転職をしようと決意しているのに、求人情報に書かれている「募集要項」などに合わなくて、応募そのものを断念している人がいます。
採用側の会社は、資格や年齢、経験など、「募集している要件に合わない人」をどのように感じているのでしょうか?応募していいものでしょうか。
今回は、条件を満たないけれど、応募したいときの考え方と採用されやすい考え方を解説します。
応募は可能
募集要件に満たなくて、応募を迷っている人であっても、「条件外だからダメだ」と思い込まなくて大丈夫です。
条件外の人から応募があっても、「失礼だ!」と怒ったり、非常識だと感じたりする会社はほとんどありません。
しかし、やはり要件に合わない人が、採用にまでこぎつけられる確率は減ります。
中途採用で人を募集している会社は、採用したいと思っている人材像がある程度決まっているからです。
そのため、大前提として、要件に合わない場合であってもあきらめる必要はないが、採用される確率は低いということを想定してチャレンジする必要があります。
要するに「ダメもと」というものですが、採用される人もいます。
そのためには、マズい対応をしないように注意して、戦略的に応募することです。
電話でくどくど聞かない
たまに、「条件外であるが、応募して良いか」「採用される可能性はあるか」といったことを、電話で色々聞いてくる人がいます。
転職エージェントなどを利用せずに、一人で転職活動している人に多い傾向です。
自力で確認作業をしなければならないので、仕方がないことですが、条件外であるが応募していいかどうかを聞くのは控えめにした方がいいかもしれません。
恐らく、電話でそのようなことを聞いても、「条件外の方でも受け付けさせていただいています。書類選考時に検討しますので、まず応募書類を送ってください」と言われるだけです。
また、「採用される可能性はありますか?」「〇〇という実務経験はありませんが、〇〇という資格は持っています。それで同程度と判断することはできますか?」といった質問をする人もいますが、これらは、相手を困らせます。
このような質問には、電話を受けた担当者に答えられるわけがありませんし、「採用される可能性が乏しいなら、応募しないつもりの人かな」と誤解されることがあります。
どうしても会社側に確認したいのであれば、「条件に満たないのですが、応募しても良いでしょうか」という確認にとどめてください。
もちろん、相手は「いいですよ」と答えてくれる場合が多いでしょう。
だからといって、そこで欲を出したり心配になったりして「受かる可能性は?」「具体的な選考基準はどのようになっていますか?」などと話を深めないように注意しましょう。
応募書類は完璧に仕上げる
また、条件に合わない求人に応募する人は、応募書類は気合を入れて作成してください。
条件外の人である場合は、連絡をすると「履歴書や職務経歴書をお送りください」と返事があるはずです。あるいは、求人情報にあらかじめ応募者全員に書類を出させ、そこで選考してで面接に呼ぶか否かを判断されることも多いです。
そのため、応募書類に不備があると、確実に書類選考に通りません。
履歴書や職務経歴書は、完璧といえるくらいに整えて提出してください。
そのためには、できるだけ一人だけで作成せず、転職サイト(エージェント)のコンサルタントに添削してもらってください。
ただでさえ条件外であり不利な立場からのチャレンジです。一歩抜き出る書類を作成できて、初めてスタートラインに立てると考えてください。
添え状にひとこと入れておく
添え状とは、「このような目的で、応募します。どうぞ受け取ってください」という挨拶文のようなものです。
ビジネスの世界では書類に必ず添付するものだとされているので、応募書類には必ずつけておかなければならないものです。
条件に満たない人が応募する場合は、添え状を入れて「募集要件外ですが、どうか選考の対象にしてください」という、お願い文章を入れておいた方が良いでしょう。例えば以下のようなものです。
応募要件に満たない人の添え状 例文
平成〇年〇月〇日
〇〇株式会社 人事部採用チーム御中
〇〇市〇〇区〇〇5-2-10
氏名〇〇 〇〇
貴社〇〇職募求人募集への応募の件
拝啓 時下、貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
〇月〇日公開の求人サイト△△にて、貴社の〇〇職募集の求人を拝見いたしました。早速ご応募させていただきたく、下記の書類を同封にてご送付申し上げます。
しかしながら、私は御社の募集要項にあります「〇〇職にて3年程度の実務経験を持つ者」に該当いたしません。
