ビジネスの世界では、何らかの書類を郵送したりFAX送信したりするときに、「以下の書類をお送りします」という挨拶を兼ねた確認書も添付することになっています。
そのため、履歴書などの応募書類を送る際も、ビジネスマナーを守って添え状を付けておく必要があります。
今回は、送付状の書き方と状況別の例文について解説します。
送付状(添え状、カバーレター)の基本
送付状は、添え状ともカバーレターともいわれてます。ビジネスの世界では書類を送付する際に必ず入れることになっているので、履歴書などの応募書類には入れておきましょう。
作成にはいくつかの注意点があります。
簡潔に書く
送付状の役割とは「このような書類を送ります」という連絡と、挨拶を兼ねたものです。長々と自己紹介を書いたり、熱意を語ったりしてはいけません。
必ずA4用紙1枚以内にまとめてください。
2枚にわたるのであれば、それは書きすぎであり、もはや送付状ではなく自己PR書になっている可能性が高いので、内容を見直しましょう。
持参の際は必要ない
送付状は、書類の発送時に添付するものです。あなたが面接時などに持参して手渡しする際には、送付状を入れる必要はありません。
手書きよりPC作成
送付状は、最近はパソコンで作成して印刷したものが一般的になっています。
手書きをするよりもきれいに仕上がりますからPC作成をお勧めします。
中には、履歴書と共に送付状も手書きでないと評価しないという面接官もいますが、やや古い価値観であり、一般的ではありません。
もし手書きをする場合は、白無地便箋を使用し、縦書きをします。送付の際には、手紙ではないので、無記入の便せんを入れる必要はありません。
マイナスがなければ合否に大きく影響はない
送付状は、ビジネスマナーという観点では大切な書類です。
しかし実際のところ、送付状の有無により合否に大きく影響するということは稀です。
ありえないミスをするとか、人柄を疑われるような書き方をしない限り大きく影響しません。
また、応募書類に入れ忘れたといって、あとから郵送してくれる人がいます。
特に悪印象というわけではありませんが、後から郵送する必要があるほど重要な書類でもありません。
送付状(添え状)の書き方と例文
送付状はビジネスレターであり、一定の決まりがありますから、そのルールに従って書いてください。
さらに、送付状では、くどくどと自己PRを書いたり熱意を書いたりするのはお勧めしませんが、採用担当者に知っておいて欲しい事務的な連絡があれば、書いておくと双方のために便利です。
その状況別に例文を紹介しますので、参考にしてください。
一般的な送付状(添え状)のテンプレート
【日付】平成〇年〇月〇日
【宛先】〇〇株式会社 採用ご担当者様
【氏名】〒000-0000
〇〇市〇〇区〇〇5-2-10
氏名〇〇 〇〇
E-Mail aaa@mail.com
【件名】貴社・営業職求人募集への応募の件
【挨拶】拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
【本文】〇月〇日公開の求人情報誌△△にて、貴社の営業職募集の求人を拝見いたしました。早速ご応募させていただきたく、下記の書類を同封にてご送付申し上げます。
よろしくご査収、ご検討のうえ、面接の機会をいただければ幸いに存じます。
敬具
【同封書類】
記
<同封書類>
- 履歴書(1枚)
- 職務経歴書(2枚)
以上
【日付】ポストに投函する日付です。記載日ではありませんし、面接日でもありません。履歴書や職務経歴書の日付と同じ日にしましょう。
【宛先】応募先の会社名と、求人情報に記載されている採用担当部署名を書きます。会社名は、(株)などと省略せずに、正式名を書いてください。担当者名がわからないときは、「採用ご担当者様」にします。
【氏名】あなたの住所と氏名、メールアドレスなどを書きます。
【件名】何の要件なのかを明らかにするものです。「〇〇職応募の件」「〇〇スタッフ応募について」など、どの職への応募なのかがわかるように書きましょう。会社によっては、複数の職種について募集をかけていて、それぞれ担当者が分かれていることがあります。一目見てどの職への応募かわかるようにすると親切です。
【挨拶】本文を始める前に、一般的には拝啓などの頭語を入れ、本文あとに敬具などの結語で結びます。挨拶文は定型文を使えば問題ありません。
【本文】どの求人媒体を見て、どの職種へ応募したいのかがわかるように、文頭に書いてください。
