転職で前職の退職理由を「業績不振」にする危険性

面接対策

転職面接では、面接官から必ず前職を退職した理由を聞かれます。

前職を退職した理由が「利益が上がらず、事業が縮小傾向にあった」「業績が悪く将来に不安があった」「斜陽産業であった」など、前の会社の業績不振であった人も多いでしょう。

「会社が倒産した」「雇用を維持できずほとんどの社員が解雇された」などの理由があれば、自己都合ではなく会社都合による退職になります。

この場合であれば、採用側の面接官は問題なく前職の離職理由を納得します。

しかし、業績不振で将来性のない会社であったとしても、自らの判断で前職を辞めた人は、しっかりとした準備をして転職面接に挑まないといけません。安易に「業績不振」「将来性に不安」を退職理由にしてはいけません。

なぜなら採用側の面接官は、あなたの仕事の能力や意欲、人がら、考え方、さらには本当に業績不振が理由で離職したのかを含め、厳しく見極めようとしてくるからです。

相当の準備をしておかないかぎり、業績不振だけを理由に退職理由を述べても、納得してもらうことはできません。

「将来が不安」で退職する人を採用したい会社はない

「業績不振であれば、転職を希望するのも仕方がないはず。事実だし、問題はないだろう」と、前職を辞めた理由を転職の面接時に答える人は多いです。

しかし会社はいつも業績が良いわけではありません。将来性のある会社ばかりではないのです。

あなたがこれから応募しようと思っている会社も、同じように好不調の波があります。

そしてどの会社も、業績不振にならず将来にむけ発展していくために社員を雇っているのです。

それにも関わらず、業績が悪くなると退職する人というのは「自分も会社の一員なのだから、業績アップや将来の発展に責任がある」という意識に欠けていると思われる可能性があります。

以下に、人材Aと人材Bがいるとします。

あなたがもし会社の経営者として求人を募集したとき、人材Aと人材Bのどちらを自社の社員にしたいと思うでしょうですか。

人材Aの考え方:

前の会社が扱っている商品は、かなり時代遅れでした。このような商品は、今どき誰も買いません。

もう市場にも出回りすぎているし、古い商品と思われています。しかもライバル社のものはもっと安いから、勝ち目はありませんでした。

それに経営陣は事業展開のビジョンがなかったです。

これからどう発展させていくつもりなのか全然見えてきません。この会社に将来性はないから、早めに辞めてしまいました。

人材Bの考え方:

前の会社の商品は、たしかに時代遅れで古かったです。

しかし私は、少し改良したり違うモノと組み合わせたりして新商品を作ればいいと思いました。

今の顧客層は高齢の男性ですが、リニューアル品はもう少し若年層の男女を狙って販促するのはどうかと考えました。

価格競争に巻き込まれない方法はぜったいにあるはずです。そこで私はアイディアをどんどん出してきました。

さらに、現場の声が経営陣に届くように働きかけ、もっと会社が発展する方向へ舵取りしてくれることを期待しました。

あなたがもし自分の会社の経営者なら、人材Bを採用したいと思うのではないでしょうか。

将来の発展に責任があるという意識が必要

人材Aには「自分も会社の一員なのだから、業績アップや将来の発展に責任がある」という意識が欠けています。

業績不振の責任をすべて、会社が扱う商品の古さ、ライバルの多さ、経営陣のビジョンの乏しさにしています。

一方で人材Bには「自分も会社の一員なのだから、業績アップや将来の発展に責任がある」という意識があります。

どうすれば自社の商品が売れるようになるのか考えて、小さなことであっても自分でできることをやっていこうという姿勢が見られます。

会社にとって人材Aのような人は必要ありません。人材Bのような人を採用し、大事にしたいのです。

「業績不振」「会社に将来性がない」という理由で前職を退職したと主張する人は、面接官から見ると人材Aのようにうつります。

前職を業績不振で退職したのなら、自社に入社しても、業績が悪化したらまた退職するかもしれないと思うのは自然なことです。

あなたがこれから転職を希望し、新たな会社に採用されたいのであれば、安易に「業績不振でしたから退職しました。私は人材Aのような人間です」と主張してはいけないのです。

本当の退職理由があるなら正直に述べる

安易に「業績不振」「将来が不安」を退職理由にするのは、上記で述べたようなリスクがあります。そのため、もし本当の退職理由が別にあるのなら、その理由を正直に述べましょう

