ブラック企業の特徴と定義

ブラック企業

「ブラック企業」という言葉がインターネットを中心に広がってきました。

誰もが一度は聞いたことがあると思います。自分が働いている会社がブラック企業ではないかと考えたことがある人もいるかもしれません。

ブラック企業とは公式な言葉ではないため、どのような会社がブラック企業であるかといった明確な定義があるわけではありません。

「労働環境が悪く社員を酷使する会社」「違法行為で営業活動をしている会社」などが漠然とした特徴のようですが、ブラック企業に対するイメージは人それぞれ異なるようです。

ここでは、ブラック企業だと指摘される会社の特徴について解説いたします。

労働環境が劣悪

ブラック企業と言われる会社は、働く人の労働環境が劣悪であることが一番の特徴として挙げられます。

労働環境とは、一日の労働時間の長さ、時間外労働(残業)の長さ、それに対する賃金額などです。

それだけではなく、働く人が心身共に健康でいられる配慮がされているかといったことも労働環境にあたります。

ブラック企業と言われる会社は、下記のような労働環境であることが多いようです。

ただし、これらの特徴をすべて持つ会社もあれば、部分的にあてはまるという企業もあります。複合度が高ければ高いほど、労働環境の劣悪度も上がるといえます。

労働時間が長く休日が少ない

ブラック企業の特徴として、労働時間が長く、休日もない、もしくは休みにくい環境が挙げられます。

名目上の有給休暇などがあっても、実際に取れる人は非常に少ないです。

さらに、サービス残業が日常的に行われています。時間内に終わることができなかった仕事は、家に持って帰ってやるような暗黙の慣習がある場合もあります。

厚生労働省は、残業時間が月に80時間を超えるあたりから、健康障害リスクが高まるとして「過労死ライン」と呼び、警告しています。

しかしブラック企業では、残業時間が月に100時間を超すところも多く見られます

賃金が低い、残業代が出ない、現物支給

労働時間に見合った賃金がもらえないとか、いくら残業をしても、残業代が出ないこともあります。

残業を残業として認識していない会社もあります。タイムカードを改ざんして残業がなかったことにするような悪質な会社もあります。

固定給と実績給とを分けた体系にしてあり、固定給を異常に低く設定し、ノルマを達成したときだけ「実績給」を支払うというスタイルの会社もあります。

また、自社の商品(教材、チケット、食品など)を賃金・給与扱いにする「現物支給」をしている会社もあります。労働基準法で賃金は必ず現金で支払うことが定められていますから、完全に法令違反の行為です。

大量採用・大量離職

また、定期的に大量に人を採用しますが、すぐに多くの人が離職してしまうので、常に人手不足であるというケースが多く見られます。

人手不足であるために、在職中の社員に割り当てられる仕事量が多く、その負担に耐えきれず、離職につながってしまうのです。

社員は単なる労働力であり、短期間に使い捨てる消耗品と考えているため、最初から大量離職することを前提で大量採用している会社もあります。

退職の強要、解雇

ブラック企業では、会社側が「使えない」と判断した社員は、簡単に解雇されてしまいます。派遣社員やアルバイトなどの非正規の社員にとどまらず、正社員であっても簡単に辞めさせようとします。

労働基準法により、従業員の解雇には一定の要件が必要になるため、執拗にいじめて精神的に衰弱させ、「自己都合退職」させるように仕向けることもあります。

辞めたがる社員を辞めさせない

一方、社員本人が会社を辞めたがっていても、辞めさせないこともあります。

民法では、労働者が会社を辞めたい場合、退職する2週間前に会社側に申し出れば良いことになっています。

しかしこういった法令の存在を無視し、「入社時の契約書では、退職願は半年前に提出しなければ受け入れない」あるいは「自己都合退職の場合は、研修損害賠償費として○○円を支払わななければならない」などと言って辞めさせてくれません。

