今の仕事が残業時間が長く残業代の支払いが滞っているなどの理由で転職したい考えている人は、転職先でも同じことにならないように、確認したいと思うのは当然です。
今回は、残業時間、残業代を転職面接で聞くリスク、悪印象を持たれない方法について解説します。
面接で聞くと悪印象を与える
応募したい会社の人気度合や、売り手市場であるか買い手市場であるかにもよりますが、残業時間や残業代など応募者の待遇面を確認する質問を面接ですれば、やはり悪印象を与えてしまいます。
面接は選考段階であり、会社側が応募者を自由に選ぶという場面だからです。
そのため、「絶対に悪印象を与えたくない。どうしてもその会社に入社したい」と考えているなら、面接では残業時間や残業代のことは聞かないことです。
たしかに労働条件などを聞く権利はありますが、内定が出るまで封印して、我慢して内定を目指すしかありません。
人気のある企業であれば、数人の募集に対して20人~100人以上の応募があることがあります。
その中で、内定前に残業時間や残業代の話が応募者の方から出てくると、他の応募者よりも不利になります。
というのは、「働く前から権利主張しやすい、厄介な人材」「後から残業代未払いの問題などを労基署などに申告しそうな人」と思われてしまうからです。
そのため、絶対に入社したいと思う会社には残業時間や残業代については、面接時にはしない方が良いと思われます。
悪印象を与えずに残業について確認する方法
自分一人で転職活動をしている人は、残業時間や残業代も含め聞きにくいことを自分で聞く必要があります。
前述の通り、待遇についてあれこれ聞いてくる応募者には悪印象を持つ会社が多いので、やはり不利になりやすいのです。
しかし転職サイト(エージェント)を経由して活動している人は、残業についての質問をすべてエージェントに依頼することができます。
悪印象を持たれずに、残業時間や残業代について、内定前に確認できる方法は転職エージェントに確認依頼することです。
悪印象を与えても確認したい場合
どうしても入社したい会社が決まっている場合は、前述のとおり面接の段階では待遇面の質問をしない方が良いと述べました。
ただ、転職を検討している人のなかには、残業時間や残業代の支払いなどの条件が良いところでなければ困るという人もいると思います。
労働時間や残業代の支払いの有無など、「労働環境」を整えるための転職を考えているのなら、悪印象を与えようが何だろうが、今後のためにしっかり確認をして納得してから入社したいという考え方もあると思います。
求人情報から確実なことを読み取ることはできない
求人情報から、残業時間はどの程度であるか、あるいは残業代は本当に支払われるのかを確認したいと、熱心に読むと思います。
しかし、求人情報は応募者を集めるための広告のようなものです。
本当のことよりも、若干(あるいは会社によってはかなり)少なめの残業時間を表示しているケースが大半です。
また、求人情報には「残業代の支給の有無」などという項目はありません。
残業代は、法令上必ず支払わなければならないものであるため、支給しないという選択肢がないからです。
そのため、残業をすれば必ず残業代は支給されるという前提で求人情報が書かれています。
実際は残業しても残業代を払わないという会社は多いのが現実ですが、それを求人情報の段階で見抜くということは、ほぼ不可能といっていいでしょう。
面接で確認するしかない
残業時間の長さについても、残業代が支払われるかについても、転職エージェントを利用しない場合は、面接時に確認するしかないと思われます。
この場合、残業時間の長さについては、工夫して聞くことで、それほど悪印象を与えることなく確認することができます。以下のことに気を付けて聞くようにしてください。
「残業時間」についてはやる気を全面に出して聞く
求人情報からは本当のことは読み取れないため、確認するとしたら面接時に担当者に聞くことです。
その場合であっても「残業時間はどのくらいですか?」とストレートに聞いてはいけません。
残業時間が長いなら入社したくないとか、残業代を払ってくれないなら働きたくないといった消極的な印象を与えるからです。
そうではなく、長期間誠実に、骨をうずめる覚悟で仕事をしたいからこそ、あらかじめ聞かせてくださいといった形で質問しましょう。
