前職をリストラにて離職してしまった人は、早めに転職活動をして新しく安定した職場を得なければなりません。
転職活動をする際に、リストラで職を失った人はどのような点に注意して動くべきでしょうか。
今回は、前職をリストラで離職している人の転職活動について解説します。
年齢にもよるが再就職は簡単ではない
もしあなたが不運にもリストラされてしまったら、ぜひ早めに転職活動をしてください。
会社都合退職であれば、失業手当が待機期間なしに支給されるため、手当をもらいながらの転職活動になるかとは思います。
しかし手当がもらえるからといって「全額受給してから本格的に活動しよう」などと悠長なことを考えていてはいけません。
なぜならば、年齢にもよりますが、再就職はそれほど簡単なことではないからです。
会社都合の退職になるため、リストラの対象になった人が再就職のあっせんをしてもらえることがあります。
しかし、そういった恩恵が得られるのは、一部の大企業に勤めていた人に限られます。
あるいは、どこへ行っても通用するくらいの高度なスキルがある人は、転職先もすぐに見つかるかもしれません。
しかし、一般的な人であれば、年齢が高くなるにしたがって再就職は難しくなります。
リストラされた人であっても20代であれば、通常の転職者と同じですから、特に再就職(転職)に不利というわけではありません。
しかし30代に入ると、正社員での再就職は難しくなります。
もっと年齢を重ねると、正社員だけではなく、派遣などであっても仕事が決まらないというケースも見られます。
35歳以上は同職種を狙う
また、リストラにて離職した年齢が、35歳を過ぎている場合は、転職先に「同職種」を選ぶ必要があります。
同職種とは、経理職や総務職、営業職など、仕事の内容そのものをいいます。
経理職の経験者が他の会社の経理職への転職を目指したり、技術職の人が同じく技術職へ移るといった方法であれば、前職のスキルが役立つため、大幅な年収ダウンを避けられる可能性があります。
また、できれば同業種を選びつつ「同じ業界」であれば、より有利といえます。
業界を変えた転職であると、扱う商品やサービスが違う世界へ移るということになります。
若い人であれば、新たな商品やサービスの知識を吸収することができるかもしれません。
しかし年齢が高くなると、そういった力は乏しいと採用側の会社に判断されてしまうため、不利になります。
職種にも関係があり、特に商品やサービスの知識を基に仕事をするような職種(製品開発の仕事や研究職など)の人は、業界を変えた転職は非常に敷居が高くなります。
そのため、年齢が高い人は「同職種」で、かつ「同じ業界」への転職が、もっとも失敗の少ない方法だと思われます。
年収減は仕方がない
リストラといえども、前の会社を去り新たな会社に入社するわけです。
その場合、前職でもらっていた年収で再就職できることは稀だと考えた方が良いでしょう。
求人広告などで「前職までの経験、年齢を考慮します」と書かれている会社であっても、収入面では3割程度下がることがあります。
たとえその会社での地位が高かったり、経験年数が長かったりしても、同程度あるいは年収を上げた転職は難しいと思われます。
例えば、営業職で年収500万円程度もらっていた人であったら、転職で一から新たな会社に入社する場合、年収400万円台くらいになることは多くみられます。
この程度の年収減であればまだ良い方です。
年齢が高く、前職でもらっていた収入が多い人であれば、200万円減といったケースも多く聞きます。
また、異業種への転職や未経験であれば、ほとんど新卒と同じ月給を覚悟する必要があるでしょう。
しかしどうしてもプライドを捨てられず、「前職と近い待遇」にこだわったために、本当に就職先が見つからず数年経ってしまったという人も結構います。
そのため、年収減であっても、自分のわがままを押し通さず、現実を直視して、何にでも挑戦する心構えで活動してください。
例えば、全国転勤のある事業所でも頑張って勤務するとか、休日が以前より不規則といった条件を我慢する、などです。
こだわり条件を外していくほど、再就職のチャンスは高くなります。
リストラは退職理由として不利か?
