転職面接や履歴書の作成時に必ず考えておかなければならないのが「前職の退職理由」「今の会社を辞める理由」です。
原則として、ポジティブな退職理由にすること、嘘をつかないこと(つくにしてもばれないようにすること)に気を付けてまとめておく必要があります。
今回は、状況別に退職理由の書き方や述べ方を例文で解説します。
退職理由の書き方・述べ方の基本
会社を辞める本当の理由は、実際のところ、たいていがネガティブなものです。人間関係が良くない、給料が安い、労働時間が長い、上司が嫌だ……。
採用側の会社の面接官も、そのことは十分わかっているのです。
しかし、面接の場で本音をストレートに話してはいけません。
それは、マナー違反であることも理由の一つですが、「本音を堂々とあけすけに主張する」という、その空気の読めなさが、ビジネスの現場では使い物にならないと判断されてしまうからです。
そのため、退職理由の書き方や述べ方は
- ネガティブな理由であっても、ポジティブに転換する
- 前の会社の不満は伏せる
を基本に組み立てるようにしてください。
本当の退職理由別のNG例文と解説
退職理由は、ネガティブよりポジティブに、そして前の会社での不満は伝えないということは、多くの応募者は理解しています。
しかし、その本質がわかっていないと、表現は別であっても結局は前の会社の批判と受け止められてしまうような内容になってしまうことがあります。
以下の例文と共に見ていきましょう。
「やりがいがない」が本当の退職理由
前職を退職した理由が「やりがいがなかった」「やりたいことがやれない職場だった」という人の退職理由について考えてみましょう。
NG退職理由)
前の職場では、4年勤務いたしました。◎◎業務に携わってきましたが、興味のある〇〇コンサルティング業務を担当することはできませんでした。何度も機会をもらえるよう働きかけましたが、残念ながら叶いませんでした。
〇〇コンサルティング業務を行うことができる新たな環境で自分を試し、さらなるキャリアアップを図りたいと思い、前職を退職しました。
興味のある業務を与えられないと、不満を抱く、わがままな人材にうつる可能性があります。
与えられた仕事への責任感ややりがいを自分で作り出す姿勢が見えてきません。
また、前の職場での自分の処遇は不当であるというニュアンスで伝わってしまいます。
OK退職理由)
前職では、◎◎業務を4年間行ってまいりました。実績が認められ、◎◎業務チームリーダーを任されておりました。
そのスキルをベースに、興味のある〇〇コンサルティング分野のキャリアを築くことを目標にしておりました。
ただ担当変更は前職では前例がなく、実質的に難しいと判断し、やむなく転職を決意しました。
前職での仕事の姿勢を語って、与えられた役割への責任感を示しています。
目標達成することが前の職場ではできないために転職の決意に至ったことが伝わります。
やりがいがない、やりたいことがやれない職場である、というのが本当の退職理由の人は多いと思います。
ついつい「前の職場ではやりたいことがやれなかった、だから転職する」とストレートに書いてしまいがちです。
応募者側は十分に前向きに語っているつもりですが、採用側の面接官は「やりがいは会社から与えられるものではなく、自分で見つけるものだ」と、シビアに判断します。
「前職では与えられた仕事は自分で役割意識を持ちやりがいを感じて頑張ってきた。しかし、前職場では不可能な目標達成のために、前向きな気持ちで応募先で能力を発揮したい」という流れでまとめましょう。
違う仕事をしたい(仕事に飽きた)のが本当の退職理由
前職を辞めた理由が違う仕事をしたいとか仕事に飽きた人は、退職理由をどのように述べたらよいでしょうか。
NG退職理由 例文)
就職活動中から企画職を強く希望しておりましたが入社後配属された部署が営業でした。
1年半もの間じっくり自分の適性を考えましたが、やはり当初から目標にしていた企画職への夢を捨てがたいと考えました。そのため、転職を決意しました。
「不本意ながら営業に配属された」という受け身な意識で、営業職として何を経験したかも不明です。
このような形では、前向きな転職というよりも「夢を追っている人」に感じられてしまいます。
会社は目標や夢を実現させてもらえる場所ではない、とバッサリ斬る面接官もいます。