実は採用現場では、本当の退職理由があるにもかかわらず「業績不振で退職した」と主張する応募者が多いのです。

求人に応募した側としては、一定の理解を得やすいと考えてのことでしょう。

しかし採用面接官は「業績不振」を理由に退職したと主張する人があまりにも多いので、「もっと言いにくい退職理由が別にあるのではないか?」と疑うことがあります。

一次面接なら、まだ面接官も納得してくれることが多いです。

なぜなら一次面接の面接官は、まだ人材採用の総責任を負う立場ではないために、人物観察が甘いからです。

前職の経営事情について深く聞きすぎるのも失礼なので、一次面接ではあまり話は深まらないかもしれません。

しかし二次、三次、役員面接と上がっていくうちに、観察眼は厳しくなることを覚悟しなければいけません。

役員レベルになると、あなたが本当に業績不振で退職したのか、どの程度の業績不振で辞めようと思う人なのかをしっかり把握する必要があるからです。

本当に業績不振での退職なら準備が必要

ささいな業績の悪化でまた将来に不安を感じて離職してしまう人を採用するわけにはいきません。

役員レベルの面接になると、求人側(採用面接側)から以下のように詳しく問われる可能性があります。

「どの程度の業績の悪化でしたか。何を根拠に業績不振と判断したのですか。

将来性の不安とは具体的にどうなる不安ですか。業績不振を理由に退職するあなたに対して、前の会社側は何と言いましたか。あなた以外に業績不振で退職した社員は何人いましたか」

本当に業績不振での退職であれば、これらの質問に対して、具体的な数値を示して回答できるように準備しておきましょう。

具体的とは以下のレベル以上です。

前職は、2期連続で経常利益が赤字でした。主要取引先の倒産で今後の売り上げ額は40%減が確実になりました。

主力商品が主に乳幼児用の製品で、少子化のためか年に3%程度利用者が少なくなっています。

私にはこれまでの5年間、賞与は支給されておらず、昇給もありません。

私以外に退職した社員は、この1年で5人です。残っているのは創業以来から在職している社員ばかりで、全員50代です。

このように具体的な数値を出して答えることができなければ、「この人の退職理由は、業績不振ではなく他に理由があるかもしれない」「それほどの業績不振でもないのに、簡単に逃げるような退職をしたのだろう」と思われても仕方がありません。

ただ、先ほどのように具体的な数値を述べることができれば、あなたの退職理由が本当に業績不振によるものであったと納得してもらえます。

人間性と職務能力を証明

それでは、本当に業績不振が原因で前職を退職した人は、どのように退職理由を説明したらよいのか考えてみましょう。

業績不振での退職であることが前提であれば、面接官はあなたの人間性と職務能力をチェックしようとします。

業績不振であっても、前職では人間関係の面では円滑であったことを証明しましょう。業績が悪いからといって、仲間を捨てて前職を去るような人間性だと思われてはいけません

さらに一定以上の職務能力があり、業績不振の中でも責任感を持って仕事にあたってきたことも伝える必要があります。

あなたの職務能力が低く、前職にとって要らない人材であったと思われてはいけません。

人間性が伝わるようなエピソード

業績不振という大きな問題の中では、一人の非力な社員のあなたにできることは少なかったかもしれません。
しかし、苦境にめげないように周りを励まし、他の社員と力を合わせようと協力したなど、人としての努力はしてきたのではないですか。

会社が不調のとき、健気に頑張る人がらに対して、採用側はとても魅力を感じます。過去の経験から探しだして、あなたがそのような人間性を持っていることをエピソードにして語りましょう。

たとえば以下のようになります。

前職では業績の悪化につれて、社員もどんどん辞めてしまい、さみしい感じになってしまいました。
営業会議の後はみんな元気がありません。でも、それではいけないと思って、私が率先して飲み会を企画しました。
若手はもう私しか残っていませんでしたし、できるかぎり社員みんなで結束しようと思ったからです。
そんなときは営業所長も参加して、みんなで盛り上がって楽しみました。不思議と楽しんだ後は活気も戻ってきて営業にも精がでるものです。
上司からも「君が宴会で盛り上げてくれると、みんなも明るい気持ちになれるからありがたいよ」と言ってもらえました。

