ほとんどのケースで、転職時には履歴書を書いたり面接を受けたりします。その際にあなたの強みをアピールしなければならない機会が必ずあります。
しかし「自分には強みがないから、どうアピールすればいいのかわからない」という人がいます。
また、「自分の強みだと思っていることが、求人側の会社からは強みだと捉えられていないようで、毎回不採用になってしまう」という人もいます。
そこで今回は、そのような人が「強み」の切り口を変えることで、転職希望先が望む「強み」としてアピールできる方法について考えてみましょう。
転職者は専門性や強みがないと採用は難しい
会社が中途採用で人材を採用する理由は、その会社に必要な専門性を持った人を雇用し、自社の弱みを補強しようとするためです。
前職での経験があり具体的な専門性を持つ人は、こういった会社側の求めに応じて自分の専門性を示して、即戦力として活躍できることをアピールします。
これが転職成功の王道です。
専門性を証明する方法は、「〇〇業務を〇年行いました。実績は〇〇〇で……」といった点を職務経歴書などにまとめます。
こうした応募書類にあなたの前職での経験・知識・実績を示さなければなりません。
しかし人気の会社で競争相手が多い場合や、未経験から異業種へのチャレンジをする場合、前職を短期間で退職してしまっていて、アピール材料としての「強み」がない場合があります。
そのような転職者は、残念ながら不採用となるケースが多いです。
人気企業に転職できる人は少なく、まったくの未経験から異業種へ転職できる人も少ないのが現実です。
求人票には「未経験でも応募してください」「社会人経験があればOKです」と、謳ってはいます。
しかし、求人票は「応募してくれる人をたくさん集める」という目的のために書かれています。
実際の採用基準は、前に述べたように会社が求める専門性に合った強みをしっかり持ち、即戦力となれる人材であることです。
専門性も強みもない場合
それでは、専門性がなく、即戦力となれる「強み」がない人は、転職に成功することはできないのでしょうか。
結論からいうと、自分には強みがないと思っているままでは採用されることは難しいでしょう。
あなたが自分には強みがないと思っている状態で履歴書を書き、面接を受けているというのに、どうしたら相手の会社が「あなたには強みがある」と思ってくれるでしょうか。
会社側は強みがない人を決して採用しません。
強みがない人でも採用しようとする会社は、極端に労働力が不足していて、すぐにでも人を雇い酷使したいと思っているような会社です。
そのため、まともな会社に転職したい人であれば、「私の強みはこれです。ぜひこの強みを使って御社に貢献したいです。具体的には○○と○○と○○ができます」といったアピールができないと、選考の土俵にも上がれません。
使い道がイメージできない「強み」には意味がない
自分には強みがないと思っている人は、転職の際に「自分の強みを見つけよう」「まず自己分析しよう」と、自分の強みをひねり出し、必死にアピール方法を考えると思います。
この作業自体は必要なことですし、ぜひ行ってください。強みがない人はいません。必ずあなたにも強みがあります。
結果、専門性や知識・経験をもたない人は、「問題解決力がある」「人づきあいが得意」など、性格的な特性でアピールすることになると思います。
それで良いのです。性格的な特性も、求人側の会社が重点的に観察しているポイントです。
しかし転職希望者がよくやってしまうミスが、自分の良い特性を何の法則性もないまま無作為にピックアップしてしまうことです。例えば以下のような特性の列挙です。
私は前職では○○をやっていました。非常に困難な課題に取り組みました。
そこで問題解決力を養いました。さらに私は人づきあいが得意で人間関係は良好でした。
また、創造性もあります。私が企画した新イメージ広告は反応率も高く……
このようなに特性を列挙されても、この人の使い道がイメージできないのです。
ピックアップする特性がバラバラで関連性がないと、その特性を持つ人をどうやって使えばいいのか、採用側の面接官がイメージできません。
あなたの履歴書や面接での印象から、採用した後どのような働き方をしてもらえばいいのかが明確にイメージできなければ、採用の決断ができないのです。
結果的に、「この人は当社でどのように貢献してくれるのかイメージできない。専門性もなくこれといった強みを感じない。だから採用するには不安だ」と思われて不採用となってしまいます。
