もし、あなたが職場で上司からパワハラを受けているなら、上司の横暴に辛い思いをしていると思います。
職場という狭い空間で、毎日顔を合わせなければならない人がそのような人だと、苦労するものです。
しかし、上司も一人の人間であり、感情を持っています。
パワハラをしてしまう人は、未熟な性格であることが多く、さらに内面に隠された弱さを持っています。
こういった、「パワハラをする人の人間性や感情の動き」を知っていると、少しだけ対処ができるようになるかもしれません。
今回は、パワハラをしてしまう上司の人間性について、解説します。
パワハラ上司は心が弱い
自分が持つ職権を利用して、部下に暴言を吐いたり、いやがらせをしたりするパワーハラスメント。
このような行為をする上司には、精神的な未熟さを持つ人が多いです。
意外かもしれませんが、本当に気が強い上司はパワハラをしません。本当の意味での「パワー」を持つ上司は、そんなことをしなくても、自らの思い通りに部下を管理・指導することができるからです。
ハラスメントとなる行為をしてしまう上司は、「弱さ」「未熟さ」「不安」「劣等感」「猜疑心」など、弱い心を持っていることを、まず認識しておきましょう。
あなたがもし、パワハラ上司の「弱さ」を刺激する部下であれば、確実にあなたは被害者となります。
逆に、パワハラ上司の「弱さ」をフォローし、理解し、安心させてあげられる人物になることができれば、あなたへのパワハラは止まるかもしれません。
「パワハラされるあなたが悪い」と言っているわけではありません。
そうではなく、知らず知らずに上司の「弱さ」を刺激しているかもしれないので、理解して対策することによって楽になれるかもしれない、ということです。
それでは、上司の弱さを理解するにはどうしたらよいでしょうか。
パワハラ上司の人間性を大分類すると、「タイプA型」と「自己愛型」に分けることができます。それぞれの特徴を見てみましょう。
タイプA型上司とは何か
フリードマンというアメリカの医師が、「タイプA型行動特性」を持つ人を発見、分析しました。
この性格特性は、目標達成意欲が強く負けず嫌いで、いつも何かに追われていて、せっかちでイライラしやすいです。さらに自分の思い通りに物事が進まないと、かんしゃくを起すような感情的な傾向があります。
実際に、タイプA型の人たちは、下記のような特徴が見てとれます。
ただし、こういった傾向がある人こそ、まさに「仕事ができる人」である場合も多いのです。
優秀な経営者や、好成績をあげる営業パーソンには、このタイプの人が非常に多いです。芸能人や政治家でも、大成功をおさめている人がいます。
あなたもこのタイプの有名人を簡単に思い浮かべることができるのではないでしょうか。
このタイプの人たちは、「自分で動きたい」「自分の思い通りに周りをコントロールしたい」という強い欲求があります。
そのため、自分でできる範囲のことでは、ストレスなく動きまわることができます。精力的に活動し、高い目標達成意欲を存分に活かして、休む隙なく働きます。
結果的に、優秀な成績をあげることができます。
しかし、こういったタイプの人が管理職になってしまうと、「自分ではない人間を自分と同じように動かしたい」と思うようになります。
しかし、多くの部下は、「タイプA型上司」と同じ動きなどできるわけがありません。
そのため、タイプA型上司は、部下が「遅い」「動かない」「欲がない」ため、非常にストレスを感じます。
そのストレスを解消するために、タイプA型上司は、部下に暴言を吐いたり暴力をふるったりなど、まさに「タイプA型」的な方法で圧力をかけてしまうわけです。
これらの人は、「何があっても頑張らなければいけない。絶対に誰にも負けてはいけない。休んではいけない」と、強迫的に思い込んでいます。
それはなぜかというと、「頑張らない自分には価値がない。負けてしまったら終わりだ。休んだら駄目になってしまう」という、異常な焦りと不安があるからです。
タイプA型上司の「弱さ」と対策法
もしあなたにパワハラをしてくる上司が、「タイプA型」の特徴を持っているのであれば、あなたは彼らの弱さを刺激しているのかもしれません。
タイプA型上司は、「仕事を達成できないことが怖い」「負けるのが怖い」「遅れるのが怖い」と思っています。
そのため、あなたがこれ以上パワハラの被害を受けないようにするには、「仕事を達成できる能力を身につける」「負けずについていく姿勢を見せる」「遅れないようにする」ということです。
難しいでしょうか。
もし、あなたがあまり仕事が好きではなく、平和主義者でのんびり屋ならば、このタイプの上司とは絶対に相性が悪いでしょう。上司の側も、あなたの管理に本当にうんざりしているはずです。
そのため、上司についていくことが全くできないのであれば、この上司との付き合いをあきらめて、働く環境を変えた方が良いでしょう。
しかし、何とか対策しようと思うのならば、「仕事を達成できる能力を身につける」「負けずについていく姿勢を見せる」「遅れないようにする」ということに取り組んでください。
このタイプの上司には、おべんちゃらを言って懐柔させようとしたり、素直に従ったりするだけでは効果がありません。余計イライラさせるだけです。
ぜひ、形だけでも「頑張って目標達成する!」「絶対負けない!」といったハイテンションな姿勢を見せてください。