気持ちの努力だけでもいいのです。効果があろうがなかろうが、それほど関係はありません。

きちんとした会社であれば、単なる労働力のためだけに人を採用するわけではありません。会社や周りの社員のために、情をもって働いてくれる「人間」を求めているです

あなたの人がらが伝わるように、エピソードを語りましょう。

一定以上の職務能力と責任感

さらに、社員として責任を持って取り組んできたことがあるのなら、責任感があることを積極的に伝えましょう。困難な状況での経験や実績は大変な強みです。

なぜなら、苦境で努力してきた人は、ストレス耐性も強くピンチを乗り越える力があるとみなされるからです。

たとえば以下のようになります。

主要取引先が倒産したため、今後は売上額の40%ダウンが確実となりました。

何とか売り上げ額の減少を補てんするために、死に物狂いの営業活動を行わなければなりませんでした。

かつての取引先で現在は関係が途切れている会社や、取引額が少ない会社に徹底的にアプローチしました。営業所員全員で朝から夜遅くまで一軒一軒訪問し、頭を下げて回りました。

その甲斐あって、数件だけ取引の再開と新規開拓ができました。40%ダウンのうち、20%は取り戻せる計算になり、少しほっとしたことを覚えています。

社員の本当の力は、会社の業績が好調なときよりも不調のときのほうがはっきりとあらわれます。

好調なときは追い風で社員のはたらきが業績につながりやすいのですが、不調のときは向かい風で社員のはたらきが業績につながりにくいのです。

もしあなたが前職で多少なりとも実績をあげた事実があるのならば、それは堂々とアピールしましょう。それが、あなたの職務能力を証明することにつながります。

「退職は仕方がなかった」という根拠を示す

業績不振な中でも、退職に至ったやむを得ない事情あったはずです。その根拠を示し理解してもらいましょう。

たとえば以下のようになります。

業績は下げ止まりましたが、取引先数の減少から仕事自体が少なくなりました。

そうしたとき第2子が生まれたのですが、前職での給与では家族を養うことができません。会社側からも、今後の昇給や賞与の支給の見通しがないことをはっきり言われました。

そのため、このまま頑張りたい気持ちはありましたが、やむを得ず退職を決意しました。

業績の悪化にくわえて、家庭の事情など退職に至った経緯があるのなら丁寧に示し、理解を得るようにしましょう。

ちなみに、どうしようもない事情としてはほかにも「事業所の統廃合により、遠方に転勤しなければならなくなった」や「人員整理のためまったく適性のない部署への異動を命じられた」などがあります。

前向きに取り組む姿勢を示す

業績が悪い事業にいたのは過去のことです。

これから気持ちを切り替えて、新しい会社で貢献できる喜びを、履歴書や面接での志望動機に加えて伝えましょう。

たまに、景気が悪かった前職での話を転職面接の場面で愚痴っぽく語る人がいます。

しかし、前職での苦労話を長々と話すのはやめましょう。

採用側の面接官は、業績を上げるために新たな社員を採用しようとしています。

これから採用しようとする人が景気の悪い話ばかりしていると、悪い印象を受け、採用を躊躇してしまいます。

新しい環境で活動的に働けるあなたの意欲について、話しの内容だけではなく口調や態度でも示しましょう。

たとえば、以下のように伝えるといいです。

前職でのことは残念でしたが、今では気持ちを切り替え、新しい事業で活動できることを楽しみにしています。

私には「逆境でもめげないストレス耐性」があります。

それ以上に、もっと会社の業績をあげ、人の役に立ちたいといった向上心にもあふれています。

前職までの業務に限らず、機会さえいただければ未経験であっても幅広く業務に携わりたいとも思っております。

これであれば、気持ちを切り替える意欲があることや、向上心があることが伝わります。

過去の不満を持ち込まず、採用側の企業へ転職した後は、幅広い活躍ができそうな人材だとイメージしてもらいましょう。

自分の経験活かし貢献する意欲を見せる

業績不振が前職の退職理由であったことを理解してもらえて、人間関係にも職務能力にも問題がないことが伝われば、面接官側からすると「落ち度」の少ない人材に見えます。

ここまでアピールすることができたら、あなたの今までの経験・技能を活かして貢献する意欲を見せましょう。

一般的な志望動機を述べる要領と同じです。

「業績不振のため、前職を退職した」という理由づけは、一見スムーズに理解されそうなためか、多くの転職希望者が使います。

業績不振が理由で退職していないのであれば、本当の退職理由を述べましょう。そうしないと不審に思われるからです。

そして本当に業績不振での退職であるなら、採用側からはかなり詳細を確認されることを覚悟して準備をしておく必要があります。

きちんと準備をして想定される質問に答えることができれば、面接官は安心して採用を検討することができるようになります。

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