〇〇職に必要な知識、および〇〇の資格取得の勉強をして備えている最中に、御社の求人を拝見しました。条件外であるため、失礼かとは存じましたが、〇〇職へどうしても就きたいと思い、ぜひ機会を頂ければと思い応募させていただくことといたしました。
この段階にて応募する非礼をお許しいただけるのであれば、ぜひご検討いただきたく、よろしくお願い申し上げます。
敬具
記
<同封書類>
- 履歴書
- 職務経歴書
以上
このように、挨拶、応募を考えた経緯、条件外であることを述べ、採用検討のお願いといった順で書いていきましょう。
余裕があれば、条件外であることに加えて、自分の経歴や多少PRできることがあれば追記してもいいでしょう。
いずれにせよ、条件外であることを一応恐縮しながら応募していることが伝わるように示してください。
この添え状がないまま、履歴書や職務経歴書を送り付けると、「募集要項を満たしていないということに、気づいていないのかな?」と思われてしまい、書類の段階で落とされる可能性が高まります。
条件別の準備
応募書類はきちんと仕上げて、丁寧に「条件外であること」を恐縮しながら応募する必要があります。
しかし、いざ面接に呼ばれたのであれば、「条件に満たないのですが、大丈夫でしょうか?」といったへりくだった態度はやめましょう。
あなたは、たとえ募集している企業の条件と違っていたとしても、決して「劣っている人材」ではありません。
単に、条件と違う部分があるというだけです。その基本的なスタンスを忘れてはなりません。
「条件外ではあるが、私は貢献できる要素を持っているので、その部分について検討してもらえないでしょうか」という形でアプローチするようにしましょう。
それでは、条件別に一つずつ見ていきましょう。
年齢が条件外
そもそも、会社が採用する人の年齢を気にするのは
- その年齢に適した経験・キャリアを持っていてほしい
- 職場の雰囲気に合う年齢の人が良い
- 顧客との関係で違和感がない年齢であってほしい
- 扱う商品とのバランスが合う年齢が良い
- その年齢に相応の給料しか払えない
こういった事情があるために、「だいたいこのくらいの年齢層の人であれば条件を満たすはずだから、この辺りで募集しよう」としているのです。
求人では年齢制限できない
しかし今は、雇用対策法という法律により、会社が求人を出すときに、「30歳以下」という形で年齢制限をすることができません。
そのため多くの会社は「20代の人が活躍中」というポップと若い男女の写真などで、暗に募集対象年齢を伝えようとしています。
求められている人材像を想像する
求人で年齢制限できないことから、「〇歳まで」という表記は見かけなくなりました。
しかし、むしろそのような事情があるからこそ、求人情報をしっかり読み込むと、年齢というよりも、「求める人材像」が浮き上がってくるはずです。例えば
- 溌溂としていて、仲間と共に元気に頑張れる人が求められている
- 給料は安いが、新人として謙虚に働ける素直さを求めている
- 扱う商品に違和感がない年齢層を求めている
ということが感じられるのではないでしょうか。
それは求人情報の端々に表れています。使われている写真や、仕事内容の説明、商品についての紹介などです。
それらから懸命に読み取るのです。もしあなたが会社の求める年齢層とズレていても、会社側が実際にどのような人材像を求めているのか想像して、応募する際の演出ををすれば、十分採用の可能性はあります。
例えば以下のような自己PRが考えられます。
私は、今回御社にご応募いたしましたのは、私の持ち前の行動力を活かしたいと思ったからです。
御社の〇〇職は、20代の方が活躍しているこということですので、32歳の私は少しオーバーしています。
しかし、事務所にじっと座っているよりも、様々な場所へ出かけていき、多くの方に会って商品をお勧めするという、活発な仕事内容に興味を抱きました。
30代に入ったといえ、私は体力や健康には自信があります。また、柔軟に物事を考えますし、若い人たちと上手く関係を築く自信もあります。
今までのスキルを活かすことも考えていますが、まずは一度若返ったつもりで、一から新人として前向きに取り組んでいくつもりです。
このように、相手が求める人材像に自分を合わせるというPR法です。
まずは、企業が求めている年齢層ではない人であっても、採用される人はいくらでもいるということを理解しましょう。
そのような人は、相手の会社がどのような人材像を求めているか想像して、自己演出をするから採用されるのです。
実務経験が足りない場合
求人情報において、「〇〇業務を3年以上経験している人」と書かれている場合を考えてみましょう。