強みがない人は「私には使い道があります」と主張
では、転職をしたいけれど、強みがない状態の人にもう一つの切り口で強みを付加する方法を考えてみましょう。
これは、会社が求める「使い道のある人材」にあなたを当てはめて、弱い専門性しかなかったり未経験で何も知識が無かったりする人に強みを補強する方法です。
強みがなくても「使い道のある人材」なら採用を検討する
会社は、中途採用の人材には専門性や知識・経験などの強みを希望しています。しかし、それだけではなく人柄も重視しています。
ここでいう人柄というのは「いい人」「優しい人」などのように、人としてどうかという意味ではありません。
そうではなく「社員として使いやすい人であるか」という意味での人柄です。
会社側が求める「使い道がある人材」には主に3つのタイプがあります。
精力的に働くプレーヤータイプ、周辺業務まで引き受けるサポータータイプ、人を育てるマネージャータイプです。
精力的に働くプレーヤータイプ
このタイプは、体力気力に満ち溢れていて、現場でパワフルに働く人です。
行動力があり、未経験のことでも臆せず果敢にチャレンジします。失敗を恐れず、恥をかいても平気といったタフさが売りです。
負けず嫌いで、ノルマがあると一層頑張ります。
ミスは多いかもしれませんが、成長のスピードが早いので、会社側から見ると「使い道がある人材」とうつります。
周辺業務まで引き受けるサポータータイプ
このタイプに当てはまるのは、穏やかで感じのよい人です。
会社の主たる業務もさることながら、チーム内の雑用など周辺業務を快く引き受けます。
面倒見が良く優しい先輩社員として新人に仕事を教えるのも得意です。職場がギスギスしないように、声をかけあえる雰囲気をつくったり、冗談を言って場を明るくしたりといった「潤滑油」としての存在です。
第一線の戦力にはならなくても、集団をサポートする役割を買って出る人は会社側から見ると「使い道がある人材」です。
人を育てるマネージャータイプ
このタイプは、管理職としての素養を持ち、自分が現場で動くだけでなくチーム全体をまとめ、目標達成まで管理できる人です。
小さいことにこだわらず度量が大きいため、人に頼られます。面倒見は良いものの、甘えさせることはなく、厳しく正しく人を導くことができるマネージャー的人材です。
こういったマネジメント能力を持つ人は、集団を統制し将来的には管理職として社員をまとめることができるため、「使い道がある人材」といえます。
これら3つのタイプは、業種・職種に関係なく、どの会社にもどの部署にも求められています。しかも、どの会社にも不足していることがほとんどです。
そのため、専門性がなく強みもない応募者であっても、3つのうちどれかを持っていれば、採用を検討してもらえる可能性があります。
3つの切り口ごとのアピール方法
あなたは、上で述べた「使い道のある人材」のうちどれかの要素をもっている人材であることを伝えるのです。
それだけでも相手には、あなたの「強み」として十分にアピールすることができます。
あなたがこれから応募したい会社が求める専門性をもっていない場合や、まったくの未経験である場合などは、会社側が求める「使い道のある人材」であることをイメージしてもらえるように、履歴書・面接でアピールします。
「3つのどれにもあてはまらない」と嘆いていてはいけません。
専門性も知識も経験もなく、何の使い道もない人材は、採用されることはないのです。
あなたの前職での経験のうち、この3つにあてはめることができる要素が必ずあります。頑張って思い出してみましょう。
精力的に働くプレーヤータイプ
もしあなたが下記のような強みの要素を持っているのなら、「精力的に働くプレーヤータイプ」であることを履歴書・面接でPRしましょう。
<プレーヤータイプの強み>
健康で、体力気力ともに自信がある/人づきあいが得意/ストレスに強い/目標やノルマを課されるとやる気になる/負けず嫌いである/クレームを言われても平気/上司に可愛がられる/すぐ行動する/失敗しても立ち直る/深く悩まない
営業販売、接客、教育業などに携わっていた人であれば、前職で上記のような経験をしてきたはずです。
また、28歳くらいまでの若い人であれば、「若さ」「エネルギー」をそのまま強みに変えてしまっても良いのです。
