職場が原因の心身不調「職場不適応症・うつ病・パニック障害」

「頑張っているつもりなのに、どうしても朝起きられず職場に向かえない」「仕事のことを考えるだけで、吐き気がする」「通勤中、電車内でパニックになり死にそうな気分になった」など、職場に関係するストレスによって、心と身体に不調が起こる人が増えています。

症状が深刻になると、生活に支障をきたすようになることがあります。このように職場のストレスを原因とする心身不調を「職場不適応症」といいます。

今回は、職場不適応症の症状について解説します。

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職場での「適応障害」=職場不適応症

ある特定の環境や、日常生活、人間関係に適応できず、心や身体の調子が悪くなる精神疾患があります。これを精神医学では「適応障害」と呼んでいます。

適応障害は、「ストレスとなる状況や出来事」が比較的はっきりしているのが特徴です。

そのため、ストレスである原因から離れると症状は次第に改善します。しかし、ストレスの要因から離れることができないままだと、症状は悪化したり慢性化したりします。

この適応障害が、仕事や職場の人間関係をきっかけとして起こり、生活に支障をきたすほどの精神的不調になってしまった状態を、「職場不適応症」といいます

職場不適応症の症状

職場不適応症の症状は、適応障害とほぼ同じものです。例えば以下のような症状がよくみられます。

・集中力が続かず、ミスが増える

・憂うつな気持ちが2週間以上続く

・会社のことを考えるだけで、吐き気がしたり息苦しくなったりする

・夜なかなか寝付けない

・一旦眠ると、起きられない

・苦手な上司の顔を見ると動悸がはげしくなる

・些細なことでイライラしたり、カッとなったりして誰かに八つ当たりしたくなる

・目に見えて仕事の効率が落ちている

・仕事のことを考えると、わけもなく泣けてくる

・勤務中や通勤中に、パニック発作を起こして「死ぬかもしれない」と感じた

・勤務中や通勤中に、過呼吸を起こした

・重要な仕事の前には緊張で身体が震えたり、下痢したり吐いたりする

・休日は何もする気力がわかずぼーっとしている

・以前は好きだった趣味などに一切興味がなくなった

上記のような症状が、主に職場か通勤中に見られるのが、職場不適応症の特徴です。

抑うつ(憂うつで暗い気分になること)、イライラ、極度の緊張、不安、不眠、頭痛、めまい、過呼吸、パニック、集中力の低下などの精神的な症状から発症し、次第に身体症状に発展することがあります。

職場不適応症は、職場でストレスを受ければすぐに発症するとは限りません。入社してすぐに発症する人もいれば、何年もストレスにさらされた後にじわじわと症状が出る人もいます

今までは普通に適応できていると思っていた職場であっても、実は強いストレスを数年も抱え続けていたために、ある日突然重い症状として発現するケースもあります。

そのような人は、精神不調の原因が職場にあるとは気づかないため、対応が遅れて症状が慢性化していきます。

ストレス要因をはっきりさせて、それから離れないと症状は軽くならないのが職場不適応症の特徴です。そのため、原因が職場にあることを気づかないままの人は、一進一退を繰り返し、症状に長く苦しめられるのです。

職場不適応症の原因1 人間関係の問題

職場不適応症の原因となるストレス要因は、大きく分けて3種類あります。人間関係の問題と、職務適性の不一致、過重労働です。

まずは人間関係の問題では、以下のような原因が挙げられます。

・パワハラをする上司がいる

・人間関係の悪い労働環境で働いている(職場いじめなどがある)

・顧客や取引先にひどい人がいる

・上司と相性が合わない

・部署内で孤立してしまった(無視される、仕事を与えられない、飲み会などに誘われない)

