転職面接で、まずまず上手く運ぶと、「いつから入社できますか?」と聞かれます。
はっきり答えた方が良いのですが、今の会社での引き継ぎもあって答えられない人もいるのではないでしょうか。
・内定先に「いつ入社できる」と確約できない
・前職の会社からの強い要請があり、1ヶ月ほど入社時期を後に、と言われ困惑している
・円満退職が大事と言われているが、円満にこだわりすぎて転職先が見つからない
・入社日と退職日の折り合いがつかなくて困る
と悩んでいる人も多いと思います。実際、転職先にはどの程度待ってもらえるものでしょうか?
今回は、転職先への「入社日」について解説します。
入社までの期間が長くなりそうな人は不利
入社時期をいつにするかという問題について、転職しようとしている人の多くが勘違いしていることがあります。
それは、「事情があれば、転職先の会社は、入社日を待ってもらえるはず!」と考えていることです。
基本的に、会社は人手が足りないから、中途採用で人を採用しようとしています。
だからこそ、採用側の会社は、「いつでも入社できます」という人を優先して採用しようとします。
中途採用の場合は、「内定したらすぐ入社してほしい」というのが会社の本音であるといえます。
入社までは1か月~1か月半(45日後)まで
会社によってさまざまですが、中途社員の場合、内定から入社まで待ってもらえる期間は、一般的に1か月くらいが平均です。
1か月半(45日くらい)は待ってくれる会社も多いようです。
しかし、それ以上になると、会社は「他の人にした方がいいかな」と思ってしまいます。
あなたの他に、同じ年齢で同じようなスキルを持っている人がいたら、入社時期の早い方が採用されることになるでしょう。
たとえば、転職先がどうしても1月から新たな人に入社してほしいと思ったとします。
中途採用の募集をかけて、あなたが応募してきて良い人材であったため「1月くらいには入社してくれるだろうな」と期待して内々定を出したとします。
それでも、あなた他にも「次点」になった方がいると仮定します。
あなたが一番の候補者であったとしても、面接の後、あなたが「入社は3月からでいいですか?」と質問すると、どうなるでしょうか。
おそらくその「次点」の人が、内定確定するでしょう。
あなた以外に次点(ライバル)がいなければ、他に人がいないのですから、待ってもらえるかもしれません。
でも、他の人がいれば、入社日で負けてしまうということです。
そのくらい、「早く入社できるか否か」というのは、中途採用ではとても大事な要素です。
退職までに必要な期間を計算しておく
現在仕事をしているために、どうしても「この日までは退職できないし、新たな会社に入社できない」という事情がある人もいるでしょう。
決算が終わるまでは辞めることはできないとか、今のプロジェクトが終わるまでは難しいといった特別な事情がある人は、退職までに必要な期間を計算しておき、その日には必ず退職するつもりで転職活動をすすめてください。
ただし、「〇〇が終わったら」「後任者が見つかったら」考えすぎていると、いつまで経っても転職できなくなってしまいます。
転職を決意したにもかかわらず、現職での義務感にとらわれて、ずるずると今の仕事を続けてしまうことになります。
そのため、次の会社へ移ると決めたら、「この日以降なら退職しても大丈夫だ」という日を自分なりに計算して決めておき、逆算して間に合うように転職活動をしなければなりません。
履歴書に入社希望日は書かない方が良い
応募したい会社へ提出する履歴書の追記欄などに「在職中であり、入社までに2ヶ月間が必要となります」と、記載しておくと、トラブルを防ぐことができるという意見もあります。
在職中の人で、どうしても引き継ぎに時間がかかりそうな人や、プロジェクトにかかわっていて数か月間は転職出来ないという人がこのように書いてくる場合があります。
たしかにとても義理堅く、誠実な人柄であるとは思います。
しかし、履歴書に書かれている希望入社日が数か月後であると、「条件に合わない」と判断されて、面接に呼ばれないとか、一次面接で落とされてしまうということもあります。
というのも、例えば1月にどうしても入社してもらわなければ困る事情がある会社であれば、履歴書に「入社は3月以降になります」と書いてあれば、そこですでに「選考の対象外」となってしまいます
そのため、どうしても面接まではたどり着きたいという場合は、履歴書にはあまり事情は書かないでおく方が良いかもしれません。
その場合は「入社日については相談させてください」などにとどめておくのもいいでしょう。
入社日を確約できない事情がある人であっても、実際に担当者に会って相談させてもらう機会をもらった方が、交渉がうまく運ぶからです。
入社日を聞かれない場合は不採用?
