誰でもブラック企業のように労働環境の悪いところで働きたくはありません。
もちろん、ブラック企業であるか、そうでないかは、個人の判断によるものですから、「〇〇の仕事はブラック企業」と決めつけることはできません。
しかし、構造上どうしても労働環境が悪くなりやすく、そこで働く人の心身に負担をかける仕事があります。今回は、労働環境が悪く「ブラック企業」と思われやすい仕事について解説します。
納期に追われる仕事
ビジネスの構造上、「納品日」「納入日」が決まっている業界があります。例えば以下のような仕事です。
・システム開発関連の仕事
・マスコミ関係、テレビ局や番組制作
・出版社や新聞社
・有期のプロジェクトを支援するコンサルティングその他の仕事
こういった仕事は、明確に「何日までに絶対仕事を終えなければならない」という期限が決まっています。
システム開発関連業務は、顧客の業務システムなどを約束した日までに納入しなければ、違約金の支払い義務が生じるなど、厳しい納期限があります。
マスコミ関係も、番組や出版物が放送される日は決まっています。その期日に間に合わせることを前提に仕事の依頼が来る以上、「間に合わなかった」では済まされないのです。
一度でも納期に遅れてしまうと、次の仕事が来なくなります。そのため会社全体の雰囲気が納期厳守は絶対であり、働く人の労働環境の整備などは二の次になるのは当然といえるでしょう。
このように、納期が明確に決まっており、やるべきことを時間内に終わらせ、さらにライバル社よりも精度が高いものを制作しなければならないという仕事は、働く人にとって「ブラック企業」と感じられやすいといえます。
人の「感情」を扱う仕事
扱うもの(商品)が感情を持つヒトである仕事は、対応に時間と手間がかかりやすく、心理的にも疲れる仕事です。例えば以下のような仕事です。
・人材派遣業・人材請負業
・介護・看護業
・弁護士事務所など
例えば派遣会社などは、派遣スタッフの希望を聞きながら、かつ派遣先の企業の担当者ともやり取りをして、双方の「ヒト」が満足いくようなマッチングを企画することが仕事になります。
また介護・看護業は、「心身が不健康であるヒト」を扱うことが仕事ですし、弁護士事務所などは「民事的なトラブルを抱えているヒト」を対象とした職種です。
このように「感情」、特にマイナス感情を持つヒトの調整をするというビジネス構造の会社では、そこの社員は常に心理的にも時間的にもハードワークを強いられます。顧客の不満を受け止め、感情的に満足させることが仕事であるからです。
24時間動いている仕事
顧客などへの市場が24時間動いている業界は、労働時間の長さという意味で負担が強い仕事です。例えば以下のような仕事です。
・外資系金融業界
・小売業、外食サービス業
外資系金融業界は、時差のある海外との取引があるために、労働時間が不定期かつ長時間になりやすいのです。
ただ、これらの仕事はハードワークではありますが給与が高いため、社員の満足度という側面で見ると、そこまで「ブラック企業」ではないのかもしれません。
ここでいう小売業、外食サービス業とは、コンビニエンスストアや24時間営業のファミリーレストランなどのことです。
こういった業界は、扱う商品は安くても、サービスの提供時間を増やすことによって利益を出しています。
ほぼ24時間店舗営業しているということは、そこで対応する役割の社員にとっては長時間労働を強いられることになります。
さらに小売業、外食サービス業は、利益率が低く、ライバルが多いために、社員が得られる給与の額も低い傾向があります。
そのためこれらの仕事の中には「労働時間も長く、給与も安い」という、ブラック企業の典型である会社も含まれています。
休みが不定期の仕事
一般的に会社員であれば週に1~2日は定期的に休みがあります。多くは土曜日と日曜日です。しかしビジネス構造上、休みを定期的に取ることができない仕事があります。例えば以下のような仕事です。
・個人向けサービス業全般
・飲食業界
・美容業界(美容室、エステなど)
・不動産業界
・医療業界(医師・看護・介護など)
休みが不定期の仕事は、個人(一般消費者)を相手にしたビジネスをしている業界です。
一般消費者の立場から見ると、自分たちの休みの日(多くは土曜日・日曜日・祝日)に店舗が空いていて欲しいものです。
年中無休、24時間営業であればさらに便利です。そういった一般消費者のニーズに答えるためには、その会社の社員には定期的に休みを与えることができないのです。
週末や祝日、イベント前後(正月、クリスマスなど)が特に忙しく、家族や友人とも休みが合わない社員も多いようです。
そのため社会生活のほとんどが「仕事」となりやすく、人間関係の面でうまくいかず余計ストレスに感じるという人もいます。
また、一般消費者をターゲットにするビジネス構造上、扱う商品は「安く」さらに「小さい」ものである必要があります。
そのため薄利多売のビジネスになりやすく、手間はかかるものの利益は薄くなり、社員に還元される給与も低くなります。
一部、不動産や医療など高額商品を扱う業界では給与は高くなる傾向はありますが、いずれにせよ定期的な休みを取れないという側面で心身に負担をかけるといって良いでしょう。
以上のように、「納期に追われる仕事」や、「人の感情を扱う仕事」、「24時間動いている仕事」や「休みが不定期な仕事」は、その会社で勤務する社員にとっては、長時間労働や心身の負担が重くなりがちです。
もちろん、「人によってブラック企業であると感じる要素がある」というだけであり、これらの仕事はすべてブラック企業だ、というわけではありません。
これから仕事を選ぼうとしている人は、労働環境だけではなく、その仕事が好きか、やりがいがあるか、給与額は満足するかといった側面も十分検討する必要があります。
ただし、どんな会社であっても、求人情報には「残業はそれほど多くありません」「楽しく仕事ができます」などと書かれていますので、応募者側は「絶対にこの会社は大丈夫だ」と思ってしまうものです。
「いい会社」と思われないと人材を採用できないので、求人情報上では、会社側はあらゆる手段で労働者にとって良いところを見せてきます。
しかし上に述べたような仕事の内容だと、どうしても働く環境が悪くなりがちなのは事実です。
そのため、これから転職先を選ぶことができる人は、冷静に求人票をチェックし、注意して応募してほしいと思います。