今の職場に何か原因があり、適応障害になってしまった人がいると思います。
適応障害とは、原因がはっきりしていて、その原因となる「ストレッサー」から距離を置かなければ、完治することはありません。
逆にいえば、原因ストレスが消えれば、半年~1年以内に症状が消えるのです。
今回は、職場が原因で適応障害と診断された人が今後どのように働いていくのかを考えてみましょう。
適応障害は原因ストレスが消えると治る
社会生活や人間関係になじめずに、心や身体の調子をくずしてしまう病気を「適応障害」と呼んでいます。
適応障害は、発症の原因となるストレスがはっきりしているのが特徴です。
そのため、ストレスの原因から距離を置くと、症状はおよそ3か月~半年以内に治まります。
しかし、ストレスから距離を置かずそのままでいると、症状は悪化したり慢性化したりします。
そのため、もしあなたが適応障害であると診断されていて、その原因が職場にありそうな場合は、職場のストレス原因からできるだけ距離を置くようにしないと、症状は治らず、むしろ悪化することがあるのです。
職場の何がストレスになっているか把握する
適応障害になってしまい、その原因が職場にあると感じている人は、ぜひ「職場の何がストレスであるか」を見極めてください。
「仕事が大変で疲れていた」「頑張りすぎたから」といった漠然としたものではなく、自分を苦しめているものが具体的に何であるかをはっきりさせましょう。
多くの適応障害になった人の傾向を見ていると、原因となる職場のストレス要因には、大きく分けて3種類あることがわかります。
それは、過重労働、人間関係の問題、そして職務適性の不一致です。
過重労働が原因の適応障害は休職が有効
過重労働とは、以下のようなものが挙げられます。
・残業時間が月80時間を超えている
・通勤に2時間以上の時間がかかる
・忙しいが達成感がなく、社会的意義の乏しい仕事をしている
・クレーム対応や飛び込み営業など、心の負担が強い業務
・仕事以外の、趣味や家庭生活などを楽しむ余裕が乏しい
これらのことが日常的である場合のことです。あなたにもし思い当たるところがあれば、適応障害の原因は「過重労働」かもしれません。
このように、単純に労働時間が長いとか、仕事そのものが心と身体に負担をかけていることがはっきりしている場合、治すためには「休むこと」が一番有効です。
一部の会社では、適応障害になった社員には、一定期間休職をさせて療養するようにしています。
しばらく仕事のことを忘れて、心身をいたわり休息するためです。このように仕事そのものから距離を置くことで、確実に心身は回復します。
適応障害になった原因が「過重労働」であれば、休職したり有給をまとめて取って休むことがストレスの原因から距離を置くことにつながるからです。
人間関係が原因の場合は異動か転職
職場のストレスが原因で適応障害を発症する人の多くは、人間関係上の問題を抱えています。
例えば以下のような問題です。
・パワハラやセクハラをする上司に苦しんでいる
・職場で孤立していたり、いじめられていたりする
・顧客や取引先に横暴な人がいて対応が難しい
・嫌味なことを言われる、陰口を言われる
「職場」という狭い空間に、あなたの尊厳を傷つける人がいるということは、想像以上のストレスです。
自覚していなくても、心の奥底が悲鳴を上げていて、あなたに気づかせるために「不安」「抑うつ」などの症状として現れていることも考えられます。
自分では「職場の人間関係くらい大丈夫だ」と思っている人に限って、適応障害になることがあります。
例えば、からかわれたり無視されたりして明らかに職場イジメにあっているのに、笑ってごまかしている人もいます。
あるいは、上司からパワハラを受けているにもかかわらず「上司は私のために指導してくれているのだ」と無理やり自分を納得させているような人です。
このように、問題があるのにそれを直視せず、ごまかすようなストレス対処をし続けていると、心の機能がおかしくなってしまいます。
だからこそ、もし適応障害という症状が現れたのであれば、「これ以上心を傷つけない方法を考えてください」という自分自身からのメッセージであると気づくべきです。
職場の人間関係に問題があって適応障害になった人は、この機会に病気の原因となった人と距離をおけるように考えてください。
一つ考えられるのは、異動願いを出すことです。
大きめの会社であれば、異動をさせてもらい、パワハラ上司やどうしても相性の合わない人から離れて仕事ができるように配慮してもらえることもあります。
もし適応障害の診断を受けて休職中であれば、産業医面談などで「異動をしたい」と願い出ると、産業医経由で会社側に打診してくれることもあります。
もう一つの方法は、転職をして、ストレスの原因となった人から離れることです。
「人間関係の問題はどの職場にもあるため、転職が即解決にはならない」といわれることもあるでしょう。