書類選考が通って、面接を受けた際に、通常は入社日について聞かれることが多いです。
採用側の会社から、入社可能日について聞かれなければ、「不採用だから聞かれないのかな」と考える応募者もいるかもしれません。
しかし、会社によっては、内定を出した後に入社日を調整するところもありますので、一概にいえません。
入社日について、面接で聞かれなくても、採用される人はたくさんいます。聞かれないから不採用であるということではありません。
ただ、その場合であっても、会社側が想定している入社日は、内定を出した後、1か月~45日以内頃のはずです。
ただし、採用側の会社が想定している入社日と、あなたの事情がずれている可能性があるということに注意しなければなりません。
前述の通り、応募者の側は「入社日は待ってもらえる」と思い込んでいることがあります。一方、採用側の会社は「内定を出せばすぐに入社してくれる」と思い込んでいることもあるのです。
そのため、あなたがもし45日以上先にしか入社できないような事情がある場合は、面接の段階でそれとなく伝え、会社側の反応を見た方が良いかもしれません。例えば以下のような形です。
私は現在在職中です。3月末の決算までは在籍し、今の仕事をある程度終わらせ、引継ぎをしてから退職したいと考えています。
そのため、もしご縁があった場合は、入社日は4月1日以降を希望しているのですが、調整していただくことは可能でしょうか。
ただ、上司に事情を伝えて、現職で調整が可能であれば、3月10日頃の入社であれば可能かもしれません。
御社がご希望になっている入社日より長すぎるということでしたら、もう少し前に退職できないか、交渉しようと考えておりますが、いかがでしょうか。
このように、採用側の会社が希望している入社予定日とのズレがないかを、面接日に確認しておきましょう。
「すぐに入社してくれると思って内定を出したのに、想定外であった」などと後から言われると、現職とのはざまで板挟みになって辛い思いをすることになるからです。
引き止められて入社日が答えられない場合
「今、まだ仕事をしています。引き継ぎが完了するまでいてくれと言われています。引き継ぎが完了するのは2ヶ月後です。この場合どうしたらいいでしょうか」
という悩みをよく聞きます。
このように、今の会社の退職日と次の会社の入社日の折り合いがつけられないと、板挟み状態になって辛いと思います。このときはどのように考えたら良いのでしょうか。
その場合は、転職先の要望に合わせた方が絶対に良いと思われます。なぜなら、あなたの人生がかかっている転職だからです。
引き継ぎを完了させて、円満退職したいという心がけは立派だと思います。
しかし、あなたがもし転職先を見つけていて、しかもその会社が〇月には入社してほしいと言ってきているのなら、従うべきは転職先の要望です。
辞めると申し出た時点で、今の会社を本当の意味での「円満退職」はできなくなっているのです。
多かれ少なかれ、辞めることになれば、誰かに迷惑をかけるに決まっています。
だからこそ、必要以上に辞める会社のことを考えていても仕方がありません。それよりも、気持ちを切り替えて、これからの会社の事を優先しても良いはずです。
現在の職場の人に義理立てしすぎて、新たなチャンスを逃してしまうのはもったいないことです。
退職すると決めた段階で、結局今の会社には迷惑をかけることになるのですから、心を鬼にして割り切ることが大事ではないでしょうか。
就業規則に定められた「退職申し出期間」
あなたの今の会社の就業規則を確認すると、「退職を希望する場合は、〇か月前に申し出をしなければならない」などの取り決めがされていると思います。
多くの会社では、1か月前の申し出となっているようです。
この場合は、退職したい日の1か月前に退職の意思表示をすれば良いことになります。その期間以上にあなたを引き止める権利は、会社側にはありません。
「決算が終わるまでいてもらわないと、会社がどうなるかわかるだろう?」「後任が採用されるまでは、いてもらわないと契約違反だ」などと強弁する会社もあるようですが、労働者であるあなたに、そこまでの義務はありません。
法的には2週間前の申し出で良い
就業規則に「退職を希望する場合は、3か月前までに申し出をし、会社側の承認を得なければならない」などと決められている場合があります。