このタイプのアピール文例を考えてみましょう。例えば以下のようにになります。
私は前職では教材販売業務に携わっておりました。1日8件、多いときは15件のお宅に訪問し、教材のご案内とフォローを行っておりました。 (行動力)
クレームも多く難しいご家庭への訪問は心労ではありました。
同期が次々と退職するなか私は体力気力で乗り切り3年間勤続してきました。私はプレッシャーやストレスには強く、タフな人間です。(ストレス耐性)
身体を使い現場で精力的に働くことにやりがいを感じます。誰もが嫌がる仕事でも、未経験のことでも果敢にチャレンジします。(チャレンジ精神)
今回応募しております御社の○○という業務は、経験も専門性もない分野です。
しかし一旦やると決めたら何としてでも目標達成するエネルギーがあります。
知らないことや新しいことであっても、恐れずにどんどん経験して、向上していきたいと考えます。 (チャレンジ精神)
たまに頑張りすぎて周りが見えず、ペースダウンしろと人から言われることがあります。しかし、粗削りではあっても、素早い行動力で迅速に仕事を覚えます。ぜひ御社の○○にチャレンジさせていただきたいと考えます。(現場で精力的に働くプレーヤーである)
このように、あなたが前職で頑張ったこと、行動したこと、若さを感じられるエピソードを盛り込みましょう。
採用担当者は、専門性や知識がなくても若くエネルギーがある人は、現場に放り込むとすぐ戦力になることを経験から知っています。
そのため、もしあなたがこのタイプに近いのであれば「自分は現場で精力的に働くプレーヤータイプであるため、しばらくしたら戦力へ成長する使い道のある人材だ」と力説しましょう。
周辺業務まで引き受けるサポータータイプ
あなたがもし下記のような要素を持っているなら、「周辺業務まで引き受けるサポータータイプ」であることを履歴書・面接でPRしましょう。
<強みの要素>
人のために気遣いができる/優しい/頼られるとうれしい/細かい仕事が好き/よく人から悩み相談をされる/チームワークが得意/協調性がある/気が利く/飲み会など懇親会が好き/人の活躍がうれしい
前職の業種・職種に関係なく、チームで活動してきた人や、先輩後輩のはざまで立ち回るような経験をしてきた人に向いています。
女性に求められる特性ですが、男性にもこのような特性を持つ人がいます。
むしろ、ビジネスの現場では男性の「周辺業務まで引き受けるサポータータイプ」は少ないため、上手くPRできれば人柄を買われて採用を検討してもらえます。
このタイプのアピール文例を考えてみましょう。例えば以下のようにになります。
前職は金融商品の販売営業所にて常時15人~20人の契約販売スタッフと共に活動しておりました。
販売スタッフは女性が多く、上下関係も厳しいためさまざまな人間関係の問題がありました。中にはシングルマザーや家庭の事情が複雑な人もいて、労務調整は大変でした。(周辺業務)
できる限り彼女たちの相談にのったり、補助をしたりしました。私ができることは引き受け、シフトを上手く組んで業務に支障がないように家庭との両立ができるよう整えてきました。そのため私のチームは欠勤率や離職率も低く、売り上げも安定していました。(人のための気遣い)
スタッフの子どもたちと、プライベートでも遊びに行くなど、公私ともに頼りにされていたため、私も前職ではすばらしい経験ができたと感じております。(優しい、頼りがいがある)
私が今回御社の○○に応募しましたのも、チームで活動できる仕事だからです。
私には○○業務の経験知識はありません。しかしチームワークであるという共通点があります。前職での人間関係構築力は必ず御社でも発揮できるのではないかと感じております。
持ち前の面倒見の良さや、人を支えたいというホスピタリティ、自分だけの利益より先輩や後輩の活躍を期待する広い視野で、御社のチームの一員として貢献していきたいと考えています。(周辺業務まで引き受けるサポーターである)
このように、あなたが前職で周りの人を支え、職場の雰囲気を良くするために努力したエピソードを盛り込みましょう。
職場の雰囲気を良くする人は、直接的な戦力ではなくても部門全体のモチベーションを上げ、結果的に成果が出やすい環境づくりに貢献できるので、会社側からは重宝されます。
そのため、もしあなたがこのタイプに近いのであれば「自分は周辺業務まで引き受けるサポーターであるため、成果が出やすい環境を作ることができる使い道のある人材だ」と力説しましょう。