タイプA型上司は、「のんびり行こう」「できなくても、仕方ないね」などの態度を見ると、心底イライラします。
まずは表面的でもいいので、上司の前では鼻息荒く、戦闘的な態度を取ることです。
要するに、上司と同じペースとテンションで動くということです。
成果をあげるか否かは問題ではありません。むしろ成果は出なくても、同じペースとテンションがあれば、意外と理解を得られます。
成果が出なかったときや失敗したときでも、ハイテンションで謝ってしっかり反省し、また動き始めれば、上司側も取りあえず納得します。
また、報告・連絡・相談も含めて、絶対に「遅れ」は許されません。
質よりも、まずはスピードです。動きながら考えるくらいがちょうど良い早さです。
上司の前では、「明日でいいかな」と思ったことは、必ず今日の早いうちに行ってください。「これくらい、言わなくてもいいかな」と思ったことでも、必ず相談しましょう。
「遅い」「動きがない」「自分が把握できていない」ということが増えてくると、この上司は怒りを抑えることができないからです。
タイプA型パワハラ上司の多くは、部下に威圧的な言動をしてしまっていることに、本当は罪悪感を持っています。
なぜなら、このタイプの本質は、ただ単に「目標の達成をして、不安から解放されたい」と思っているだけだからです。
部下が本当に嫌いなのではなく、「仕事が進まない」「思い通りにいかない」「スピードが遅い」という現象が嫌なだけです。
そのストレスを解消するために、怒鳴ったり、ののしったりといった暴力的な方法を使っているだけのことがあります。
そのため、部下の側が上司の心理を知ってペースを合わせることによって、上司を安心させる必要があります。
上司の側も、自分の思うように部下が動けば、イライラしません。ハラスメント行為をしなくても済むようになるわけです。
自己愛型上司はパワハラをする傾向がある
パワハラをしてしまう上司のもう一つのタイプが、「自己愛性人格障害」の特徴を持つ上司です。
自己愛性人格障害とは、他人も、自分と同じような感情や価値観を持つ人間であるということを、認めることができない人格です。非常に偏った性格特性を持つ人で、全人口の約1%ほどいるといわれています。
この性格の人は、他人の気持ちを思いやることができず、自分のことしか見えません。
他人とは、「自分を引き立て、利用するための道具」と本気で思っていることがあります。
そのため、どこであっても健全な人間関係を築くことができません。
このタイプの人は、強い自意識と攻撃性を使って、職場では上位に上り詰めている人がいます。
しかしその背後で、他人のアイディアを盗んだり、利用できる人間をとことん利用するといった方法を使っていることも多々あります。
主に職場では、下記のような様子が見られるでしょう。
正直なところ、このタイプの方が、タイプA型上司よりも数倍やっかいです。
なぜなら、部下のことを、血の通った人間とは思っていないからです。
もしあなたへパワハラしてくる上司がこのタイプであったら、どうしたらよいでしょうか。
本当にあなたの職業人生を明るく健全なものにしたいのであれば、このタイプの人から離れた環境で働くというのがベストです。
なぜなら、自己愛型上司は「自分より能力が低く、役に立たない」「自分より能力が高く、脅威となる存在」のどちらの部下に対しても、ハラスメントをしてきます。
そのため部下の側からの、本質的な対策がとても難しいからです。
自己愛型上司には「上司本人にとって利用価値のある部下となり、搾取され続ける」という方法か、「上司本人を追い抜かし、上司を押さえつけることができるレベルの人材になる」という二つしか、対策法がありません。
しかし、そう簡単にはできない人が大半でしょう。
その場合はどのようにしたらよいでしょうか。
自己愛型上司の「弱さ」と対策法
自己愛型パワハラ上司にも、恐れと不安といった弱さがあります。まずはこの上司の弱さを刺激しないように心がけることから始めましょう。
自己愛型上司の弱さとは、主に「自分が認められないことが怖い」ということに付きます。
自分が最高の存在であり、一番であり、誰よりも優れているという状態ではないということに強いストレスを感じる人格です。
しかし、非常にプライドが高い反面、心は弱く傷つきやすいのです。周りの人や自分より上の人から、悪い評価を受けることをとても怖れています。
そのため、上司であるにもかかわらず「責任をとる」「自分の非を認める」ということができません。
だからこそ、部下の失敗をいつまでも責め続けて責任を取らなくて済むようにしようとしたり、「お前が悪いからだ」と非をなすりつけてきたりするのです。
そのため、あなたは以下のようなことに気をつけましょう。
称賛する
自己愛型上司は、自分を褒めて認めてくれる人を好みます。わざとらしいおべんちゃらも、このタイプには有効です。
自分は誰よりもすばらしい、有能である、センスが良い、頭が良いと本気で思っているのです。
この人格の人には「自分を客観的に判断する」ということができません。
そのため、あなたがもしこのタイプの上司からパワハラを受けているのであれば、今のあなたはこの上司の気に入るような「おべっか」「おべんちゃら」を言っていないはずです。
そのため、彼らからは「自分を認めない利用価値のない人間」「自分の良さを理解できないレベルの低い人間」と思われている可能性が高いです。
