポイントを押さえて書き、書類選考を突破したいものです。
この志望動機欄では、以下のことを絶対に押さえるように注意して書いてください。
- 未経験だが、その仕事に就きたいと思った理由
- あなたが会社に貢献できる適性や経験(会社側のメリット)
この3つを含むように、志望動機を組み立てます。詳細は例文とともに後述します。
具体性がないと動機がボンヤリする
未経験職種へ応募したい人が書いてしまいがちな表現があります。
それは、「貴社の事業に魅力を感じました」のような、抽象的で具体性のない動機です。
どの会社でも通用するような表現や、マニュアル本からひっぱってきただけの志望動機であると、採用側の面接官の心に届きません。
例えば以下のようなものです。
NG志望動機 具体性がないパターン)
私は社会に役立つ仕事がしたいと考え、社会的活動を展開されている貴社を志望いたしました。
このような文であると、抽象的であり、どの会社にでも使えるものです。
この人にとって社会に役立つ仕事とは何かがはっきりされていません。また、前職の経験から何ができる人なのかもわからず、ボンヤリとした人物像しか想像できません。
社風を動機にすると危険
また、未経験者が志望動機に書く内容に「社風に惹かれて」というものが多いのですが、これは読み手によっては悪印象を与えるため、慎重にしましょう。
NG志望動機例 社風が合う)
貴社の〇〇という社風を知り、私の考えと近いため志望いたしました。
社風というのは、入社してみないとわからないものです。
それなのに「社風が自分に合う」と主張する応募者に対して「勝手な思い込みで判断する人だな」と捉えられることがあります。
また、外から見ている「社風」に魅力を感じて応募してくる人に対して、「心地よい居場所を探しているのかな?」といった見方をする面接官もいます。
「スキルアップ」「ステップアップ」は避ける
向上心をアピールしようと、スキルアップをしたいとかステップアップを心がけたいという書き方をする人がいます。例えば以下のような志望動機です。
NG志望動機例 ステップアップを動機としているパターン)
前職では〇〇プログラムの開発を中心にしておりました。
貴社は〇〇について、より幅広い業務を担当されています。
貴社において知識や技術を習得し、自分も成長し、ステップアップしていきたいと考えております。
このような志望動機だと、応募した会社がステップアップの階段の一つのように受け取られる可能性があります。
向上して会社に貢献したいという気持ちはわかるのですが、書き方によっては「会社を踏み台にするつもり?」と誤解されることがありますから注意しましょう。
謙虚になる必要はない
未経験職種への応募だと、自信がないために謙虚すぎる書き方をする人もいます。例えば以下のようなものです。
NG志望動機例 謙虚さと熱意だけを動機としているパターン)
経験がない分野の〇〇職ですが大変興味があり、資格取得にも励んでおります。
実務経験が乏しいため、お役に立てるかわかりませんし、慣れない間はご指導いただく必要があり、恐縮に感じています。
しかし、熱意は誰にも負けませんし、精一杯の努力をするつもりでおります。
応募者の謙虚な人柄は伝わりますが、会社側がメリットを感じないため、採用したいと思わせる志望動機になりません。
分かりやすく、字数は200字程度
採用担当者は数え切れないほどの履歴書を読まなければなりません。
そのため、忙しい担当者が楽に読めるよう、なるべくわかりやすい、シンプルな内容になるように書いてください。
また、履歴書は、採用担当者だけではなく、その上司(人事部長や役員、社長など)も読むことになります。
誰を選考に残して面接に呼ぶかは、こういった人が決めることになります。
このとき、一つ一つ採用担当者が解説しなくても、応募者のことをイメージできるものであれば、それだけでも好印象を与えることができます。
採用担当者が、補足説明しなければならないような、わかりにくいものや読みづらいものは、選考に残らないのです。
また、履歴書のスペースにぎっしり書き込むのも読みづらくなります。150字~200字程度におさまるようにすれば、バランス良く書けます。
わかりやすさやシンプルさが大事とはいっても、箇条書きだけでは良くありません。
敬称(貴社、貴事務所など)を間違えない
履歴書や職務経歴書を書く際には、応募する予定の会社を、「貴社」と表現してください。