人を育てるマネージャータイプ
あなたがもし下記のような要素を持っているなら、「人を育てるマネージャータイプ」であることを履歴書・面接でPRしましょう。
<強みの要素>
リーダーの経験がある/意見・立場の違う人たちの調整役ができる/人を励ますのがうまい/自分より人の能力を引き出したい/人から兄貴分、姉御肌と言われる/経営哲学などの本をよく読む/決断が早い/分析・管理が得意/今だけでなく先のことを考えている/気前がいい
前職で、後輩や部下の指導を担当したことがある人は、迷わずこのタイプであることを示しましょう。
管理職の経験は貴重な強みになります。前職での具体的な肩書がなくても構いません。
また、年齢が高い人(目安として28歳以上)の人も、このタイプの適性を持つことを主張しましょう。年齢が高い人はマネージャーの特性を持った人でないと採用されるのが難しいからです。
このタイプのアピール文例を考えてみましょう。例えば以下のようになります。
私は小規模店舗の店長として、20名のスタッフの採用・育成・管理業務を行ってきました。
業務内容はたくさんありましたが、一番力を入れたのは、スタッフの育成です。(管理職経験)
彼らの力を最大に引き出すということをテーマに努力をしてきました。接客業でしたので、スタッフのマナー教育から固定客をつけるための技術、彼らの個人的な相談など引き受けてきました。(面倒見の良さ)
スタッフに固定客がついたら売り上げの3%をバックするインセンティブ制を導入したり、マナー接遇研修の講師役を交代で担当させたりして、彼らの「固定客をつかむ能力」を育てることに注力しました。それが奏功し、私の担当店舗の固定客は多店舗の1.8倍となりました。(人の能力を引き出した)
チームで働くときにはチーム全体の利益を考える必要があると思います。さらに問題点に対しては、改善のために誰とどう取り組む必要があるのかを常に考えて行ってきました。(問題点の分析・改善)
御社の○○業務について知識は乏しいのですが、私の経験を御社のチームにて活かせればと考え応募しました。
まずは自分自身が仕事を覚え、適応することが優先であるとは思います。しかし広い視野を持ち、数年先のビジョンを持って取り組み、将来的には人を育て御社に貢献できる存在となりたいと思います。(人を育てるマネージャータイプである)
ほとんどの会社はチームで活動しています。
どの会社も人を育成しなければならないという課題を持っていますが、誰もが自分のことで精いっぱいで、しかるべき役職を強制的に与えないとなかなか人の育成にまで意識が回らないのです。
しかし管理者としての経験があり、人を育てる必要性を理解している人は、将来的にはマネージャーとして活躍できそうな人材にうつります。
もしあなたがこのタイプに近いのであれば「自分は人を育てる経験をしていて将来は管理職になれる要素を持つ、使い道のある人材だ」と力説しましょう。
自分の「使い道」を提案する
このように、3つの「使い道のある人材」のうちどれかに自分をあてはめて、採用してもらいたい会社に売り込みをするという意識を持ちましょう。
気を付けなければならないのは、3つの「使い道のある人材」のうちあなたはどのタイプなのかを、採用側の面接官にありありとイメージしてもらえるように伝えることです。
その際、どれもこれもと欲張ってはいけません。人物イメージがぶれるからです。
「自分はこのタイプです。この分野で使い道があります」と絞ってアピールしてください。
「自分には強みがない」「自分が会社でどう貢献できるかわからない」という気持ちで応募しても、採用されるはずはありません。
そのような気持ちのままチャレンジしても、履歴書や職務経歴書など応募書類の端々に自信のなさが表れます。
当然面接でも、弱い志望動機を述べるにとどまり、採用側面接官の心を動かすことはできません。
しかし、「私の強みはこれだ」「自分が貢献できる分野はここだ」と意識して臨めば、自然に表情も明るく自信に満ちて履歴書を書いたり面接を受けたりできるはずです。
専門性も知識も経験もない場合は、多くの会社が欲しがっている「使い道のある人材」としての自分を、使い道を提案しながら売り込むのです。
そうすることによって、会社側もあなたの使い方がイメージできます。
自社に貢献してくれそうな人材であれば、多少専門性が低く知識が乏しくても、会社側は採用を検討するのです。