例えば以下のような形です。
今回は、私なりに覚悟を決めて転職活動をしております。
面接にて色々情報をいただき、ますます御社に入社したいという気持ちが高まりました。
残業なども覚悟しておりますし、いち早く戦力になれるように努力したいと考えています。
そこで、入社後の自分をイメージしたく、心構えもしておきたいと存じますが、配属される予定の部署の方々の出社から退社するまでの様子やだいたいの帰社時間を教えていただけますでしょうか。
このように、長く健康を保ちつつ働くために確認したいといったスタンスにすると良いでしょう。
「残業時間」について自分なりの上限、条件を伝える
残業は絶対に嫌だというわけではないが、やはり限度があるでしょうし、家庭の事情がある人もいるはずです。
そのような場合には、自分なりの残業に対する考え方や上限、条件面などをそれとなく伝えながら、実情を聞く方法もあります。
前職(今の職場)では、月に100時間超の残業をこなしてまいりました。
業務効率が悪かったと反省しておりますが、この状態を長く続けると心身の不調にもつながるように感じ、働き方を改める必要があると思っています。
そのため、今後はしっかりと業務効率を考え残業に対応したいと考えておりますが、失礼ながら貴社の残業時間はいかがなものでしょうか。
また、業務の効率化のために取り組んでおられることがありましたら、教えていただきたいと思います。
前職(今の職場)では、残業が長く、帰宅できる時間が夜10時を過ぎるのが常でした。
家族との時間が全く取れないため、効率的に仕事を進めたり、働き方を改めたりしようと考えております。
そこで恐れ入りますが、貴社の社員の方々は、だいたいどのくらいの時間までに帰社なさっているか差支えない程度に教えていただけますでしょうか。
このように聞けば「残業は嫌だ」という印象を与えずに、実情を聞くことができる場合があります。
「残業代」を聞くのは慎重に
残業時間の質問であれば、上述のように「やる気」や「自分なりの上限」を伝えながらそれとなく聞くことも可能です。
労働時間というのは働き方を考える上で重要です。面接官も、上手く聞けば教えてくれます。
しかし、残業代は本当に支払われるか、正しく計算されるのかといった給与に絡んだ質問は本当に難しいです。
残業代は、残業すれば支払うというのが法令で決められていますから、建前上、正しく計算されて支払われるのが当然です。
とはいえ、払わない会社は払いません。
しかし、それを面接の段階で「残業代は正しく計算されて支払われるか」と確認しても「いいえ、うちは残業代は払いません」と答える会社は皆無でしょう。
そのため残業代が正しく計算され支払われるかを面接で聞いても、悪印象を与えて不利になるだけかもしれません。しかし、どうしても確認したい場合は以下のように聞いてみるのも一つの方法です。
前職では、残業をしても正しく残業代が支給されず、大変困った経験があります。
恐縮ですが、御社では、どのような規定にて残業代が計算されているか、差支えなければ教えていただくことは可能でしょうか。
残業を覚悟してのぞむつもりですが、その場合は上司の方に申請をして、承認を受けてから残業を開始するというしくみでしょうか。
その際、残業時間について上司の方や会社側の指示に従って計算し、自分で申請するという形でしょうか。
以前の会社では労働時間管理があいまいで困惑した経験がありましたので、お訊ねした次第です。
このように、少し回りくどいですが、残業の仕方や計算のルールを聞くという形で聞きましょう。そうすることによって、会社の実態がわかることがあるかもしれません。
しかし、面接官が残業代の規定を知っているかは会社によって違いがあるため、しっかりとした答えがかえってくるかはわかりません。
また、このような質問をする応募者を嫌って即不採用とする会社も実際にありますから、慎重にしたいところです。
選考が進んできて、「給与面も含めてどのようなことでもかまいませんから、どうぞ質問をしてください」と面接官に促されたときに、逆質問として聞くようにするべきでしょう。
残業代の詳細は内定後に確認する
上記のように面接の段階で残業代の計算方法は支払いについて確認することも可能ですが、やはり残業時間を聞く以上に、会社側に悪印象を与えることが多いです。