「御社」は話し言葉での表現ですから、履歴書で使ってはいけません。(面接では、貴社ではなく御社と伝えてください)
さらに、応募を予定している組織が会社ではない場合は、貴社という表現は使えません。以下を参考に、応募先にあった敬称を使いましょう。
会社 → 貴社
協会 → 貴協会
学校法人、大学 → 貴校
保育園、幼稚園 → 貴園
財団法人 → 貴財団
組合 → 貴組合
病院 → 貴医院・貴院
法律事務所、税理士事務所など → 貴事務所
未経験者の受かる志望動機の書き方と例文
上記を踏まえ、未経験の職種に応募したい人が書類選考で受かる志望動機の書き方を考えていきましょう。基本的に以下の項目を、具体的に書くのが、受かる志望動機の書き方になります。
- 未経験だが、その仕事に就きたいと思った理由
- あなたが会社に貢献できる適性や経験(会社側のメリット)
未経験の職種へ応募したい人は、どういう訳で今までと異なる職種を希望しているのかを見せることが必要です。
しかし、単に「望んでいた職業だから」「興味があったから」では、人事担当者を納得させることは不可能です。
その仕事に関心を抱くことになったきっかけや理由を主張し、それが相手に理解できるものでないといけません。
前職の経験を役立てたいことを志望動機に
前職とは違う職種への転職では、採用側の会社は「前職と違う職種を選ぶのはなぜだろう?」と思っています。
それをきちんと履歴書の志望動機欄に書いておく必要があります。
さらに、前職で経験してきたことを、次の職場で役立てたいということを志望動機にしながら、会社側のメリットとしてまとめます。
例えば以下のような形にしましょう。
例文 前職の経験を役立てたい)
前職のパソコンインストラクターの業務で、何人もの人が利用目的や機能を知らないまま、ハードやソフトを買っていると思いました。
インストラクターの仕事もやりがいを感じていましたが、よりパソコンそのものをご提供する仕事に興味を持ち始めました。(仕事に関心を抱くことになったきっかけや理由)
これらの前職でのPC知識を役立て、ご利用者様のよきコーディネーターとなれる(会社側のメリット)ように、貴社の店頭販売担当者を志望した次第です。
また、当然ですが面接でも「なぜ前職とは違う仕事へ転職しようと思うのか」と聞かれますから、答える準備をしておいてください。
前職の業務がきっかけで興味を持ちスキルの融合を目指したい
前職が専門の職業であったり、少しでも特殊なスキルを身に付けていたりすると、たとえ経験がない状態であっても重宝されることも考えられます。
求人情報に「〇〇の実務を〇年以上経験していた人」「〇〇の知識があればなお可」などと掲載されていることもあります。
しかし、たとえそのスキルが無くても、企業リサーチをしている間に企業が欲している技術に気がつくこともあります。
そういったスキルがあれば、積極的に「融合」して、応募先企業に提供できるようにアピールします。
例えば以下のような形です。
例文 前職の業務がきっかけで興味を持ちスキルの融合を目指したい)
前職のシステムエンジニアの仕事で、金融機関のシステムを手がけることが多くありました。
次第に金融業界そのものへ注目するようになり、興味を持つようになりました。(仕事に関心を抱くことになったきっかけや理由)
前々年、証券外務員の資格を取得し、転職を決意しました。システムエンジニアの能力を活かせる(会社側のメリット)ような金融マンとなり、貴社にて成果を残したいと思っています。
前職との共通点を志望動機にする
前職が全く違う業務だったとしても、細部に至るまでリサーチし、応募業務との共通部分を探してみましょう。共通点があることは十分に志望動機になります。
例えば以下のようになります。
例文 前職との共通点を志望動機に)
前職では銀行員として、7年間仕事に従事してきた間に、数々のご相談者の住宅ローンの設計方法について、ご相談を受けてまいりました。
そこで培った知識や経験を住宅営業の業務にて発揮(会社側のメリット)し、お客様や貴社に尽力して行きたいと考え、このたび応募させていただきました。(前職との「住宅」に関する共通点)
前職では、工場の生産管理を担当しました。原材料の調達や工程の段取り、管理、見直しなどを主に行ってまいりました。
旅行案内の窓口担当者の仕事は、前職とは異なる業種で経験がない状態ではあります。