自己実現のために、何度も転職を繰り返す人はこのような退職理由を書くことが多いので、警戒されやすいといえます。
OK退職理由 例文)
新卒入社の会社に営業職として配属されました。
営業の辛さ、面白さなど基本を教えていただき、大変貴重な1年半を過ごしました。
上司が企画職を経験している人であり、商品開発や営業企画、リサーチの重要性についても指導してくださいました。
それを通じて、学生時代から目標にしていた企画職に再度チャレンジしたく異動を申請しましたが勤務地や人員の関係で難しく、前職では不可能であると判断しました。
営業職としての現場経験をベースに、リサーチから広報まで幅広く携わる業務にて貢献したいと考え前職を退職しました。
違う仕事へ転職しようとしている人に対して、採用側の面接官は「仕事に飽きやすく、また同じようにつまらなくなると、夢や目標を追いかけるような形で辞めてしまうかもしれない」と不安を持っています。
そのため、上記のように、配属された部署でも、自分の役割意識を持って意欲的に仕事をこなしてきたことが伝えましょう。
また、前職での経験をベースに力を伸ばし、採用側の会社のメリットになる人材であることをアピールしてください。
成長できない、能力が活かせないのが本当の退職理由
仕事の内容が単調であったり、配属されている仕事に将来性がなかったりして、このままでは良くないと感じてキャリアアップのために転職を考えている人がいると思います。
このような人も、気をつけないと、書き方によっては前職で不満があったのではないかと受け止められることがあります。
NG退職理由 例文)
人事労務部門にて4年業務を行ってきました。そのほとんどが一般総務業で、大半が各部署との調整や雑務でした。
総務職の割合が多いため、このままでは当初から目標にしていました人事職としての経験が身に付かないと考え、退職いたしました。
今後は、新卒採用、人事制度構築、社員研修に携わりたいと考え、転職を決意し、貴社に応募いたしました。
前職で得たものが、単なる調整や雑務であるという「前職への不満」が言葉に表れてしまっています。
今までの業務を無駄なこと、取るに足らないものと捉えているような様子が見られると、採用側の面接官は「重要なポストに就かせなければ、小さい仕事は雑務として軽んじる人ではないか」と思われてしまいます。
OK退職理由 例文)
前職では、人事職の経験に加え、一般総務職も併せて行ってきました。
新卒採用や人事制度の構築、社員研修などでは、サポート役に回り、各部署の要望を調整したり、現場の意見を研修に反映させたりといったことに尽力しました。
その中で「人を採用し、育てる」という人事業務に特にやりがいを感じ、その分野でより一層キャリアを築き上げていきたいと考え、人事職を極めることができる会社への転職を決意しました。
このように、前職で与えられた仕事を尽力したこと、そこで得た気づきややりがいを深めたいというポジティブな退職理由に結びつけましょう。
前職で何を学んだか、どうして転職をしたいと考えたのか、転職してどのようになりたいのかを示し、「前職で得たものを土台にして、キャリアアップしたいという主張」にまとめることが大事です。
労働環境が良くないのが本当の退職理由
労働時間が不規則であったり、残業が多すぎたりという理由で退職を考えた人は、この理由をストレートに伝えてしまうとネガティブな印象を与えるので良くありません。
このあたりは、多くの応募者がわかっているようで、直接的に「残業が多いので辞めました」と書いてくる人は激減しました。
しかし、未だに以下のような退職理由を書いてくる人も見られます。
NG退職理由 例文)
前職では離職者が多く、常に人手不足でした。
残業や休日出勤も多かったです。
社員の中には、過重労働で病気になる人もいて、将来が不安になりました。
さらに、労働環境の割に待遇も低いため、このまま勤続することができないと考え、退職しました。
前職がいかに労働環境が悪かったのかを伝えたい気持ちはわかりますが、それだけを退職理由にはしないほうが良いでしょう。
ただ、残業が多いことが本当の理由であれば、それとなく「前職はとても残業が多く、辞めるのも仕方がなかった」ということが伝わった方が、信ぴょう性が増すことがあります。
本当の退職理由が、労働環境の悪さであるのに、それを隠しとおして退職理由を述べても、「そんなことで辞めるの?」と思われてしまうような弱い理由しか語れません。