・嫌なことを言ってくる社員がいて、プライドが傷つけられる

このように、人間関係によるストレスにはさまざまなものがあります。

「職場」という狭く逃げることができない空間の中に、プライドを傷つける上司や相性が合わない人がいるというのは多大なストレスです。

さらに職場で過ごす時間は、通常1日に8時間~10時間と長時間ですから、さらに心身に悪影響を及ぼします。

職場不適応症の原因2 職務適性の不一致

職務適性の不一致とは、以下のような状況が当てはまります。

・仕事内容が、自分の適性に合っていない

・仕事上で重大なミスをして、未だ心理的にひきずっている

・能力に見合わない過大な要求をされている

・能力以下の、やりがいの無い仕事しか任されない

・仕事で認められたいが、なかなか認められず、強い欲求不満の状態にある

行っている仕事と、本人の能力や適性が合っていないと、職場でなかなか認められることがなく、ミスもしやすくなります。

こういった職務適性の不一致から発症する職場不適応症は、新卒の新入社員が一番多いようです。

しかしなかには、配置転換などで今までと違う職種を担当することになり、そこで本人の適性と合わないために発症することもあります

例えば、現場で好成績を上げ続けてきた営業パーソンが、管理職としてその部門の統括を任されることがあります。

管理職になったものの、部下の管理や統括職に適性が乏しいため「できない社員」になってしまい、職場不適応症を発症した、というようなことがあります。

職場不適応症の原因3 過重労働

過重労働とは、以下のようなものが挙げられます。

・通勤に2時間以上の時間がかかり疲弊している

・残業時間が月80時間を超え、心身共に疲れている

・忙しいものの、達成感がなく、何のためにやっているかわからない仕事をしている

・心理的負担の強い業務(クレーム対応など)

・仕事が忙しすぎて趣味や家庭生活を楽しむ余裕がない

このように過重労働(労働時間が長い、忙しい、心理的負担が強い)を長期間続けていると、心身が疲れてきます。

多少のストレスは何ともなかった人であっても、こういった過重労働で消耗させられると、心や身体のどこかに不調が現れてきます。

まだ、本人が「やりがい」を持って楽しんでやっている仕事であれば、肉体の疲れはそれほどダメージを与えません。

しかし、過重労働にプラスして、やりがいがないとかクレーム対応が多いなど、心理的な不満や苦しさが積み重なると、職場不適応症の発症につながりやすくなります

職場不適応症の代表的症状「うつ病」

職場不適応症の代表的症状に、「うつ病」と「パニック障害」があります。

職場不適応症の「うつ病」は、主に職場や出社の前に抑うつ気分に襲われるタイプのうつです。職場から離れている間は比較的症状が軽いのが特徴です。しかし、放置すると重症化しやすい、危険な病気です。

以下は、職場不適応症の「うつ病」の人の事例です。

Mさんは、有名大学を卒業して、広告代理店に就職しました。真面目で情熱豊かなMさんは、自分にふさわしいキャリアを築けるはず、と期待いっぱいで入社したのです。

しかし、与えられた仕事は、毎日雑用や先輩の補助ばかり。大学で学んだ知識や技術が全く生かせません。

ある日研修の一環として、企画案のプレゼンテーションを行いました。研修とはいえ、好成績を収めた社員は、本配属される部署で優遇されるはず。Mさんは懇親の企画を自信たっぷりにプレゼンしました。

しかし、社内の評価は思ったほどではありませんでした。先輩からも「少し稚拙な企画」「リサーチが足りないかも」と、Ⅿさんにとっては「酷評」ともいえる評価でした。

その日を境にMさんは、朝起きると全身が鉛のように重く、ふとんから起き上がることができなくなってしまいました。

1日だけの欠勤のつもりでしたが、次の日からも、朝だけどうしても身体がいうことをきかず、出社することができなくなってしまいました。

会社に欠勤の連絡を入れたあとは、嘘のように身体は軽くなります。

休日は元気なのですが、勤務日の朝だけはどうしても身体のだるさと抑うつ気分で苦しいのです。

しばらくしてMさんは心療内科を受診し、「うつ病」と診断されました。Mさんは、あの研修日からほとんど会社に行けていません。

周りの人には「甘えている」とMさんを責める人もいます。Mさんはその都度自分を責めて苦しいのですが、どうしても身体と心がいうことを聞かないのです。

職場不適応症の代表的症状「パニック障害」

パニック障害とは、何の前触れもなく、突然強い不安発作に襲われる病気です。不安発作とは、冷や汗、動悸、めまい、過呼吸、吐き気、手足のしびれなどが、急激に起こることです。