このようなルールが定められていると、絶対従わなければならないと思ってしまいますが、就業規則とは会社が制定しているルールであり、絶対的な拘束力はありません。
労働者側は、その雇用契約を解除したい場合は、民法上の規則を守るだけで足ります。
民法627条1項(期間の定めのない雇用の解約の申し入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する。
「就業規則には3か月前に申し出ろと書いてある」「会社の承認がなければ、退職はできない」といわれても、それに絶対縛られるというわけではないことを知っておきましょう。
どうしても退職日と転職先の入社日が合わない場合は、転職先の希望入社日を優先しましょう。
入社日の変更交渉
しかし、今の仕事をどうしても転職先の入社日に合わせて辞めることができない場合は、転職先の担当者に入社日を変更してもらえるかどうか確認してみましょう。
本来は、転職先の要望を尊重すべきですが、事情があれば調整してくれる可能性もあります。
まずは、メールなどで、お伺いを立ててみましょう。例えば以下のような形にしましょう。
入社日の変更交渉メールの例文
件名:入社日についてのご相談
先日、貴社〇〇職にて採用内定を頂きました〇〇(氏名)です。
この度は労働契約書および就業規則のご送付いただきありがとうございます。
さて、大変恐縮ながら、入社日についてのご相談をさせていただきたいと存じます。
面接では2月10日から入社可能と申しましたが
プロジェクトの完了と引き継ぎが2月末までかかってしまうため
2月末まで現職に勤務し、入社日は3月1日からとさせていただくことは
可能でしょうか。
大変ご迷惑な相談をさせていただき心苦しく感じております。本当に申し訳ありません。
ただ、現職にもお世話になっているおりできる限り円満に退職したいと
考えております。
まことに勝手なお願いではありますが、一度ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
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氏名
name@mail.com
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このように、まずはメールで相談しましょう。
その際は、納得してもらえる説得材料がないと、転職先の会社が不信感を持ちますから、どのような理由で入社日を遅らせたいのかを説明します。
そして、迷惑をかけることを謝罪してください。
入社日を遅らせたい理由に「自分都合」はNG
「今の会社でもう少し頑張って、ボーナスをもらってから辞めたい」「長年働いてきたから、退職後に数週間くらい長期連休をもらってから再就職したい」という人もいます。
こういった人は、「転職先の会社に、事情を正直に話せば、わかってもらえるはず」と考えているようですが、そんなことはありません。
もし、転職先の希望日に入社できない事情があったとしても、その理由が「あなただけの個人的な事情」であれば、相手にかなり悪印象を与えます。
基本的に、入社日を合わせることができない事情は「今の会社の引継ぎ」など、あなただけが調整しようとしても、どうしようもない理由がある場合に限ります。
今の会社に義理立てしすぎないこと
今の会社に義理立てして、円満退職したい気持ちはよくわかります。
しかし、転職すると決めたら、もうすでに今の会社は過去の会社ということです。
誰にも迷惑をかけずに会社を辞めることなど誰にもできません。
転職先に内定をもらった、あるいはもらえそうな感じであれば、迷わず入社日は転職先の要望に合わせることです。
そうしないと、いつまでも入社日と退職日の折り合いがつかない堂々巡りの転職失敗人生を歩むことになってしまいます。勇気を持ちましょう。
さらに、「転職先の会社には事情を話して相談すればわかってもらえる」「入社日くらい、柔軟に対応してもらえる」と甘く考えないことが大事です。
中途採用の場合は「会社の希望日に入社できるか否か」はとても大事な要素です。能力・スキル以上に入社日を合わせてくれる人を重視している会社もあるくらいです。
そのくらい重要であることをを覚えておいてほしいと思います。