一理ありますが、それは一般的な人の話です。
適応障害を発症している人で、かつ明確にストレスの原因になっている人が職場にいるのであれば、まずその人から離れない限り、病気が治らないです。
病気を治しながら、「なぜ、自分は職場での人間関係で上手くいかなかったのだろうか」と考える必要はあります。
しかし、まず心身の調子を整えるほうが先であるといえます。
職務適性の不一致の場合も異動か転職
職務適性の不一致とは、以下のような状況のことです。
・自分の適性に全く合わない仕事でミスが多く成果が上がらない
・仕事上で重大なミスをしてしまい、後ろめたい気持ちでいる
・能力以上のノルマを課されている
・やりがいの無い仕事しか任されない
・仕事で認められたいが認められず、強い欲求不満を持っている
このように、自分に与えられている仕事と、あなたの力や適性に不一致があると、職場でなかなか成果があがりません。
そのためミスもしやすく、認められないので、徐々に心を病んでいくことがあるのです。
このように、職務適性の不一致が原因で適応障害になってしまった人も、異動願いを出して仕事内容を変えるか、転職をすることが解決につながります。
適応障害の人が転職成功するために
適応障害になった人が、今の職場のストレスから距離を置く方法の一つに転職があげられます。
新たな環境に身を置いた方が、適応障害を克服して、職場に「適応」できる確率が高いからです。
しかし、適応障害になる人には一定の傾向があります。
もちろん、発症のきっかけとなった原因(パワハラ上司や職務適性の不一致など)があるわけですが、あなた自身の資質にも原因があるかもしれません。
そのため、自分の資質を見つめながら、転職活動をすることが、成功のために必要なことであるといえます。
なぜ適応障害になったかということを考えると、自分自身の資質にも原因があったことに気づけるはずです。
それを把握しなければ、次の職場へ転職できたとしても、再発してしまうでしょう。
特に、適応障害になりやすい人は、「ストレス対処が苦手」であることと「考え方に偏りがある」という点があげられます。
その二つをしっかり見つめ改善しながら、適した仕事を選ぶ必要があるでしょう。
ストレス対処ができないと転職しても再発する
転職活動をしながら、ぜひ取り組んでもらいたいのが、ストレス対処の方法を考えることです。
適応障害を発症する人は、ストレスを感じたときに、それを乗り越えるための力が乏しいことが多いのです。
できるだけ、ストレスを乗り越える方法を学びましょう。
ストレス対処術にはさまざまなテクニックがありますが、ここでは適応障害になりやすい人がまず取り組むと良い方法を紹介します。
逃げたり忘れたりごまかしたりしない
起こった問題の本質を直視せずに「臭いものには蓋」で対処してはいけません。
そもそも、あなたが適応障害になったのであれば、長年おこなってきた「臭いものに蓋」の「蓋」が開いてしまったからです。
問題が現れたときに、「それは、自分のことではない」「関係ない」と逃げたり忘れようとしたりしても、問題自体は必ず残っていて、徐々に心にたまっていってしまいます。
パワハラ上司にイジメられているのに「自分を指導してくれているのだ」と無理やりごまかすのは良くないのは、このためです。
これからは問題が起こったら、まず「自分には問題がある」と認めることから始めてください。
「解決しよう」とまで思う必要はありません。単純に、「問題がある」と認めるだけでかまいません。
適応障害を発症してしまう人にとって、問題を認めることはとても怖いことでしょう。
ですが、逃げたりごまかしたりせずに、問題を自分のことと受け入れることは、適応障害やうつ病を再発させることを防ぎます。
「これも経験」と捉える
適応障害になってしまったことも含め「これも経験だ」と捉えることができるようになると、ずいぶんと心が楽になるでしょう。
物事には悪いこともありますが、一方良い面も含まれています。
そもそも「良い悪い」というのは、それを判断するあなた自身による主観であって、見方によってはさまざまに解釈できます。
例えば適応障害に罹ったことを「こんな病になって、仕事に支障が出てしまった。人生が台無しだ」と捉えるか「この病気のおかげで、自分の働き方すべてを見直すことができた。良い経験をしたものだ」と捉えるかで、心の持ちようが全く違います。
これから仕事をしていくうえでも、確実にストレスというのはあらわれます。
そのときに「これはいい気づきを与えてくれた」「良い経験になるだろう」と捉えることができれば、ストレスそのものをストレスを感じなくなり、楽になれます。
人に相談して意見を取り入れる
適応障害に罹りやすい人は、非常にまじめで頑固な側面があります。
問題を抱え込んだり一人で解決しようとやっきになります。