会社は複数の媒体に求人を出していることがあります。また、同時に複数の職種で求人を出すこともあります。それぞれの担当者が別のこともあるので、どの求人を見ていて、どの職種へ応募したいのかをはっきり書きましょう。
【同封書類】同封書類は「記」を書き、中央揃えにします。その下に<同封書類>のように表題を付け、項目と枚数を書きます。履歴書や職務経歴書が一般的ですが、他にも自己PR書や提出を支持されたものがあれば、ここに記します。
最後は「以上」の文言を右寄せで入れておきます。
応募に関して連絡がある場合
送付状は、相手の採用担当者への連絡用紙でもあります。もし、応募に関して連絡事項がある場合は、送付状に書いておくのがベストです。
たまに、履歴書や職務経歴書に、付箋紙が貼り付けられていて「在職中ですので連絡は携帯にお願いします」などと書かれていることがあります。
あるいは簡単なメモ用紙が同封されていることもありますが、これらはビジネスレターとして失格です。特別な連絡があれば、送付状に記載しましょう。
連絡方法を伝えたい場合の例文
面接時間の設定など先方との連絡を取り合う際に、「平日19時以降しか電話は取れない」「面接は土曜日しか受けられない」など、あなたの側に事情がある場合があると思います。
それらがあらかじめわかっているのなら、送付状の下の方に書いておくと、担当者にスムーズに伝わります。
平日の電話応対についての例文
平成〇年〇月〇日
〇〇株式会社 採用ご担当者様
〒000-0000
〇〇市〇〇区〇〇5-2-10
氏名〇〇 〇〇
電話000-0000-0000
E-Mail aaa@mail.com
貴社・営業職求人募集への応募の件
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
〇月〇日公開の求人情報誌△△にて、貴社の営業職募集の求人を拝見いたしました。早速ご応募させていただきたく、下記の書類を同封にてご送付申し上げます。
よろしくご査収、ご検討のうえ、面接の機会をいただければ幸いに存じます。
敬具
記
<同封書類>
- 履歴書(1枚)
- 職務経歴書(2枚)
以上
なお、現在在職中のため、勝手ながら平日のお電話によるご連絡は、時間帯により留守番電話で応答させていただくことをご了承ください。必ず翌日午前中までには、折り返しご連絡いたします。
何卒よろしくお取り計らいくださいますよう、お願い申し上げます。
面接日や時間を調整してもらいたいときの例文
なお、現在在職中であるため、面接時間は平日19時以降か土曜日を希望しております。誠に勝手な希望であると承知しておりますが、何卒お取り計らいいただけますと幸いです。
詳細はご連絡を頂いた際にお伝え申し上げる所存です。よろしくお願い申し上げます。
事務的な依頼の場合は、文末に添える形で書いておきましょう。
募集要件に満たない応募の送付状
募集要件に満たない場合であっても、応募していけないわけではありません。
会社の募集要件というのは、あいまいな場合も多く、条件外の人であっても広く受け付けてくれる会社もあります。
しかし、募集要件に合わないのに、ひとこともそのことに触れず堂々と応募すると、「要件をしっかり読んでいないのか?」と思われてしまいます。
非常識と思われたり、うっかりミスの多い人と思われたりしないように、送付状にひとこと入れておきましょう。
応募要件に関することは、「面接時間の調整のお願い」など事務的な要件よりも、内容が重要であるため、「拝啓~敬具」の中に入っている本文に記載するようにします。
貴社・経理職募求人募集への応募の件
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
〇月〇日公開の転職情報誌△△にて、貴社の経理職募集の求人を拝見いたしました。早速ご応募させていただきたく、下記の書類を同封にてご送付申し上げます。
しかしながら、私は御社の募集要項にあります「給与計算業務の3年程度の実務経験を持つ者」に該当いたしません。
総務・経理職の経験はありますが、給与計算業務の経験は3年に満たず、条件外であるため失礼かとは存じましたが、貴社経理職へどうしても就きたいと思い、ぜひ機会を頂ければと思い応募させていただくことといたしました。
この段階にて応募する非礼をお許しいただけるのであれば、ぜひご検討いただきたく、よろしくお願い申し上げます。