この強い発作の最中には「このまま死んでしまうのではないか」といった、死の恐怖に襲われる人もいます。

以下は、典型的なパニック障害の人の事例です。

Aさんは、営業部から人事部へ異動した際に、パニック障害を発症しました。新たな部署での上司と、相性が合わなかったのです。

Aさんの上司は、細かいことにこだわる人でした。さらにプライドが高く、Aさんが営業部で活躍していたことが気に入らないようなのです。

ことあるごとに「今まで何やってきた?」「いい年して、こんなこともできないのか?」などと、激しく攻め立ててくるのです。

しばらくAさんは、「人事のことを何も知らない自分に、 懸命に指導してくれる」「自分が成長すれば、いつかわかってもらえる」と頑張っていました。

しかし、ある日、通勤中の 電車の中で、Aさんはいきなり強い動悸と震えに襲われ、電車内で倒れてしまいました。救急車で運ばれ、心臓や脳などを検査されました。しかし、どこにも身体的な異常はありませんでした。

身体に異常がないため、Aさんは次の日から仕事 に復帰しました。しかし数日後、また電車の中で激しい 動悸がしました。

「心臓が口から飛び出して、このまま死んでしまう!」と本気で感じました。体中から脂汗が吹き出し、めまいがし、Aさんはその場でまた倒れてしまいました。

再度病院で全身の検査を受けましたが、やはり異常はありません。

Aさんは、医師から精神科の受診を勧められました。そして「パニック障害」と診断を受けました。

Aさんは、薬を飲みながら、2ヵ月間の休業をしています。上司と顔を合わせることがないため、今は発作が起こっていません。徐々に発作への不安も少なくなってきて、電車にも乗れるようになってきました。

しかし、まだ復職のめどは立っていません。

職場不適応症は、原因から離れないと良くならない

もしあなたが、上記のような心身不調で苦しんでいるとしたら、根治させるためには、ストレスの元である原因から距離を置かなければなりません

症状が重い人は以下のような方法で、原因から距離をおけるように検討してみましょう。

休職する

一般的な会社には、病気やケガをした社員が一定期間会社を休むことができる「休職」という制度があります。

この制度がある会社であれば、症状が治まるまで休職を申請しましょう。

症状の原因となる「誰か」「何か」から距離を置くことで、症状が軽くなります。

特に、職場不適応症の原因が「過重労働」にある場合は、休業が一番効果的です。今までの心身の過労を癒すことで元気が戻ってきて、スムーズに復職できる人も多くいます。

異動願いを出す

職場不適応症に陥った原因が、職場の「誰か」にあるとはっきりしている場合があります。

人間関係の問題はどの部署でも多少はあるものです。しかし、中にはどうしても相性の合わない人がいるものです。

その場合は、部署の異動などをして「誰か」と離れることができれば、症状は改善していくでしょう。

転職する

職場の環境が、「人間関係に問題があり、職務適性も合わず、しかも過重労働である」などであれば、転職を検討しましょう。

あなたが職場不適応症という不調に陥ったということは、あなたの心と身体が「この職場は合わない」「このままでは自分はつぶれてしまう」というメッセージを送っているということです。

ある程度は、職場に適応できるように努力することも必要です。

しかし、こういった心身のヘルプサインを無視し続けると、いずれ本当にあなた自身が壊れてしまいます。そのような状況を避けるためには、違う職場を探すことも選択肢の一つです。

職場不適応は、原因から距離を置くことが最良の改善法です。

しかし、普通はそれほど簡単にはいかないものです。

色々な事情があり、職場を離れることができない人も多いと思います。しかしまずは、職場のストレスを原因とした心身不調は、ストレスの原因から距離を置けば、必ず楽になれることを知って欲しいと思います。

そして、物理的に職場のストレス要因から距離を置くことができなくても、心理的に距離を取れるようにしましょう。

例えば、「嫌いな上司のことは考えない」「過去のミスは思い出さない」などといったことから始めてみましょう。


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