しかし、旅の段取りや管理など、今までの経験がいずれもが活きる(会社側のメリット)と考え、応募した次第です。(前職との「段取り、管理」という仕事内容に関する共通点)
このようにすれば、共通点を探すことで、アピールできるものが広がります。
ただ、それをやるには、まず応募職種にはどういうスキルや知識が必要とされるのかをとらえる必要があります。
応募職種に関してしっかりと調べて理解し、さらには応募先の会社そのものについても調べてみましょう。
同じ職種であっても、企業ごとに必要とされるものが異なるからです。
何度か職場を変えたことがある人は、直近の職は当然として、過去を振り返って、希望している仕事との接点を見つけ出しましょう。
資格や知識を活かしたいことを志望動機に
未経験者の場合、全く未経験よりは、何か業務に関係性のある資格を持っていることや勉強していることをアピールしたほうが有利な場合があります。例えば以下のように志望動機に組み込んでみましょう。
例文 資格や知識を活かしたいことを志望動機に)
一般事務職に従事している傍ら、学生のときから続けている英語の勉強に懸命に取り組んできました。TOEICを1年ごとに続けて受検しており、現在800点以上は随時取れるような実力が身に付いてきました。(資格や知識を活かしたい)
英語に加えて、昨年合格した貿易実務C級の知識を、貴社にて活かしたい(会社側のメリット)と思い、応募致しました。
例文 資格や知識を活かしたいことを志望動機に)
5年間、印刷会社の販売促進と配送業務を行ってきました。
その間に制作の方にも興味を持ち始め、スクールに通ってイラストレータを一通り学び、DTP検定Ⅱ種の資格を取得しました。
必死に資格や技術を習得しましたし、これからも勉強を続けていきます。(資格や知識を活かしたい)
その技術を使い貴社にて戦力になりたい(会社側のメリット)と考え、志望いたしました。
もっている資格を活かすために志望したという理由も、採用側の人事担当者にアピールしてもいいでしょう。
長期的に勉強に励んできた行動を示すことができれば、説得力もあがり熱意も伝わります。
中途採用は即戦力が求められるため、資格だけで高評価を得ることはできませんが、熱意や知識の裏付けとなります。
適性や人柄を志望動機に
仕事内容に関する技能だけではなく、あなたの性格や人がらなどの「適性」をアピールするテクニックもあります。
とくにキャリアやスキルが乏しい第二新卒などの若い人にとっては有効な方法です。
例文 適性や人柄を志望動機に)
前職では一般事務職に就いておりました。社内外の方の多様なお問い合わせやご相談などの対応を行うことが多くありました。
常に相手の立場を考え、気持ちを想像しながら業務を行ってきました。
好感を持たれる声の聞きやすさや表情、その場に応じた臨機応変な振る舞いを意識して参りました。(適性や人柄)
おかげさまで人から相談されたり頼られたりすることが増え、やりがいを感じました。
そのため直接人に会って、サポートする業務に興味を抱くようになりました。
こういった経験と適性を、人材アドバイザーとして存分に貢献できる(会社側のメリット)のではないかと考え、志望いたしました。
適性や人柄を志望動機にするときも「どのような適性があるか」という部分だけではなく、それをイメージしてもらえるエピソードを伝えられると、説得力が増します。
未経験者は専門家に添削してもらう
今まで見てきたように、未経験の職種へ転職を希望する場合は、なぜ今までとは違う職へわざわざ転職したいのかを書かなければなりません。
また、会社側に何を提供できるのかといった会社のメリットも入れておかないと、書類選考で落とされてしまうこともあります。
上に示したように、志望動機として成り立つネタをしっかり探し出して頑張って書いてください。
しかし、自分一人で書いていると、どうしてもマニュアル表現になったり、「頑張ります」といった精神論で終わってしまったり、あるいは「キャリアアップしたいため」などのNGワードを書いてしまったりします。
そのため、未経験の職に応募したい人は、転職サイト(エージェント)のコンサルタントに、志望動機を添削してもらうようにしてください。
志望動機欄は採用担当者が必ず見る最重要項目です。
具体性があり、その仕事を選んだという理由がしっかり書かれ、かつ会社側のメリットも提示できるような上手い志望動機を書くには、専門家の援助が要ると心得ておきましょう。