そのため、残業などの労働環境が悪いことも一因であることをそれとなく退職理由に混ぜた方が、相手の理解と共感を得られます。
例えば以下のような形です。
OK退職理由 例文)
前職は住宅販売の業務についておりました。お客様に直接接して様々なご提案ができるため、大変やりがいを感じておりました。
しかし、労働時間がかなり長く月平均100時間の残業がありました。
4年間の勤務では1日も欠勤なく勤務しておりますが、今後のことを考え、勤務時間と生活のバランスの取れた働き方を望むようになりました。
販売業の経験とスキルを活かしながら長期的にキャリア継続したいと思い転職を決意致しました。
労働環境が良くないことを退職の理由にすることは、別に悪いことではありません。
率直に転職したい理由を語った方が、誠実であると判断されることもあります。
嘘をついて全く別の退職理由にするより良いでしょう。
やむを得ない事情があり、逃げるように楽な道を選ぼうとはしていないということが伝わるように、具体的に数字を交えて実態を話すことです。
さらに、勤務成績や体調には問題がないこと、まともな労働環境であれば、長期的に働くことができることを主張しましょう。
給料が低い、評価されないのが本当の退職理由
給料が低いとか、努力に見合った評価をされず、昇給しないといった理由で退職を検討している人もいるでしょう。
より良い給与を求めて転職する人は多いですし、努力を正当に評価してほしいというのは、働く人の当然の希望です。
そのため、退職理由にしてもかまいませんが、伝え方に気を付ける必要があるでしょう。
NG退職理由 例文)
前職では〇〇職を4年従事して参りました。
仕事にはやりがいを感じておりましたが、将来性の乏しい事業であったため、同世代の人に比べて賃金水準が低く、昇給も見込めませんでした。
結婚も控えておりましたので、この機に転職をしようと決意いたしました。
退職理由のほとんどを、事業の将来性が乏しいことや待遇が良くないことで占められていると、「待遇だけが仕事選びの基準なのかな?」と思われてしまいます。
より良い待遇を求めるというのは退職理由のきっかけにとどめておいた方が良いでしょう。
例えば以下のような形です。
OK退職理由 例文)
長年〇〇業に携わり、人間関係にも恵まれやりがいを感じて勤務しておりました。
しかし事業拠点を海外に移したため国内事業は縮小傾向にあり、それに伴い昇給がストップしてしまいました。
今後、同世代の賃金水準より低いまま勤続するか、とても悩みましたが、結婚を控えていることもあり、やむなく転職を決意しました。
〇〇業で培ったスキルと経験を活かせる企業にて、長期的に貢献したいと考えております。
給与面や評価の有無は、あくまで退職理由のきっかけであることを示しましょう。
将来を考えた上で、かつ「長期勤務したいから」「キャリアを継続したいから」という前向きな理由に変換するようにしてください。
転勤が嫌だったのが本当の退職理由
転勤を命じられたために、転勤の無い会社に転職しようと考えている人もいると思います。
この退職理由も、基本的にそれほど悪印象を与えるものでもありませんから、正直に述べて良いものです。
しかし伝え方には注意が必要です。前述の「給与面や待遇面」と同じように、退職理由のほとんどを「転勤はできないから」で占められていると、結局のところ勤務地だけで仕事を選ぶ人なのかと思われてしまいます。
NG退職理由 例文)
昨年9月に九州地方への転勤を命じられました。
転勤はないという条件で入社した会社であったのに、突然の業務命令でした。
また九州などの遠方であると単身赴任になり、家族と離れての生活にはどうしても対応することができず、やむなく退職を決意いたしました。長男ということもあり、地元での勤務を強く希望し、貴社に応募致しました
退職理由として、転勤を命じられたことや家族と離れたくないことは事実であるかもしれません。
しかし相手の会社にはあまり関係のないことであり、詳しく述べる必要はありません。
また「転勤がないことが条件だったのに……」という会社への不満がにじみ出てしまっています。
事情を理解してほしいという気持ちはわかりますが、前職への不満はご法度であることを再度意識しましょう。
OK退職理由 例文)
突然に九州方面に転勤の辞令が下りました。単身赴任を余儀なくされるため、転勤辞令をきっかけに、働き方や家族とのありかたを模索しました。