まずは、上司のことを認め、褒めたたえてみましょう。とても嫌な行為ではありますが、処世術の一つと思って割り切るしかありません。
「〇〇課長は、本当に素晴らしい判断力をお持ちですね。私にはまったく思いつきもしませんでした」
「〇〇さんのセンスにはいつも脱帽させられます。どうしてそのような斬新なアイディアを思いつかれるのですか?」
このレベルのお世辞が適切です。
相手によっては、「見え透いたお世辞を言うな」などと否定する人もいますが、確実に悪い気はしていません。
根気よく、褒めたたえる作戦を続けてください。
「自分のような偉大な人間の良さがわかる人は、評価する価値がある」という論理で、次第にあなたのことを、いじめの対象から外すようになっていきます。
進言はしない
また、このタイプの人には、良かれと思ったとしても進言をすることは逆効果です。
冷静な自己判断力はありませんし、自分と違う意見を言う他人は、自分を陥れ恥をかかせる悪人だと思われてしまいます。
たとえ組織のため、本人のためといっても、指摘をする場合は慎重にします。
どうしても上司と違う意見を言わなければならない時などは、「(偉大なあなたがこうなるためには)こうするともっと良くなる」といったニュアンスで指摘するように気を付けてください。
上司がその上の人に褒められるように動く
このタイプの上司は、仕事の完成度にはあまり興味はありません。
仕事の完成度そのものではなく、自分が評価されるか否かに興味があります。さらに、自分が責任を取らされず、益だけを得る方法を探しているといえます。
そのため、部下であるあなたがハラスメントの被害にあわないためには、「上司の益になるように働き、非がある場合はその責任を自分で引き受ける覚悟をする」ということです。
大変難しいことだとは思います。
しかし、「上司が褒められるように動く」というのは、部下としての務めの一つです。そういった意識で働くことは、今後の職業人生で決して無駄にはなりません。
どうしたら上司が、その上の人から評価されるのかを考えて仕事をしましょう。自分のミスは、自分でしっかりフォローできるように日頃から管理しましょう。
そして、そういった努力をしてもパワハラの被害が止まらないのであれば、もうあなたはそこにいても搾取されるばかりです。
新しい職場を探すのも検討しましょう。
以上のように、パワハラをする上司には大きく分けて2つのタイプがあります。そして、それぞれに心の弱さがあります。
傾向を知って、上司の「弱さ」を刺激しないように努力することで、少しずつ被害を小さくしていくことができるかもしれません。
さらに、見方を変えれば、こういった上司に巡り合ったことは、あなたのビジネススキルを向上させるチャンスになるかもしれません。
タイプA型上司に合わせていると、スピードと行動力が養われていくでしょう。自己愛型上司の部下でいれば、処世術や強い心が身に付きます。
パワハラの被害は辛いものですし、限界が来たら職場を変えるなどの行動が必要になるでしょう。
ただその前に、できるだけのパワハラ上司対策をしてみてください。
あなたの職業人生にきっと役立つ、心強いスキルが身に付くはずです。
転職理由に「パワハラ被害」は有効
パワハラ上司の対策がうまくいく人ばかりとは限りません。
やはり、人間関係上の対策というのは難しいものです。どうしても上司との相性が改善しないとか、その上司と離れることができない職場であれば、思い切って職場を変える方があなたのためです。
心身を病んでしまうと、その回復のために多大な時間とお金がかかります。そうなる前に、自分を守らなければなりません。
新たな職を見つけようとしても、年齢が高いからとか、キャリアが乏しいといったネックがあって決断できないかもしれません。
あるいは今の会社に入社して間もないと、短期間で辞めてしまうのは不利になるのではないかと思うものです。
たしかに転職の際に、年齢が高かったりキャリアが乏しかったりすると不利になることがあります。
しかし、あなたが今の職場で熾烈なパワハラ被害に遭っているということは、転職したいと思う動機になりえます。
転職先の会社に対して、堂々と主張できるほどの「辞める理由」を持つ人は少ないのです。
多くの転職希望者は、面接などで今の会社を辞める理由に「給料が少ないから」「やりがいがないから」などといいます。
しかし、こういった理由では退職理由として非常に弱いため、求人側の面接官から、厳しい質問攻めを覚悟しなければなりません。
こういった中、あなたが受けている熾烈なパワハラは、辞める理由として十分理解してもらえるものです。
今受けている行為をしっかり記録しておき、事実を正しく面接で述べれば「この人が仕事を辞めたいと思うのは無理がない」と思ってもらえます。
小さいことのようですが、「納得してもらえる退職理由を持っておく」ということは転職活動では意外と重要なことです。
パワハラ上司の弱さを理解し対策を講じることは大事なことです。
しかし、どうしても相性が合わない場合や、上司の人間性が改善不能な場合は、その職場にとどまることにこだわってはいけません。
きちんとした退職理由を持つ人は、転職ではそれほど不利にはなりません。
パワハラ上司の対策と並行して、他に良い職場が見つかるように、活動を進めてください。