知らず知らずに部下をつぶしてしまう部下キラー(クラッシャー)上司という人たちがいます。
これらの人たちと長期間共に仕事をすると、うつ病や適応障害にかかってしまうリスクが非常に高くなります。
あなたの職場にも、「なぜかあの上司の下にはうつ病で休職する人が多い」「退職してしまう人が多い」という上司はいませんか。
今回は、部下キラー(クラッシャー)上司の特徴と、対策法について解説します。
部下の自尊心をつぶす上司
私たちは、仕事をする上で、「自分には力がある、きちんと働いている、仕事や職場の役に立っている」という気持ちがあるからこそ頑張ることができます。
これが、自尊心です。
しかし、「クラッシャー上司」といわれる部下キラーの上司は、部下のささやかなな自尊心を平気で踏みにじるのです。
部下キラーの標的となってしまった人は、理不尽な職場での扱いを受けて、心身ともにバランスを崩してしまいます。
他の社員に比べてスキルの習得が遅れてしまうばかりではなく、毎日のように受ける言葉の暴力や、実際の暴力に耐えきれずに退職を余儀なくされたり、うつ病や適応障害になったりする人もいます。
部下キラーの特徴
部下の自尊心を奪い、知らず知らずのうちに部下をつぶしてしまう上司には、以下の特徴があります。
- 予期していないときに、急にカッとなり、ささいなことで怒鳴る
- お前の仕事ぶりは子供だ。給料泥棒など部下のメンツを潰すような言葉を人前で言う
- 自分の立場を有利にするために部下を利用する
- 自分の失敗を、部下になすりつける
- 過去の失敗を何度も掘り起こし、ネチネチとした注意をしつこく繰り返す
- 好きな人と嫌いな部下をはっきりと分けて、嫌いな部下をいじめる
- 絶対に達成できないノルマを与える
- 容姿をけなす、親や家族を批判する
- あからさまに無視したり、差別をしたりする
自分の行動が良いと思っている
部下キラーとなっている上司は、自分の能力を過信していることがあります。
そして、自分のように動けない部下に対して、「指導をしてやっている」という意識でいます。
自分の行動が完全に良いことだと思っているのです。
部下がどのような気持ちでいるのか、自尊心を傷つけられるとどのような感情になるのかといったことへの配慮ができません。
職人気質で、完璧主義の上司も
また、意地悪をするつもりがなくても、結果的にクラッシャー上司になってしまう上司もいます。
それは、職人気質で完璧主義の上司です。
仕事の完成度を高めたいが為に、必要以上に部下に厳しく当たります。
さらに優秀であるため、部下に対しても高いレベルでの仕事を要求しすぎてしまいます。
妥協することができないので、部下が潰れて働けなくなるまで、追い詰めてしまうのです。
本人は指導に熱心であり、真剣に部下を成長させようとしているので、周りから見ると良い上司にうつることもあります。
ただし結果的に、部下には大変な負担となっていて、場合によっては、部下が心を病んでしまうことになるのです。
周囲の人が助け舟が出せない
また、こういった上司の標的になっている人がいると、職場の周りの人も「気の毒だな」と同情はします。
しかし、自分にも害が及ぶのを怖がり、かばうことができません。
もし、味方になったりすれば、今度は自分がクラッシャー上司の標的になってしまうかもしれないからです。
そのため、標的となった人は、周りからの援助も得られず、職場内で孤立していきやすくなります。
部下キラー上司が原因のうつ病を防ぐ対策法
このような部下キラーの上司とは、共にいるだけでうつ病や適応障害になる可能性が高くなります。
もし、あなたの身近にこれらの上司がいるということに気づいたら、意図的に以下のようなことを気を付けて、心の病になるのを防ぐようにしてください。
とにかく自尊心を守る
上司は、自尊心を攻撃してきます。
そのため、無防備にしていると、あなたの自尊心がどんどん傷つけられ、次第に気分が抑うつ傾向になっていきます。
それを踏まえて、とにかく自尊心を守るように注意してください。
1つの方法は、「自分は悪くない」と考えることです。
うつ病になりやすい性格の人は自信がなく、自分が劣っている自分が悪いと考える傾向があります。
部下キラーの上司と一緒にいると、どうしても「自分が悪い、自分の能力が低いから指導されるのだ」と感じてしまいやすいものです。
上司側も、ストレートに「お前のために指導してやっている」などという言い方をしてくるはずです。
しかしここで、思い切って「自分は悪くない」と思うようにしましょう。
この上司の言っていることを鵜呑みにせずに、上司は本当に正しいのか、自分が本当に悪かったのか、冷静に考えるようにしてください。
うつ病に罹りやすい人の思考傾向に「自罰思考」というものがあります。
自分を責め、罰する思考です。