私は長男でもありますので、地元にて、長期間腰を据えて地域と地元企業に貢献したいと考えるようになり、退職に至りました。
前職では〇〇業に真剣に携わり、〇〇の資格を取得しチームリーダーとしての経験もあります。
経験を活かせ、かつ腰を据えて貢献したいため、地元にて活躍している貴社を第一志望と致しております。
このように、転勤辞令が下りたことなどは「きっかけ」としておくのが無難です。
会社側の最大の関心ごとは応募者の仕事への意欲や能力であり、会社側にメリットがあるか否かです。
転勤を命じられて転職する人にはそれほど悪印象はありませんから、伝え方を工夫することで納得してもらえる退職理由になるでしょう。
体調を壊してしまったのが本当の退職理由
体調を壊して退職した人は、そのことを隠して転職活動をするか、事実として伝えながらも「すでに完治した」と主張するかどちらかだと思います。
特に、今はうつ病や適応障害といったメンタル疾患で退職した経緯を持つ人は企業から敬遠される傾向があるため、注意が必要です。
ストレートに「うつ病にかかったため、退職しました」と言ってしまうと、高い確率で不採用になってしまうからです。
そのため、うつ病や適応障害などで退職している人は、あまり本当のことを述べないほうが良いでしょう。
一方、完治が可能な病気やケガで一旦退職していて、すでに治っているのであれば、体調不良が本当の退職理由であれば、正直に答えてもかまいません。
しかし、会社の採用担当者が心配するのは「本当に完治しているのか、業務に支障がないか」ということです。
この不安を払拭できない退職理由であると、不採用になってしまいます。
NG退職理由 例文)
前職では月100時間の過重労働をしていたため、一時期心疾患にて療養しました。
2ヵ月入院し、現在も通院中です。
身体に無理がかからない仕事を探しており、〇〇の資格を活かして貴社にて貢献できればと考えております。
たしかに、病気にかかったことでやむなく前職を退職せざるを得なかったということは伝わります。退職理由として不自然ではありません。
しかし、新たに採用を検討している会社からすると、業務に支障がありそうな弱い人材にうつってしまうため、不利になるでしょう。
OK退職理由 例文)
前職では過重労働ぎみで、そのためか心疾患に罹り2ヵ月療養しました。
結果的に退職となりましたが、これを機に身体を労り、ストレス対応ができる自分へと成長しました。
服薬のための通院は必要ですが業務にはまったく支障がない状態に回復しております。
前職では過重労働以外では不満もなくやりがいも感じていました。また療養中〇〇の資格も取得し、今まで以上にキャリアを活かせる貴社にて尽力したいと考えております。
体調を壊して前職を退職している人は、「業務に支障がないほどに回復していること」と、「体調を壊した原因を理解していて、同じことにならないようにケアができていること」を重点的に盛り込むようにしてください。
採用側の会社は体調に問題がある人を敬遠するのは、入社後に再発して、早期退職したり休職したりすることが怖いからです。
そのため、そういった心配はないことを退職理由にしっかり混ぜておくと、安心してもらえることになります。
人間関係や上司とのトラブルは伏せる
退職理由が人間関係にあったり、上司と合わなかったりといった事情がある人は、退職理由ではそのことは触れないようにしましょう。
多くの採用面接官は人間関係を理由に辞めた人を採用すると「自社でも同じように人間関係でトラブルを起こすかもしれない」と不安になるからです。
実際、退職の理由として一番多いのが「人間関係や上司とのトラブル」であることは、面接官もわかっているのです。
しかし、履歴書の段階や面接では、退職理由を人間関係の問題とすることはタブーとされています。
暗黙の了解のようなものですから、間違っても「上司とうまくいかず」「職場でいじめられたため」とは書かないように気を付けましょう。
退職理由は履歴書に書く段階からしっかり計画的に書いておきましょう。
退職理由を記載しなくてよいフォーマットの履歴書を使えば、この欄には書かなくて済むかもしれません。しかし、そのときはそれで済みますが、面接では確実に聞かれます。
退職理由については、いつ聞かれても整合性を持って伝えることができるように、万全の準備をしておきましょう。