敬具
このように、「募集要件はきちんと見ているし、条件外であることは知っているが、それでもチャレンジしたいため応募させてください」という意思が伝わるように書いてください。
また、募集要件に合致しないが、応募して良いのかあらかじめ会社に確認している人もいると思います。
要件に満たなくても、「応募していいか」と連絡すれば、多くの会社が受付をしてくれるはずです。
その際は、「要件に満たないが応募していいか確認し、了承済みである」という事実を連絡しておく必要があります。
そのようにしないと、事前連絡したことが無駄になってしまいます。
例えば以下のように補足しておきましょう。
貴社・経理職募求人募集への応募の件
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
〇月〇日公開の求人サイト△△にて、貴社の経理職募集の求人を拝見いたしました。早速ご応募させていただきたく、下記の書類を同封にてご送付申し上げます。
私は御社の募集要項にあります「給与計算業務の3年程度の実務経験を持つ者」に該当いたしません。
しかし、貴社経理職へ応募したいと考え、〇月〇日に御社に電話にてお問い合わせをいたしましたところ、採用ご担当者さまより、条件に満たない場合も応募を受け付けているとの承諾を頂戴しました。
そのため、ここに応募書類を送付させていただくこととなりました。何卒ご査収・ご検討の上、ぜひとも面接の機会をいただくたく、お願い申し上げます。
敬具
このように、応募までに経緯がある人は、そのことを簡潔に書いておきましょう。先方の担当者が混乱しないようにするためにも、重要なことです。
自己PRをしたい場合
送付状(添え状)は、ビジネスレターであり、その役割はあくまでご挨拶と書類の内容を伝えること、事務的な連絡があれば添えておくことです。
そのため、自己PRや熱意を語ることは避けた方が良いという意見もあります。
しかし、送付状といえども応募書類の一つであり、採用担当者の目に触れたときに、それが「好意的」「印象的」にうつれば、選考材料になる可能性もあります。
そのため、担当者の目を引くことができるアピールポイントがある人は、ご挨拶の部分にそっと書いておくと、興味を持ってもらえるかもしれません。
送付状で印象を与えられれば、担当者が受容的な気持ちであなたを面接に呼んでくれるかもしれません。
何よりも、「最初に目に入る書類」ですから、特筆すべきPRネタがある人は書いてもいいでしょう。
3行から5行以内にまとめる
PRポイントがある人であっても、送付状に書く自己PRは3行から5行以内にまとめるようにしましょう。
それ以上のことは、履歴書や職務経歴書に書いてあるはずです。
量が多いとそれだけで読むのが面倒に思われる場合もあります。
履歴書や職務経歴書とダブらないように
また、自己PRなどは職務経歴書など本資料にしっかり書かれていると思います。
その内容と同じことを送付状に書いても意味がありません。
むしろ、送付状に書かれていることが、後から出てくる職務経歴書にも書いてあれば、「コピーしているのか?」と思われ悪印象です。
送付状にアピールポイントを書くなら、ダブった内容にせずに、簡潔に書いてください。
例えば以下のような形です。
私はこれまで〇〇業界において、営業販売職として8年間活動して参りました。
販売契約件数は約2件/1日平均、支社内販売職社員270人中、上位5位以内を、直近5年間常時達成しております。業界は違いますが、私が培ってきた販売ノウハウと行動力をぜひ御社にて活かしたいと考えております。
つきましてはぜひ選考対象としていただきたくご応募申し上げます。何卒よろしくご検討の上、ぜひ面接の機会をいただけますよう、心より願っております。
敬具
このように、採用側の担当者が興味を引いてくれそうな実績がある人は、3行から5行程度に簡潔に書きましょう。
無理にアピールネタを探す必要はありません。
送付状は本来、自己PRに適した書類ではないため、目を引くものでないなら、何も書かないほうが良いでしょう。
送付状を書くときは、その役割を理解して、マナーを守って書きましょう。
合否に大きく影響はしませんが、応募書類の一つであるため、マズい書き方をしてマイナス評価にならないように注意してください。
自己PRしすぎも控えめにし、バランスの良い書類を作成してください。そうすることで、転職活動が成功に近づいていきます。