ただでさえ部下キラーの上司は、部下に自罰思考を植え付けようとしてきます。それに対して防御しないままでいれば、簡単にうつ病になりやすい思考回路に巻き込まれてしまいます。
まずは自分が悪いという思考をやめるように頑張ってください。
「イメージの保護膜」を作る
上司と接しているときは、意図的に、自分は「保護膜で守られている」とイメージしましょう。
この保護膜は、誰にも見えませんが、上司からの攻撃を、100%防いでくれるものとしてイメージしてください。
実際に存在するものではありませんが、仕事中に上司と接しなければいけない時に、この「保護膜」をかぶるようなイメージをして、上司からの攻撃を防ぐようにしましょう。
馬鹿らしいかもしれませんが、心理的に効果がある方法です。
客観的立場の人に相談する
会社に、上司を知っていて、かつあなたのことも知っている人がいれば、その人に一度相談してみましょう。
本当にその上司は、「部下キラー」なのか、単に指導が熱心な上司なのか見極めることに役に立ちます。
また、会社側に、従業員相談室やパワハラ相談室等があり、きちんと機能している様子であれば、相談してみましょう。
その際は、自分が言われたことやされたことを、記録に残しておいて、その記録をもとに相談するようにして下さい。
労務管理をきちんとした会社であれば、このように部下を潰す上司がいるとわかれば、人材育成の研修などを受講させたり、管理職としての自覚を持たせるためのの指導をしてくれる場合があります。
あるいは、部下をつけずに、1人で仕事をしてもらうような配置転換をしてくれる場合もあります。
同情してくれる同僚を持つ
前に述べたように部下キラーの上司には、周りの人が助け舟を出すことができません。
自分にお鉢が回ってくると困るからです。
しかし影で、あなたのことを同情している同僚は必ずいるはずです。そのような人を1人でもいいので見つけてください。
愚痴を言い合える関係であれば、上司のことを相談しても良いでしょう。
とにかく、職場であなたは一人ではなく、自分のことを同情してくれる、わかってくれる人がいるのだ、と感じることが大事です。
睡眠時間は必ず確保する
うつ病になる人の多くは、睡眠のバランスが崩れたり、食事の習慣が崩れたりしています。
仕事で忙しく上司との関係が悪いと、なかなか自分の基本的生活まででは気が回らなくなるからです。
そのため、「会社が辛い」「上司との関係で悩んでいる」というときこそ、睡眠と食事については必ずバランスよくとることを心がけてください。
気分を安定させ、ストレスを減らし、うつ病を予防するためには、生活リズムがとても大事なのです。
できれば早寝早起きを心がけてください。きちんと朝起きる時間を決めると、体内時計が働きます。
休日などは、疲れているため朝寝坊したいと思いますが、いつもと同じ時間に一旦起きてから、二度寝をしてください。
その方が、昼過ぎまで眠ってしまうよりも、「睡眠覚醒リズム」を守ることができます。
軽い運動とリラクゼーション
うつ病にならないために、軽い運動を生活に取り入れることもとても大事です。
ハードでなくて構いません。昼休みに上司から離れて散歩するとか、通勤のときに一駅手前で降りて歩くなどの方法を使いましょう。
週3回位、1回30分程度を目安に、体を動かすようにしましょう。
また1日の最後には、自分に合うリラクゼーションの方法を見つけてください。
呼吸法や音楽を聴くこと、アロマテラピーや簡単なヨガ、ストレッチ、お風呂でゆっくりくつろぐ、など、自分なりにリラックスできる方法を見つけてください。
その時は、上司のことを考えないようにしましょう。意図的に、3分ほど心を無心にして、何も考えない時間を作るのもおすすめです。
「他には行き場所がない」と思わないこと
上司との関係が悪くなると、「自分はダメだ」とか「自分などどこにも居場所がない」などと、思い込むことがあります。
そうならないように、ここだけが自分の居場所ではない、探せばいくらでも働く場所も可能性もあると考えるようにしてください。
部下キラーの上司は、「君は職場のゴミだ」とか、「お前など、他に勤まる仕事などない、この会社だからやっていけるんだ」などと言ってくることもあるでしょう。
しかし、本当にそうでしょうか?
もちろんそんな事はありません。あなたに適した会社は他にもあるかもしれませんし、その上司との関係がいよいよ悪くなったら、どこへでも自由に仕事を選ぶことができるのです。
そのため水面下で転職活動をしたり、求人情報を見て調べたりして、他にも居場所があるのだということを実感するようにしましょう。
会社の人に言わなければ、あなたが転職をしようとしていることなどわかりません。
部下キラーとなっている人間を、いつまでも管理職に据え付けている会社のために、心身を壊してまで尽くす必要はありません。
今、上司との関係に悩んでいるのであれば、自分の働き方や心と身体を最優先にして、一番良い方法を考えるべきだと思います。