このとき、「〇〇業務」に全く携わっていないのであれば、完全なる未経験者として扱われてしまいます。
応募は不可能ではありませんが、採用されるのは難しいかもしれません。
中途採用者を外部から採用しようとしている会社が見ているポイントは、人材の実務経験だからです。
しかし、「〇〇業務」には携わっていたが、「3年以上」という実務経験年数に満たない場合であれば、採用の可能性はあると思われます。
この場合であれば、上に紹介した「添え状」にてその旨を伝えながら、応募してみましょう。
経験が満たないと判断されれば、書類選考の段階で落とされるはずです。
しかし、書類は通過して面接に呼ばれたのであれば、致命的に経験不足だとは思われておらず、十分チャンスがあるということです。
会社側も、実務経験の年数は、あくまで目安として提示しているだけの場合が多いです。
「だいたい、3年くらい経験していれば、すぐ任せられるかな」程度です。
そのため、年数が満たなくても、経験不足を補うくらいのやる気が感じられる場合や、実務能力を高める具体的なプランや別の経験があれば、しっかりアピールしてください。
そうすれば、十分採用される可能性はあるでしょう。
面接に呼ばれたら、例えば以下のようにアピールしてみましょう。
「新卒採用業務一連について3年以上の経験」という募集に対し、私は1年しか経験をしておりません。
前職では総務・経理職として新卒採用から研修企画、労務管理などすべてを担当しておりました。
新卒採用業務に携わり1年経ちましたが、この仕事のやりがいを強く感じ、もう少し規模の大きい会社において人材採用、教育を専門的に担当したいと考え、御社に応募した次第です。
確かに実務経験は1年と短いですが、この経験不足は日々補っていく所存です。
大きくハンディがあることを認識して、業務内だけではなくプライベートの時間を使って、一日も早く実務能力を身につけるつもりでおります。
さらに、規模は小さくとも採用後の研修制度構築や、労務管理業務一般については知識と経験を持つと自負しております。
採用から研修、労務管理一般について幅広くお任せいただけるようになり、御社に貢献をしていきたいと考えています。
実務年数が乏しいことは素直に受け入れ、かつ補うための努力プランや他に持つスキルなどもアピールしましょう。
要件とされる資格がない場合
その資格がないと業務をさせることができないといった場合は、必須資格として求人情報に書かれているでしょう。
例えばフォークリフト作業員の募集でフォークリフトの運転資格がない人は、やはり採用されないでしょう。
資格の有無が採用に大きく関わる会社は、まずは書類選考などで、応募者の持つ資格の状況を確認するはずです。
ただ、求められる資格がはっきり提示されている場合であっても、そのほかの部分で見込みがあれば、書類審査を通過して面接に呼ばれることは十分あります。
提示された資格がないと絶対不採用であるとは限りません。
そのため、面接によばれときには、資格は今のところもっていないが、必ず取得するつもりであることと、取得する具体的なプランを話せるようにしておきましょう。
例えば以下のようになります。
今回、御社が求める〇〇1級の資格は、未だ習得しておりません。
しかし、3か月前から資格専門スクールに通い始め、前回の模擬試験では合格判定Bでした。
判定Bであれば、合格の可能性が80%であるため、このまま継続すれば次回11月の試験には合格できるのではないかと考えております。
そのために、現在1日3時間の勉強を続けております。
また、資格取得をゴールと考えずに、日頃得ている知識を御社の業務にすぐに活かせるようにします。
実務家として地に足をつけ、引き続き現場でも勉強を続けていきたいと思います。
募集要件に資格が提示されていたとしても、その資格は入社後に取って、貢献することができるはずです。
会社側も、求めているのは「資格そのもの」ではなく、その知識を使って仕事をこなしてもらうことです。
それらが伝われば、あなたの意欲や、入社後の可能性を買ってくれ、採用されることも十分期待できます。
面接官は条件判別機ではなく、人間
会社側が求めている条件というのは、だいたいの基準であって、絶対必要なものではないケースが多いものです。
さらに、面接官は「この人材は、会社が求人票に提示した条件に合致するか否か」を判別する機械ではありません。血の通った人間であり、感情があります。
そのため、あなたがたとえ条件外であっても、一緒に働きたいと思わせる人であり、足りない部分は補う努力ができそうな人であれば、採用を検討してくれるものです。
そのような人材であることを演出して、頑張って応募してみてください。