「リストラされた」と聞くと、一部の社会人経験が乏しい人から「能力の低い人が、肩たたきをされて会社から追い出された」と、イメージされることがあります。
しかし、一般企業の人事採用担当者であれば、リストラというのは決して「能力の低い人がクビになる」という意味ではないことを知っています。
その会社の経営が不振となり、その立て直しの一環として人員整理をしただけであることを、きちんと理解しています。
ただし、伝え方には工夫が要ります。
倒産によって離職したわけではなく、会社は存続しているのに、退職させられたという事実には変わりがないため、上手く伝えないと、「リストラという名のクビでは?」「この人にも非があって辞めさせられたのかもしれない」と勘繰られることになります。
リストラ退職理由の伝え方
リストラで前職を辞めた人は、面接を受けるときに少し注意が必要です。
リストラをされたという事実を聞くと、面接官のなかには「仕方がない」と感じる人もいれば「リストラされるにはわけがあるのでは?」と勘繰る人もいるからです。
そのため、以下のようなことに注意をしましょう。
履歴書の職歴欄への記入方法
履歴書には、前職の離職理由を書く必要があります。自己都合で退職した人は、通常「一身上の都合により退職」と記載します。
ここには、リストラの一環として退職した人であれば、「会社都合により退職」と書けば十分です。
あるいは、「早期優遇退職制度により退社」などと記載することもできます。
やはり、若干悪い印象を与える可能性があるため、履歴書に「リストラにより退社」などと、「リストラ」という文言を入れる必要はありません。
面接ではどういった事情があったのかを聞かれることになりますが、履歴書の段階では簡潔に事実だけを記載しておけば問題ありません。
あれこれと言い訳がましいことを書いてしまう人がいますが、簡潔にまとめる方が好感を与えます。
職務経歴書も同じく、実際に行ってきた職務内容を記載すれば良く、リストラに至った経営事情などは書く必要はありません。
態度(第一印象)に気をつける
面接などでは、相手の担当者に与える印象に気を付ける必要があります。
へりくだる必要はありませんが、リストラされた人の中には、前職での経験が長いためか、ビジネスマナーに欠ける人も見られます。
あるいは、離職理由について「前職からはリストラされたのだから仕方がない」といった態度であったり、前の会社や世情などに批判的であったりすれば、「この人は、数多くの社員の中から、真っ先にリストラされたのだろうな」と思われてしまい、敬遠されます。
- 前の会社の不満を漏らさない
- 「不景気」「業界の体質」などへの批判をしない
これらに気をつけ、あくまで謙虚な態度で面接を受けるようにしましょう。
リストラ対象者の選定基準は話さない
また、何人の社員がいるところ、どの程度の人数がリストラされたのかといったことを、面接で聞かれることがありますから、準備しておかなければなりません。
そのときに、「社員が300人いる中で、リストラされたのは自分を含めて3人だけ」などいう、能力不足を疑われても仕方がないような事情がある場合は、赤裸々に答えないようにしましょう。
リストラの対象者をどのように選定したのかということを、細かく聞いてくる面接担当者がいます。
しかし、前職の経営者がどのような判断で誰をリストラしたのかといったことまで、労働者であったあなたが知らないのは当然です。
そのため、どのような基準で対象者が選ばれたのかといったことは、たとえ事実を知っていたとしても、「選定基準は知らない」で押し通してしまってかまいません。
あくまで、リストラされたのは会社の経営不振が原因であることと貫いてください。
具体的な人数を正確に語る義務はありません。
経営不振の実情を話す必要はない
すでにリストラにて職を失っているのですから、前職がどのような過程で経営不振に陥りリストラせざるを得なくなったのかということは、簡単に話す程度で構いません。
面接の場面で、前職の会社の経営事情やリストラに至るまでの不遇な出来事を細かく話す応募者がいます。
しかし、求人側の会社が知りたいことは、あなたという人材が自社でいかに貢献できるか否かであり、前職の事情ではありません。
そのため、前職でのことは、3分以内にまとめて簡単に話せるようにしておいてください。
それ以降は、聞かれない限り話す必要はありません。
面接という貴重な時間を、過去の不遇を語ってつぶしてしまってはいけません。
ただし、面接官によっては、人員整理に至ったいきさつを細かく聞いてくる人がいます。しかし、たいていは個人的興味か、同業であれば業界的な好奇心で聞いているだけです。
そのため、聞かれても、聞かれたことに答える程度にとどめておきましょう。
自己防衛しない