さらに、仕事を人に預けることができず、気がつくとオーバーワークになっていることもあります。
抵抗があるかもしれませんが、積極的に人に相談し、意見をもらいながらストレス対処するようにしましょう。
「愚痴を言うのはよくない」「相談して、相手に負担をかけたくない」と思ってしまう傾向があるかもしれません。
しかし、あなたがストレスに負けて病気になるほうが、ずっと誰かに迷惑をかけてしまうことになります。
転職活動をする際にも、一人でやろうとせずに、家族に相談したり転職の専門家に依頼したりして、人に意見をもらうようにしましょう。
嫌なことは断る練習をする
適応障害になる原因に、人間関係や過重労働がありますが、いずれも、過剰に仕事を引き受けすぎたり、誰かに気を使いすぎたりすることが要因でもあります。
無理なことでも引き受けるとか、嫌なことでも我慢するといった美徳はこの際捨てて、断る勇気を持ちましょう。
もっとほりさげると、「断れない、嫌なことでも我慢してしまう」その背景には、「何としてでも認められたい」「いい人と思われたい」という気持ちが潜んでいます。
この気持ちをもっと掘り下げると、「自分には価値がない、自信がない」という無力感に行きつきます。
すぐに、自信のなさを克服することは難しいものです。
しかし、問題から目をそらしてはいけないと述べてきたように、「自信がないという自分を受け入れる」というところから始めましょう。
認められなくても、自信がなくても、それでも自分は自分であり、大事な存在であると考えることが、心の強さにつながっていきます。
白か黒かの判断や絶対思考をやめる
ものごとを「成功か失敗か」「良いか悪いか」と極端に考える癖はありませんか。
あるいは「〇〇さえしていれば、絶対成功する」「〇〇をしてしまったら、絶対失敗する」と考えてしまうことはありませんか。
このように、白か黒かで判断し、グレーの部分を認められないと、人生すべてが本当に疲れると思います。
適応障害になりやすい人の典型的な思考傾向ですので、できるかぎり「白でも黒でもない、グレーである」あるいは「〇〇であっても、何とかなる」といった曖昧な考えができるようにしてください。
適応障害の人が転職成功するには
職場にストレス要因があって適応障害を発症した人は、新たな職を探すのも選択肢に入れて欲しいと思います。
ただし、上に述べたようにストレス対処の方法を学びながら転職活動をすることです。さらに、どの仕事が一番ストレスを感じなくて済むのかを考えて進めなければなりません。
転職サイト(エージェント)にて職務適性を把握
まずは、転職の専門家に知恵を借りて、あなた自身の職務適性を把握するようにしてください。
適性検査を受け、コンサルタントと面談すると、自分はどのような仕事に向いているのか、あるいは向いていないのかが把握できます。
自分の適性を知らないままに、条件面だけで転職活動をしても、また同じことが繰り返され再発してしまうかもしれません。
特に職務適性の不一致のために適応障害になってしまった人は、慎重に自分の適性を把握するようにしましょう。
「転職さえすれば適応障害が治る」と思い込まない
「転職に成功して、仕事を変えれば適応障害が治るに違いない、絶対成功させなければならない」と思い込まないように注意してください。
これが、前述の「白黒判断「絶対思考」です。適応障害になりやすい人は、このように偏った考えになりやすいことに注意して活動をしてください。
「自分に合った会社が見つかったら応募しよう」「落ちたとしても、良い経験であった」と、できるだけ楽に考えてください。
回復すれば今より強い自分になれる
適応障害で一番つらい状態のときは、「もう自分には働く場所などない」「自分はダメな人間だ」などと気持ちが沈んでしまうものです。
もちろん、そのようなときは積極的に医療の手をかりたり精神療法を受けたりして治療してください。
しかし、適応障害はストレスの対象から離れることで、確実に良くなります。今調子が悪い人は、ぜひストレス要因から距離を置く方法を、真剣に考えて欲しいと思います。
そして、回復することができれば、あなたは今よりも強い人になれます。
適応障害になったおかげで、一回り大きく強い人間になれたと感じている人はたくさんいます。
身体の病気にかかると免疫力がつくように、心の病気もストレス耐性という免疫のような力がつくからです。
適応障害になったおかげで、「何がストレスになるのか」「自分はどのような考え方をしているのか」「自分に最適な働き方はどのようなものか」を、真剣に考え始めているはずです。
こういった、ある種のトレーニングをすることで、今後また同じような試練に出会ったときには、今よりも簡単に乗り越えることができるようになります。
数年後には、新たな環境にて「あのとき、適応障害になったおかげで、今は素晴らしい職業人生を歩んでいる」と感じられるようになることは十分可能です。