本来このような契約は法令違反であるため守る必要はありません。しかし「契約書」「社内規則」などの言葉を使い、巧みに脅して退職を思いとどまらせます

精神的な負担が強い

ブラック企業は、その会社にいる社員に精神的な負担を強く感じさせます

ブラック企業はその運営体制の悪質さから、人間関係のひずみが大きく、労務管理もしっかりなされていないため、執拗なハラスメント(いやがらせ)が起きやすいのです。

労働環境の劣悪さ以上に、精神的な負担は社員を疲弊させます。ひどくなると、うつ病などの精神疾患を患ったり、自殺に追い込まれたりといったことが起こります。

以下に、ブラック企業で生じやすい精神的負担を挙げます。

モラハラ、パワハラ

ブラック企業は、「役員」「管理職」「ヒラ社員」という上下組織をはっきりさせて、管理的な社員統制をしている会社がとても多いです。

また、営業などの成績が良い社員とそうでない職員を区分します。そのように「上の人」「下の人を」を明確に分けて管理すると、上の人は下の人に何をしてもいいという雰囲気を作ってしまいます。

モラハラ(モラルハラスメント=精神的ないやがらせ)やパワハラは、そういった過度の管理的社員統制から生まれます。

業務成績が良い社員は悪い社員に雑用を言いつけても良いとか、管理職はヒラ社員を殴ってもいい、上司は部下にセクハラをしても良い、といった間違った価値観ですら正当化されてしまいます。

過度な精神修行、洗脳

ブラック企業は、社員に過度な精神修行を課したり、洗脳といえるような圧力をかけたりすることがあります。

社員がまともな権利意識を持ち、人として当たり前の自尊感情があると、管理がしにくく不都合だからです。

経営者や管理職の命令が違法であろうと、従順に従う人材に作りかえないと成り立たない組織体制であるため、スパルタ研修や精神修行といったことが頻繁に行われます。

例えば、一日中研修所にこもって経営理念を復唱させたり、山登りや穴掘りなどを強要したりして、心身を疲弊させる、などです。

たいてはその前後に、社員同士でお互いの悪いところを指摘させるなど「本人の自尊心を奪うような体験」をさせられます。

こういった精神修行の多くは、本人の体力気力をむりやり奪ったうえで、正しい判断ができなくなるくらい自己否定感情を植え付けます。

そうすることによって、自社に都合の良い方向へ「洗脳」しやすくなるからです。

反社会的な活動・行為

自社が雇う社員を大事にしないという要素以外にも、ブラック企業であると定義するものがあります。

それはその会社の営業スタイルなどが反社会的であるかどうかです。

扱っている商品やサービスが、顧客をだましたり損をさせたりすることで成り立っているような会社であれば、会社の存在そのものが「黒い」ものであり、当然その会社の現場で働く社員は多大なストレスを受けることになります。

悪徳商法、詐欺商法

例えば、全く効果のない健康食品を製造し、「効果がある」と謳って販売するような、詐欺商法を行う会社です。

あるいは住宅に訪問し、無料で床下をチェックすると言ってだまし、結局は「シロアリ駆除をしないと家が倒壊する」などと脅し駆除費を搾取するといったものがあります。

点検商法というものですが、そのほかにも「必ず儲かる」と投資を進める利殖商法や、「資格があれば有利」と持ち掛け知識の乏しい人に教材を売りつける資格商法など、さまざまな悪徳商法があります。

これらの共通点は、顧客をだまし何らかの損害を与え、その損害が会社の利益になるというビジネスモデルであることです。

こういった会社の社員は、自社の違法性を知りながら、顧客をだますことが主な仕事になります。

売り上げを上げても、会社の利益にはなるかもしれませんが、顧客には損をさせることになり、それを知りながら活動するのは大変なストレスになります。

当然、顧客からの苦情なども多いです。顧客に喜ばれず、悪いと分かって行うのは、真面目な人には特に辛い仕事だと言えます。

「自爆営業」の強要

自社の社員に、ノルマといつわって自腹を切って商品を買わせる「自爆営業」をさせる会社があります。

あるエステサロンは、顧客獲得ノルマを達成できない社員には、強制的に自費で30万円分のチケットを購入させ、本人の友人や家族に売ることによって利益をあげるという手法をとっています。

このような社員に自社商品を買わせる行為は法令違反ですが、弱い立場の社員は断ることができません

言葉巧みに「まずあなたがチケットを買って売ればいいのだから、特に悪いことではない」などと説得されると、知識のない社員は違法行為とは知らずに素直に従ってしまう場合もあります。

このように、実際にはこれまで見てきた特徴を一部分持つ「グレーに近い」ブラック企業から、すべてが当てはまるような「真っ黒」な企業もあります。

そのため定義するのは難しいのですが、「社員を劣悪な労働環境に置き、働きに見合う賃金を払わず、精神的苦痛を与える反社会的な要素を持つ会社」がブラック企業の定義と言えるでしょう。

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