リストラや倒産で離職を余儀なくされた人は、卑屈にならず、堂々とした態度で面接にのぞんでください。
ここで、前職の経営について悪く言いすぎたり自己防衛しすぎたりすると、「本当は何かやましいところがあって、辞めさせられたのか?」と勘繰られることもあるからです。
感情を交えず、事実を堂々と述べれば大丈夫です。例えば以下のような形です。
およそ10年間携わってきた〇〇事業部が、ベトナムへ移転することになりました。転勤が可能な人だけは残ることとなりましたが、私には事情があり、転勤することはできませんでした。
国内の〇〇事業部へ異動となりましたが、その事業部は採算性が悪く、縮小の方向で動いておりました。
そのため、私とその部下数名は国内で与えられる業務がほとんどないということで、やむなく退職という運びになりました。(仕方がない事情)
結果的に、ベトナムに転勤できた社員のみ雇用継続されましたが、私を含め国内残留を選んだ社員は、全員解雇となりました。(リストラされたのは自分だけではない)
仕事内容には全く不満もなく、やりがいを感じておりました。部下数名を任され、〇〇チームの責任者として評価を頂いておりました。
これからという時に経営方針によって、やむなく退職しなければならなくなったことは、非常に残念だと感じております。(自分には落ち度がない)
しかし、終わったことをいつまでも悔やんでいては仕方がありません。
残念な出来事ではありましたが、乗り越えることによって、以前より柔軟に物事を考えられるようになりました。また、新たな場所で挑戦できるというのも、面白そうだと思っています。
経験は活かしながら、過去を引きずらずに新たな気持ちでのぞむつもりです。(気持ちを切り替えている)
このように、感情的にならないように気を付けて、事実を淡々と伝えましょう。仕方がない事情であれば、全く不利にはなりません。
志望動機を「リストラ」にしない
リストラで前職を退職した人が陥りやすいミスがあります。
それは、転職の際に、応募する企業への志望動機を「リストラによって離職させられたため、職を探さないといけないから、職を探さないといけないから」といった形になってしまうことです。
リストラによって辞めざるを得なかったにせよ、新たな会社には新鮮な「志望動機」を語ることができるように準備しておいてください。
リストラで退職した人はその理由を納得してもらいやすいものです。しかし、それは前職を辞めた理由であって、志望動機にはなりえません。
不運な出来事で前の会社は去ったが、そのときの働き方やスキルをどのように活かしたくて、その会社に応募したのかという一連の流れに違和感を持たれないようにまとめておきましょう。
例えば以下のようになります。
前職では10年携わってきた〇〇事業部が、海外移転となり、残留を断念しましたが、事業部内で行ってきた購買職としてのキャリアを活かせたらと思い、御社を志望しました。
前職では主に海外の仕入先との交渉、価格と市場調査、分析、法務専門家との折衷や契約書等の作成管理を行っておりました。
前職は御社より企業規模が小さく、購買職といっても取引額は大きくはありませんでした。しかしその分、関わることができる業務は多岐にわたり、10年で総合的な経験をしてきました。
購買職としてのキャリアを継続したいということと、前職と業界も近く、私のノウハウを活かすことができるのではないかと考えています。
志望動機を伝える段階では、すでに前職の離職理由は関係ありません。
通常の転職スキルアップ面接と同じであると心得て、いかに自分のキャリアを活用してもらえるかといった「会社側のメリット」を伝えるようにしてください。
新しいチャンスと捉えること
リストラで前職を退職している人は、どうしても「リストラされた」というマイナスな過去を恥じる雰囲気になっている人がいます。
リストラで退職せざるを得なかったことを卑下し続けていると、不思議なことにそれが履歴書や面接の場面で現れてしまいます。
結果的に、活力のある人材と思ってもらえずに不採用になってしまうのです。
このようなスパイラルに陥っている人は結構います。
それらの人は、「リストラされたという履歴のせいで転職活動がうまくいかない」と思っていますが、それは勘違いかもしれません。
そのため、気持ちを切り替えて前向きに活動できるようにしましょう。
もしかすると、今回の不遇な出来事が、あなたにとってより良い働きかたを見つけるチャンスになるかもしれません。
年収が下がるとか、企業の規模が小さくなってしまうといった表面的なダメージはあるかもしれません。
それでも、どうか「自分にとって最適な働き方を見つけよう、これはチャンスだ」と捉えるように頑張ってください。
そのように前向きに考えることで、知らず知らずのうちに、表情や態度に表れてきます。
そしてそれが履歴書の隅々に表れ、面接での表情、発言につながっていくのです。