そのため、残業代については内定を得たあとに確認するほうがよいでしょう。
内定が出たら、労働条件については書面で明示することが会社に義務づけられます。そのときに、労働条件についての確認という形でしっかり確認をすることは労働者側の権利になります。
さらに、内定が出た後はよほどのことが無い限り、法令上簡単に「内定取り消し」はできないことになっています。
内定後に残業代の計算方法や本当に支給されるかといったことを確認したことを理由に内定取り消しなどをすることは、一部のブラック企業ではあるかもしれませんが、まともな法令遵守意識を持つ会社であれば、そのようなことはしないはずです。
内定後の残業代計算方法の確認メール例文
内定が出た後には、必ず労働条件について書類で提出してもらうようにしましょう。
それを得ないまま、内定承諾してしまうと、会社側が勝手に設定した労働条件で働くことになってしまいます。
内定が出た後は、必ず賃金についての情報を書面で出してもらえるように申請してください。これは、労働基準法で定められた会社の義務ですから、堂々と依頼してかまわないのです。
そしてその確認という形で、残業代の計算方法や支給の実績を聞いてみましょう。
確認は電話よりもメールの方が、記録に残りますのでお勧めです。
件名:労働条件通知書の内容について確認
先日内定を頂き、〇月〇日より入社予定の〇〇(氏名)です。
この度は、労働条件通知書書(労働契約書)をご送付いただきありがとうございます。
一点、賃金の決定、計算、支払いの方法の項目について確認させてください。
月額給与、基本給〇〇円につきましては承知いたしました。
一点、「営業手当」について確認させてください。
営業手当には「固定残業代30時間分を含む」と記載されております。
つきましては下記の2つについて、教えていただけますでしょうか。
(1)30時間を超えた残業を行った場合の残業代の計算方法
30時間を超えた残業を行った場合は、その時間については
別途支給されるという認識で間違いないでしょうか。
(2)残業時間が30時間に満たなかったときの「営業手当」の計算方法
30時間に満たなかったときは、営業手当からその分が差し引かれるものでしょうか。
大変ぶしつけな質問で恐縮ですが、内定のご承諾をさせていただく前に
確認させていただきたくよろしくご検討の上回答いただけますと幸いです。
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署名
name@mail.com
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このように、内定後に、会社から出てきた労働条件通知書を基に、残業代がどのように計算されているのかを確認することは、決して悪いことではありません。
面接時は、まだ選考段階ですから、応募者は弱い立場であり、あまり待遇面を深堀りして聞くわけにいきません。
しかし内定後は、労働契約を対等な立場で交わすことになるわけです。納得いくまで不明点を質問する当然の権利があると考えてください。
この、労働条件通知書の提出を出し渋る会社や、質問にあいまいにしか答えられない会社は、少し注意が必要です。
実際にブラック企業などの会社は、労働条件の明示を書面で行わず、あいまいな条件を提示したまま社員を雇い入れ、残業代を未払いのまま働かせることがあるからです。
そうならないためにも、内定後には条件を書面で必ずもらい、不明点は確認するつもりで準備をしておいてください。
転職サイト(エージェント)に一任するのがベスト
残業時間や残業代の確認方法について述べてきました。
ただし、自分自身で確認をするよりは、転職サイト(エージェント)など仲介者に依頼したほうが確実にスムーズに行きます。
情報量も多いですし、交渉力もあります。
あなたを不利な立場に置かないように配慮しながら、現実はどうなのかを把握し助言してくれます。
年収の交渉なども一緒に任せられるので、聞きにくいことはすべて一任したほうが、相手企業にとってもあなたにとっても有益でしょう。
残業時間や残業代の支払いについて不安に思う人は、ぜひ専門家の力を借りて、失敗のない転職活動を進めるようにしてください。